No.261 帯津三敬病院 増田俊和 理事長・院長 後編:病院長も医療職者としては一職員

インタビュー

前編に続き、増田先生がお考えになる看護師像や院内のマネジメント法などについてお尋ねしました。

 

院長も一職員

 

中:先生のご経歴の話題に戻りまして、院長に就任された頃のことを教えていただけますか。

 

増田:私が当院の院長に就いたのは偶然のようなものでして、今でも自分の方針の下、

院内を変えていこうとはあまり考えていません。

要は「自分もみなさんと同じ一職員です。

ただ、もし何かあった時には私が最終的な判断をして責任をとります」と。

このスタンスで10年やってきました。

 

 

中:院長である先生ご自身を「他の職員と同じ」とお考えになるとのことですが、

その考え方は医師に対してのみでしょうか。

看護師も含めて「同じ職員」とお考えになるのでしょうか。

 

増田:もちろん後者ですし、看護師以外のスタッフも含めてです。

実は私が医者になった時から感じていることがあり、それは、医師と看護師は

患者さんを同じ視線、同じレベルで見なければいけないのではないかということです。

当時は医師の指示を受けて看護師が動くという上下関係があり、今でもその傾向はありますが、

それは患者さんにとって最適とは言えないのではないかと考えてきました。

 

 

現在、当院では看護師だけでなく、例えば薬剤師や地域連携室のソーシャルワーカー、

場合によってはボランティアの方など、実に多くのスタッフが患者さんに関わります。

そのスタッフ全員が、医師や看護師と同じレベルで、一人の患者さんに関わるということが大切です。

患者さんの立場に立てば、各医療スタッフはそれぞれの職能が異なるだけで、みんな一人の人間ですから。

 

人間好きであってほしい

 

中:今の先生のお話の中にも少し含まれていたのですが、

先生は看護師とはどのような存在であってほしいとお考えになりますか。

これからの看護師に期待することをお聞かせください。

 

増田:医療人であるからには、人間を好きになってほしいと思います。

漠然としていて上手な答ではないとは思いますが、人間好きであることを最も望みます。

 

 

中:看護師にとって必要な条件としては「優しさ」や「観察力」が挙げられることが多いのですが、

それらも基本的には人が好きであることがベースになければできないことかもしれません。

 

増田:おっしゃる通りです。

人間が好きだということは、すべての基盤です。

その人の良いと思う面も嫌だと思う面も含め、すべてに興味を持つことが「人が好き」ということです。

それが人を大切にする、医療者の原点だと思います。

 

毎週月曜の朝礼が意外なほど重要

 

中:確かにそうですね。

すばらしいお話を伺えました。

ところで、これまでお聞かせいただいた先生のお考えを、貴院のスタッフ共有のものとするために、

何か工夫をされていらっしゃいますか。

 

増田:毎週1回朝礼があり、短時間ですが思っていることをお話ししています。

朝礼は私が院長になってからというもの、この10年間、

毎週月曜日に職員全員に集まってもらい、続けています。

これはこれからも続けていきたいと考えています。

 

 

中:朝礼を大切だとお考えになるのはどのような理由からでしょうか。

 

増田:職員が一堂に集まれる機会が朝礼以外にはあまりないのですね。

ですから、仮に5分程度で、毎回は実のある内容にならないとしても、全員が顔をあわせることが重要です。

また、情報の伝達スピードも速く、意思決定もスムーズに進みます。

当院は100床規模の病院ですから職員同士が顔見知りであってほしく、

朝礼がコミュニケーションの場として役立っています。

 

商売のコツ、病院のマネジメント

 

中:お話しを伺っていて、先生はご自身とスタッフとの関係だけでなく、

スタッフ間の人間関係や意思疎通を重要視されていることがわかりました。

今日のお話の前半で、ご実家がご商売をされていたとのことでしたが、医師になられてからも

現在、病院経営をされていらっしゃり、やはり少し何らかのつながりがあるのでは、などとも感じました。

 

増田:あるかもしれません。

親の商売上の苦労を横でずっと見聞きしていましたから。

商売は「ヒト、モノ、カネ」と言いますが、結局はヒトだと思います。

その点は病院は同じだと感じます。

 

 

中:幼少期のご記憶が、今のマネジメントに生きてらっしゃるのかもしれませんね。

 

ゴルフはシングルの腕前

 

中:ところで、先ほどのお話では貴院は100床規模とのことでしたが、

建物は非常に大きく院内も広々していますね。

 

増田:当院は10年前に新築した際、99床を全室個室にしました。

そのためそれなりのスペースは必要でした。

 

 

中:設計がゆったりしているだけでなく、たいへん綺麗に維持管理されていると感じました。

では最後の質問で、先生のご趣味をお聞かせいただけますか。

 

増田:学生時代からゴルフをしています。

 

中:それではかなりご経験がおありなのですね。

ハンデはシングルでしょうか。

 

増田:その時期もありました。

 

 

中:素晴しい。

今でもコースに出られるのですか。

 

増田:そうですね。

ただ、この歳になりますと健康維持に運動が大切ですから、そのためにゴルフに行くような面があり、

カートに乗らずにラウンドします。

ふだん病院内でもなるべく階段を使っていますし、

病院から川越の駅まで3キロほど歩いて帰ることもあります。

 

中:本日は、本当に貴重な多くのお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

 

増田:ありがとうございました。

 

インタビュー後記

増田先生のように「好き」という気持ちを大切に、興味を持ったことをきっかけに人生の道を突き進まれるというのは、素敵なことです。
自分で決めた人生だからこそ、誰かの言葉を言い訳にしたりしない。
その潔さも、着実に経験を積まれることも、経験を楽しまれる余裕も、全ては自分の決断を信じていらっしゃるからなのかもしれないな。
先生の輝く瞳を見ながら、ふとそう感じました。

 

帯津三敬病院関連記事

病院紹介

増田理事長・院長インタビュー前編

増田理事長・院長インタビュー後編

Photo by Carlos