前編に引き続き、大阪急性期・総合医療センターの丸尾看護部長へのインタビューをお届けいたします。
看護部長での取り組みについて教えてください。
丸尾:まず、この2月に電子カルテの更新があります。
看護職も、業務の効率化を図るため、電子カルテ内容のバージョンアップなどに取組んでいます。
同時に、勤務作成シフトも更新しました。
毎月の勤務表作成は、ほとんど手作業で作成し、PCに入力する形式でしたが、
今回のソフトは、自動的に勤務表を作成してくれるものです。
この勤務表作成に看護師長が多大な労力を費やしていましたが、
今回のソフトを使いこなすことができれば、かなり時間を短縮することができると思います。
その時間を他の業務に回すことができますので、患者さんやスタッフに関わる時間を増やすことができると期待しています。
急性期病院ということで、患者さんの入退院が多いことから、
できるだけ看護職が患者さんのそばにいられる時間を作ることが目標です。
また病院として、昨年よりISO9001(※1)の取得に取組んでいます。
現在は、形成外科の一診療科だけですが、
日常実践している看護を可視化することで、
標準化することができ、看護の質の向上につながると思っています。
今後、さらに診療科の拡大を図っていく予定です。
「Patient Flow Management」をとり入れ、
入院する前から患者さんの生活習慣や支援状況などをお聞きして、
退院支援を見据えた関わりを行い、住み慣れた地域で継続して生活できるよう、切れ目のない支援を行う取組みにも力を入れています。
現在一部の診療科で開始していますので、今後全診療科で行えるよう取り組んでいきたいと思っています。
現在の看護体制は、2交代制と3交代制を本人の希望で選択できるようになっています。
ただ、2交代制は夜勤時間が16時間ですので、長時間労働という観点から、今後検討していく必要があると思っています。
看護職がもう少しゆとりを持てると、患者さんにもっと良いケアを提供することができるのではないかと思っています。
当センターでも働き方改革に取り組んでいますが、
看護職の人数は莫大ですので、看護職が変わると、病院が変わるという気持ちで頑張っています。
看護部理念「Heart Art &Science」を実践するために、特に心がけていることはありますか。
丸尾:「Heart Art &Science」は、
「人の心を大切に、信頼される看護をおこないます」
「安心で安全な質の高い看護をおこないます」
「自己研鑽に励み、誇りの持てる看護をおこないます」
この3点を意味しています。
ただこれを実践するにあたって私が一番考えているのは、「その人らしく」ということです。
患者さんがその人らしく入院中や在宅での生活を送れること、また看護職員が自分らしく看護を実践出来るような環境を作っていきたいと思っています。
必ず何か良い看護、自分しかない、自分らしい看護があると思うので、自分の看護を振り返ってほしいと思います。
「オンリーワンの看護をおこなってきらりと光ってね」ということを新人や看護職員に言っています。
専門看護師や認定看護師も大勢頑張ってくれていますが、資格がなくても、車椅子への移乗が得意、摘便を無痛で出来る、耳かきが得意など、どんなに小さなことでもいいと思っています。
そこを大事にしながら、「光らせるように看護をしていこう」と一生懸命伝えています。
こちらの病院での看護補助者の役割について教えて下さい。
丸尾:「看護助手」という言葉が色々な場所で色々な使われ方をしていると思いますが、
当センターの場合は「看護補助者」という呼び方で、「看護助手」と「病棟婦」に分かれて仕事をしており、90人程います。
看護助手には、清拭や車いすやベッドでの移送の時のサポートなど、患者さんに直接関わる介助をお願いしています。
病棟婦には、直接患者さんに接しないお仕事、シーツ交換とか機械の洗浄を行ってもらっています。
看護助手と病棟婦は、ヘルパーなどの資格の有無で区別しています。
