前編に続き、生育環境について、学びとオリジナル発想などについてお話しいただきました。
医療の現場に優しい技術革新
中:医療が積み重ねによって進化をしていることに敬意を持ちつつ、
この後すこしお伺いしたいことは、技術革新による今後の医療への影響についてです。
例えばICT化の推進で今では多くの医療機関が電子カルテを用いていますが、
その入力のために医師の患者対応が疎かになるという弊害も指摘されています。
技術革新をどのように医療の現場に適応させていくかということについて、何かお考えはございませんか。
長堀:技術を革新すると医療の現場が難しくなっていくのではなくて、
優しくなっていくのが本当の姿だと考えます。
実は今、スタートアップ企業と連携し開発しているのは、音声入力が可能な電子カルテです。
このアイデアを思いついたのは、当院で看護師の業務量を調査すると、勤務時間の4割は間接業務であり、その大半は「記録」です。
しかも、患者さんの同意書など記録すべき事項がますます増えていくトレンドです。
話すとテキスト化されて電子カルテにアップされるシステムを計画しています。
中:間接業務の大幅な時間短縮を期待できそうですね。
長堀:開発は困難ですが、今、試行錯誤してプロトタイプを作成しているところです。
当院の看護師の92パーセントは女性で、他院も同じような傾向だと思いますから、
器械を可愛らしくデザインして、若い職員が飛び着くようなものを狙っています。
他者を参考にしつつも発想は独自に
中:そこまで考えていらっしゃるのですね。
先生のように近未来的なお考えをお持ちのトップがいらっしゃることは、
医療のこれからを考える上でたいへん心強く、貴重な存在だと感じます。
長堀:先を見ている病院長は私だけではなく、たくさんいらっしゃいます。
そういう人たちのやり方を見ていますと、みなさんやはり先ほど申しました
「三方良し」の形式で物事を進めているように見受けられます。
中:そういう病院経営者の姿をご覧になって、ご自身が感化されるようなことはございますか。
長堀:4年前の院長に成り立てだった頃はいろいろ勉強させていただきました。
今もベースにそういう姿勢を持つことは変わりませんが、
発想はやはり自分独自のものではないでしょうか。
中:まさにオピニオンリーダーですね。
長堀:人がやらないことをやった方が面白いと考えていますので(笑)
生育環境と第一印象
中:インタビューを開始した直後から、先生の優しそうで話しやすそうなお人柄が伝わってきたのですが、
そのような柔らかい雰囲気や第一印象を与えるように、心がけてらっしゃるのでしょうか。
長堀:育った環境の影響ではないでしょうか。
実家が家具屋をやっていまして、子どもの頃は手伝いで店頭に立っていました。
その時、親からよく「人に好印象を持たれるようにしろ」と教育されました。
確かに、外科時代はこの立ち振る舞いで得をしたかもしれません。
看護師も数から質へ
中:外科医は一般的に、ピリッとされているイメージがございますのでね。
この辺りで話題を看護師にフォーカスさせていただきたいのですが、貴院の看護師の充足状況はいかがですか。
長堀:一昨年までは看護師の離職率が高く、
いかに人数を確保するかが病院の最優先課題でした。
しかし去年あたりからは応募倍率が1.2倍ぐらいになり、募集に際して選抜できるようになってきました。
これからは看護スタッフに人間力を磨いてもらうことを目指していきます。
ただ決められた看護をするだけではなく、相手に優しさや癒しを与えられる人間力を磨き、伸ばしてもらうことが、これからの課題です。
中:看護師も数から質へ移行していく、ちょうど今がそのタイミングなのでしょうか。
長堀:そうだと思います。
当院はいま理念として『よかった。この病院で』と掲げていますが、ちょうど今日、
採用に合格した看護学生の何人かは「理念がよかったのでこの病院に来ました」と
言ってくれました。
中:ミッション・ビジョンに共感するスタッフは心強いメンバーですね。
長堀:ベクトルを同じ方向に向けやすいと思います。
テニスの横須賀実業団トーナメントで3回優勝
中:先生のご趣味をお聞かせいただけますか。
長堀:冒頭でお話ししたテニスを続けています。
当院で横須賀実業団トーナメントに参加し、防衛大学や陸上自衛隊などと戦います。
今までに当院は3回優勝しており、
最近ではテニスの腕自慢が集まってくるようになりました。
中:先生も出場されるのですか。
長堀:7、8年前までは私自身もメンバーで参加していました。
今は神奈川リーグの3部に昇格してしまい、補欠となりました。
看護師へのメッセージ
中:では最後に貴院のアピールポイントなど、看護師に向けたメッセージをお願いします。
長堀:当院は昨年、理念を全職員から公募して『よかった。この病院で』としました。
患者さんだけでなく、職員、それから社会にも「この病院があってよかった」と思ってもらえる病院にしたいと思っています。
患者さんに接する機会が最も多い職種は看護師ですから、その役割は非常に大きいと思っています。
みなさんに「よかった」と思ってもらえるような人材に来ていただけたら嬉しいです。
インタビュー後記
リーダーとしてのスタイルをその時々で最適化されながら牽引されている長堀先生。
進化し続けるリーダーは、院長になられた今も学びを止めることはありません。
経営者として、医療職として新たな開発にも取り組んでいらっしゃるお話もされていましたので、今後の長堀先生の動向も気になりますね。
また、今回のお話で嬉しく感じたのは、今や看護学生も病院の理念に共感して就職先を選んでいる事例があるということ。
今後はより、組織リーダー、経営者の考えもきちんと確認し「この人と一緒にミッションを達成したい」というような次世代型の看護学生が増えることを願っています。