No.151 ツネヅカ ティエリ様(CLC Montreal Language School)  後編:ひらめきが生まれるには

No.151 ツネヅカ ティエリ様(CLC Montreal Language School) 後編:ひらめきが生まれるには

  • 2018年6月7日
  • インタビュー 海外
No.151 ツネヅカ ティエリ様(CLC Montreal Language School) 後編:ひらめきが生まれるには
No.151 ツネヅカ ティエリ様(CLC Montreal Language School)  後編:ひらめきが生まれるには

前編に続き、美しいモントリールの中にあるCLC Montreal Language Schoolで、日本文化の面白さ、興味を持ち、探求する先に見えるものについてティエリ先生にお話しいただきました。

 

 

これからの語学

 

中:言葉を覚えるだけでなく、言葉の背景や文化にも造詣を深めることは、生徒の教え方にも関係してくるのでしょうか。

 

ティエリ:そうですね。自分自身の体験と照らし合わせると、生徒の「日本文化が面白い」という気持ちにとても共感できます。

生徒はそれぞれ異なる関心を持って日本語や日本文化に触れていくのですが、

どのようなかたちであってもその関心を持ち続けて欲しいと思います。

 

 

中:カナダで日本語を学ばれる人たちの特徴のようなものはございますか。

 

ティエリ:カナダ人で日本語を勉強したいという人は、シャイな人が多いように感じます。

少し日本人に似ているかもしれません。

クラスでも自分からは話そうとせず、こちらから投げかけてあげないと何も言わない傾向があります。

自分の言葉が通じるかどうかという不安もあるのでしょう。

言語学校としては、生徒が自信を持って話せるようにケアが必要なところです。

 

 

中:カナダは多言語国家で多くの人がさまざまな言語を使い仕事をされ生活されています。

このような環境では誰もが多言語を身につける必要性を当然のように感じていることと思います。

フランス語も英語もある程度話せなくてはいけないと。

ところが日本の場合、多言語の必要性をあまり強く感じられず、習得の動機が生じにくいと言えます。

そのような状況をどのようにお考えでしょうか。

今後、10代20代の若い世代は多言語を話す必要性が高まるのでしょうか。

 

 

ティエリ:日本では、外国語イコール英語だと思います。

それはたぶん、世界中のどこでも抱えている共通の課題です。

個々人が自分の関心のある国に行き自由に活動し生活するという理想的な姿を目指すには、英語以外の言葉も必要になるはずです。

もちろん媒介語としての英語は必要ですが、それだけではその国の人たちと腹を割って話せません。

 

中:楽しみながらコミュニケーションをとり理解し合うには、相手が使っている言語が必要になるということですね。

 

 

将来の見通しについて、もう一つお尋ねいたします。

日本では2025年に超高齢社会のピークに突入し、高齢者の割合が増え働き手が足りない社会になることが確実です。

そうしますと労働の機械化がより進んでいき、人々の働き方も変わらざるを得ないと言われています。

医療の分野でも昔は存在しなかった機器を積極的に採り入れていくと予測されます。

このような変化を前に、先生がお考えになる未来に対するお考えを、お聞かせください。

 

ティエリ:頭が痛くなるような問題が山積しています。

おっしゃるように今後さまざまなものが機械にとって代わりますと、人間はやはりより文化的な方向に歩まざるを得ないのではないかと考えています。

 

 

特にコミュニケーション力です。

もちろん今までもそうだったのですが、今後ますます重要になっていくのではないでしょうか。

個人個人がさまざまな問題を抱えている中で、どうやってその問題をシェアし、お互いを支えていくかという課題がますますクローズアップされてくると思います。

 

これからの医療

 

中:今の質問をいたしましたのは、医療がますます進化していく中で、

今までと同じことをしているだけでは、なかなか先に進めなくなるのではないかとの危惧があるためです。

医療の現場で働く人が足りなくなります。

 

 

それに対して海外からの入国者の労働力を生かす方法がありますが、それにはもちろん言語能力が必要です。

また新しい治療法に対応できるように、その方たちが成長していかなければなりません。

このような変化のスピードも過去より早くなっているように思われます。

こうした中、先生のように、異なる母語の方とのコミュニケーションを確立するために新しい言語を習得されてきた方は、

習慣的に頭をフル回転させていて一歩進化した思考をお持ちなのではないか、良いアドバイスをいただけるのではないかと思った次第です。

 

