No.262 湘南鎌倉総合病院 篠崎伸明 院長 前編:救急を断らない病院

インタビュー

 

数々の特徴的な取り組みで名を知られている湘南鎌倉総合病院

その院長の篠崎伸明先生へのインタビュー前編では、どのようにして今の病院の姿が確立されたのか、

これからどのように変わっていくのかを伺いました。

 

救急車受入れ台数が日本一

 

中:本日は湘南鎌倉総合病院院長の篠崎伸明先生にお話を伺います。

先生どうぞよろしくお願いいたします。

 

篠崎:よろしくお願いいたします。

 

中:最初に貴院の特徴を挙げていただけますか。

 

篠崎:当院は高度急性期医療を中心とする病院です。

特徴の一つは「救急を絶対に断らない」ことです。救急車受け入れ台数は年間1万4,000台前後に上ります。

さらに救急車以外にもドクターヘリによって、千葉・埼玉・山梨

あるいは伊豆などの遠方から救急患者さんが搬送されてきます。

 

 

中:先日うかがったある大学病院の救急車受け入れ台数が年間9,000台とのことでした。

市中病院で1万4,000台とは驚異的ですね。

 

篠崎:過去に何度も日本一を記録しています。

当院の救急は多方面から注目されていて、つい先日も「情熱大陸」というテレビ番組で

当院の救急医がフィーチャーされていました。

 

 

当院の特徴としてはさらに現在、日本一のがんセンターを目指して建設計画が進行中なことも挙げられます。

その他、外国人患者さんの診療に関する国際的な評価基準であるJCI(Joint Commission International)

を取得していることや、開設以来30年にわたって地域の方から愛され、

多くのボランティアの方々に支えられていることなども特徴と言えます。

 

日本一のがんセンター開設へ

 

中:多くの素晴らしい面を紹介いただきありがとうございます。

一つずつ詳しく教えていただきたいのですが、

新しくお作りになるがんセンターはいつごろ完成するのでしょうか。

 

篠崎:来年の春から建設がスタートして秋ごろには完成させたいと考えています。

 

 

中:名称に「がんセンター」とつく医療施設の多くは国公立か医大付属の施設などに限られるかと思います。

そうした中で貴院が「がんセンター」を開設される目的は、どのようなことでしょうか。

 

篠崎:最先端の医療機器を導入することはもちろんですが、現在のがん治療で問題となっている、

いわゆる「がん難民」にも十分に対応できる施設を目指します。

他院で「もうなすべきことがない」と言われた患者さん、あるいは基礎疾患があったり

高齢であるといった理由で積極的治療がためらわれる患者さんにも、

安心してベストの治療を受けていただけるようながんセンターにしたいと考えています。

 

 

中:まさに「患者さんを断らない」貴院らしい、他にない新しいがんセンターになりそうですね。

次にJCI取得に関連してお尋ねしますが、やはり外国人の患者さんが少なくないのでしょうか。

 

篠崎:横須賀に米軍の基地がありますね。

もちろん海軍病院も併設されているのですが、近年は有事の際に病院機能を発揮できるような備えのため、

一般の患者さんにはなるべく外部の近隣病院の受診を促しているようです。

その影響で現在はアメリカ人の患者さんが多くいらっしゃいます。

 

 

中:メディカルツーリズムの受け入れという点では、何か工夫をされていますか。

 

篠崎:海外の多くの国は日本のような国民皆保険ではなく、

個人が加入している保険によって施行可能な医行為が異なります。

かつてそれが原因で医療費の支払い段階のトラブルにつながることがありました。

そこで当院では世界各国100以上の保険会社との協力のもと、

当院で行う治療は基本的にすべて保険でカバーしていただく体制を整えました。

 

 

すると、もともと日本は医療費が安いですから、

ファーストクラスでアメリカから来日し当院で治療を受けて帰国しても、

現地で治療を受けるより安価なことがあるようです。

その他、現地の病院としっかり連携し、テレビ電話でドクター同士が綿密な打ち合わせをして

万全を期すようにしています。

 

地域を支え、支えられる病院

 

中:続いて、貴院はボランティアに支えられているとのことでしたが、

ボランティアの方はどのような活動をされていらっしゃるのでしょう。

 

篠崎:例えば、院内の各所を飾る花卉もそうです。

エントランスを中心に多くの植物をご覧いただけると思いますが、

これらはボランティアの方が手入れをしてくださっています。

また病院の職員、主には看護師ですが、その子どもたちのための院内保育園でも活躍いただいています。

かなり高齢の方も自転車で毎日お出でになります。

 

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中:言うならば貴院のサポーターのような存在ですね。

なぜ地域の方々が貴院を支えようとなさるのでしょうか。

 

篠崎:当院はこの地域で30年の歴史があり、開院当初から「断らない救急」を標榜してきました。

その歴史において、その時々の当院のスタッフが頑張ってきました。

そのことで恐らく、地域の方々が安心感を持っていただけてきたのではないかと思います。

そして地域と病院の理想的な共存関係が構築された結果だと考えています。

 

 

地域との協調関係を示す一例として、救急車のサイレンに関する取り決めが挙げられます。

先ほど申しましたように当院には頻繁に救急車が到着するのですが、

そのサイレンの音は地域住民にとって騒音と捉えかねません。

そこで地域の方々や消防と協議し、当院近くではサイレンを鳴らさないことにしました。

もちろん地域の方々は緊急車を視認すれば当然その走行を優先してくださいます。

ありがたいことですが、当院がここにあるということが地域の誇りになっているように感じます。

 

 

後編に続く

Interview with Carlos & Kubo