看護補助者の力はすごいと感謝しています。
自分達からも「この患者さんはこれで大丈夫ですか?」とあらかじめきちんと確認してくれることもあります。
また、患者さんが朝食時喉を詰まらせて苦しんでいるところを発見し、連絡をくれたこともあります。
急変する前に看護師が対応できるよう見守ってくれている場面が時々見られます。
患者さんにとっては、身近な事をしてくれ、とても話しやすい存在となっています。
新人の看護師についてお聞かせください。
丸尾:毎年80人程度入職しますが、今年は新棟ができるので120名採用しました。
来年また新しい病棟を5階東・西に開設しますので、来年も多めの採用になると思います。
今年から各病棟がたくさんの新人を受け入れる体制を新たに整えていますので、採用数が増える事への不安はありません。
趣味などはありますか。
丸尾:夫が歴史系博物館の学芸員をしていたので、
史跡とか文化財などを見に博物館・美術館へ行くのが好きで、それに付いて行って見ています。
それだけではなく、昔ながらの古くからやっている老舗の歴史ある食べ物なども探してくれますので、釣られて一緒に行き楽しんでいます。
看護部長からのメッセージ
丸尾:当センターは、急性期からリハビリテーションまで幅広く医療を提供しています。
特に救急と災害に力を入れています。
また病院全体が急性期ですので、どこの病棟でも緊急入院の超急性期の患者さんの看護の経験を積むことが出来ます。
他の病院と比べ理学療法士、作業療法士等が多く勤務していますので、超急性期の患者さんに対して次の日から看護師と共に早期離床に向けてリハビリテーションを進めていくという看護も学べます。
がん治療では国の指定を受けて地域がん診療連携拠点病院として活躍しています。
難病においても大阪府の難病の指定で機能していますので、様々な疾患や状態の患者さんをみることが出来ます。
住吉母子医療センターも4月から開設になります。
地域のハイリスクの妊産婦の方、新生児、小児も診ていきますので、専門性の高いところが勉強できると思います。
色々な事を経験したい、勉強したいという方には適している病院だと思います。
幅広い看護を身に着けた看護師、または専門性の高い看護師など自分の目指す看護師を実現してほしいと思います。
是非お越し頂いて一緒に働きませんか。
大阪急性期・総合医療センターは、
病院の向かい側には、公園があり、
丸尾看護部長は、
患者様、そしてスタッフに対し、「その人らしく」
スタッフが自分の看護を振り返ることで、
「自分らしい」
きっと看護部長がおっしゃった「きらりと光る」
そのような発見が自信になり、さらなる成長へとつながっていく。
1人ひとりの発見がまさに看護部の理念へと結びつくと感じました
丸尾看護部長、
No.140 丸尾明代様(大阪急性期・総合医療センター)前編「毎日一人ひとりの顔を見る」
シンカナース株式会社 代表取締役社長
看護師として勤務していた病院において、人材不足から十分な医療が提供出来なかった原体験を踏まえ「医療の人材不足を解決する」をミッションに、2006年に起業。 現在、病院に対しコンサルティングおよび教育を通じた外国人看護助手派遣事業を展開。25カ国以上の外国人看護助手を育成し、病院へ派遣することで、ミッションを遂行している。 東京都立公衆衛生看護専門学校 看護師 東洋大学 文学部 国文学科 学士 明治大学大学院 グローバルビジネス研究科 経営管理修士(MBA) 日本大学大学院 総合社会情報研究科 総合社会文化博士(Ph.D.) ニュージーランド留学 帝京大学医学部附属病院 東十条病院 三井住友銀行 元東京医科歯科大学非常勤講師 元同志社大学嘱託講師 元日本看護連盟幹事 元東京都看護連盟幹事 日本看護連盟政治アカデミー1期生 シンカナース株式会社/代表取締役社長 著書 『わたしの仕事シリーズ2 看護師』新水社 『医師の労働時間は 看護業務の「分業化」で削減する』幻冬舎 『外国人看護助手テキストブック』幻冬舎