ティエリ:なるほど。

 

 

アドバイスになるかどうかわかりませんが、やはり習得したことを積み重ねていくことがポイントなのではないでしょうか。

新しいことを身に付けながら、それまでに経験してきたことも大切にする姿勢です。

そのために、まず自分にとって関心のあるテーマや身近なことからで良いので、知識や技術を積み重ねていき、次のステップへと歩みを進めていけばよいのではないかと思います。

 

中:ありがとうございます。

何かを変えようとするなら、現状をベースにして興味のあることに取り組み、それを継続し結果に結び付けていく、ということですね。

 

 

ティエリ:ひらめきというものは、あるとき突然生まれるわけではないと思うのです。

それまで積み重ねてきた経験などいろいろなものがあり、そこから「あっ、これはもしかするとこういうことなのではないか」と気付く。

そこから何か新しいものが生まれると考えています。

 

日本人のアイデンティティ確立に必要なこと

 

中:とても良いアドバイスをいただいたと思います。

 

 

最後に先生のご趣味についてお聞かせください。

 

ティエリ:日本の歴史が好きで、いろいろ本を集めたりしています。

 

中:特にどの時代がお好きですか。

 

ティエリ:どの時代もそれぞれ特有の面白さがあると思いますが、特に江戸時代が好きですね。

江戸を舞台にしたアニメやマンガを目にすると「あっ、これ見てみよう」となります。

江戸時代は古典の中の世界のように感じられますが、実際には既に多くの思想家がさまざまな討論をしていたのですね。

本を読んでいるとかなり近代的な考え方も多々認められ、新鮮な驚きがあります。

 

 

そのような文化的背景が、後の近代化のバネになったのではないかと思います。

江戸の初期も好きです。

戦国時代が終わり世の中から戦争がなくなって、武士たちはその後どのように存在していけば良いのかと、アイデンティティの問題に直面していたようなのです。

良い政治を行い人間同士の絆を支えていくべきではないか、そのためにそれまで受け継がれてきた文化をこういうふうに生かすべきではないか、そういったさまざまなアイディアを試行錯誤しているのです。

そのような試行錯誤の延長線上に、今の人間が抱えるアイデンティティの問題が存在し、今後も続いていくのではないかと思います。

 

 

中: 我々日本人も、自信を持ち新しいことに挑戦していくために、もう一度自分たちの歴史を振り返る必要がありますね。

非常に重要なことを教えていただいた気がします。

 

ティエリ:何かのご参考になれば幸いです。

 

 

シンカナース編集長インタビュー後記

緑豊かで、歴史と未来が融合するモントリオール。

ティエリ先生は、日本で暮らしていた幼少期の体験だけで日本を見ていらっしゃる方ではありません。

カナダで暮らされる今も尚、日本語に、そして日本文化に造詣が深く、最新の言葉も吸収されていました。

先生の「自分にとって関心のあるテーマから、知識や技術を積み重ねていき、次のステップへと歩みを進めていけばよい」

というお言葉には、看護師へのヒント、進化のヒントが含まれていると感じました。

日本の看護にも歴史があります。

この歴史に基づき、新たな未来を創り上げるには、次に来る時代を予測し、勇気を持って一歩を踏み出すことが必要なのかもしれません。

 

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ティエリ先生インタビュー前編

ティエリ先生インタビュー後編

 

Photo by Fumiya Araki

中 友美
A-LINE株式会社 代表取締役社長 シンカナース編集長
東洋大学文学部国文学科 明治大学大学院グローバルビジネス研究科 経営管理修士(MBA) 日本大学大学院総合社会情報研究科 総合社会文化博士(Ph.D.) ニュージーランド留学 帝京大学医学部附属病院 東十条病院 三井住友銀行 A-LINE株式会社/代表取締役社長 東京医科歯科大学非常勤講師 同志社女子大学嘱託講師 著書『わたしの仕事シリーズ2 看護師』新水社