No.164 病院長 池田寿昭様(東京医科大学八王子医療センター)前編:麻酔科医としてチーム作り

インタビュー

今回は東京医科大学八王子医療センターの池田先生に、

麻酔科の魅力と特徴、そして医療経営上の要点を伺いました。

救急医療とがん医療、そして移植医療

 

中:本日は東京医科大学八王子医療センター病院長の池田寿昭先生にお話を伺います。

先生どうぞよろしくお願いいたします。

池田:よろしくお願いいたします。

中:まずは貴院の特徴について教えてください。

池田:当院は1980年に東京都八王子市と学校法人東京医科大学のサポートを得て

開設されました。

今年で38年目を迎え、あと2年で40周年という節目に至ります。

開設当初は救急医療と移植医療を中心とする約150床の規模でしたが、

現在は610床、34の診療科を標榜する総合病院に成長しました。

当院の柱は、救急医療とがん医療、そして移植医療の3つです。

これらを強力に打ち出していきたいと考えています。

もちろん、それら以外の各診療科についても各科医師と協力し、

地域の患者さんのためにより良い医療の提供に努めています。

中:先生のご略歴をお聞かせください。

池田:私が卒業した頃は今と異なり、

ダイレクトに診療科の医局へ入局する仕組みでした。

私には「とにかく患者さんを救う医療に携わりたい。

蘇生も含め、全身管理をしっかりできるようになりたい」という希望があり、

それを目指すには、今なら救命救急センターや集中治療室が最適です。

しかし当時はまだそうした独立部門がなく、選択肢は麻酔科のみでした。

そこで麻酔科に入局し臨床経験を重ねていきました。

そして時代とともに徐々に確立されてきた救急医学に関わり始め、

救命救急センターに籍を置くようになりました。

麻酔科医療の広がりとともに

中:そういたしますと、先生が医師になられた当時から医療の進歩によって

麻酔科領域もかなり変化してきた部分があるのでしょうか。

池田:おっしゃる通りです。

私がまだ入局して医者になりたての頃の麻酔科は、

手術室での麻酔管理がほとんどでした。

ところがしばらくすると、難治性疼痛に対して麻酔で痛みをコントロールする

ペインクリニックが広がり始めました。

その後、手術後の管理を行う部署として、

手術室の近くに集中治療室が設置されるようになり、

麻酔科医の活躍の場が加わりました。

中:麻酔科医の技術が必要とされる領域が拡大してきたのですね。

池田:私も東京医大で集中治療に携わっていました。

当院に来てからも初めは麻酔科に在籍していましたが、

やはり救命救急センターに異動しました。

そして、救急搬送されてくる外傷患者さんや蘇生を必要とする心肺停止の患者さん、

あるいは薬物中毒で意識障害をきたした患者さん、

そういった超急性期の患者さんを多数みる機会をいただき、現在に至ります。

中:麻酔科の進歩の歴史を概説いただきましたが、

麻酔科の楽しさや、やりがい、魅力と言いますと、どのようなことでしょうか。

池田:麻酔科医がしっかりとした麻酔をかけなければ、難易度の高い手術、長時間の手術をできません。

またリスクの高い患者さんの手術では、麻酔科医の腕が術後の管理や予後にも影響してきます。

麻酔をしっかり上手くかけられることは、重要なプロフェッショナリズムにつながります。

ですから、そのような難手術が良い結果になった時は達成感を得られます。

麻酔科医がつなぐ多職種連携

中:麻酔科医が他科の医師と異なる点として、

ペインクリニックなどの外来を維持しながら、手術や救急において

様々な外科系診療科の医師との連携が必要なことが挙げられると思います。

そのようなパートナーシップを、一つ二つではなく、

全外科系の診療科と組むことの困難、あるいは反対に楽しさはございますか。

池田:恐らく、どの医療機関もそうだと思いますが、

当院でもチーム医療、医療連携を大切にしています。

ある一つの診療科だけ良ければそれで構わないというのではなく、

患者さんを中心に知恵を出し合って技術を提供していくことができれば、

難しい手術も乗り越えられるのではないでしょうか。

中:それは例えば、どのような場面が想定されますか。

池田:当院は先ほど申しましたように、移植医療にも力を入れています。

特に肝臓移植は手術が長時間になるだけでなく、携わるスタッフの連携がより重要になります。

執刀医との連携だけではありません。

看護師、麻酔科医、移植コーディネーターなど、幅広い領域のスタッフの協力が必要です。

そうでなければ肝臓移植のような高リスク患者さんの救命は困難です。

これまで手術が上手く行われてきたというのは、やはりチームワークがあり、

連携が取れていることの証左であり、だからこそ成し遂げられた結果だと考えます。

中:そういう意味で申しますと、先生は麻酔科の臨床医として長年、

架け橋的な役割を果たされてきたご経験が、

病院長になられた後のチームワーク作りや病院経営にも生かされているのでしょうか。

池田:そうですね。

麻酔科という科は先ほどお話があったように、

全科とディスカッションしていかなければなりません。

ディスカッションを重ねて各領域のプロフェッショナルが得意とするところを

最大限に引き出して、それを患者さんに提供できればと思っています。

医療安全なくして医療経営は語れない

中:病院長や教授といいますと、かつては

「黙ってついてこい」といったイメージが想像されることが多かったと思うのですが、

先生のスタイルは全く異なりますね。

池田:私は「黙ってついてこい」とは一言も言ったことがありません。

むしろ、若い先生によく言うことは

「無茶はしてもいいが無理はするな」ということです。

少し誤解を生じる表現かもしれませんが、意味するところは、

一生懸命になるのは良いが無理はするなということです。

無理をすると必ず事故につながります。

また「ない袖は振れない」ともよく言います。

つまり「まったく人が足りないのに手術するといったことはやめてくれ」

という意味です。

仮に体制が整っていないのであれば、

少し冷静になり違う選択肢を選んで欲しいと思います。

新しく来られた職員には、この二点を必ずお話ししています。

もう一点、私が病院長に就任した際にお話ししたことは

「医療安全なくして医療経営を語ってはいけない」ということです。

医療安全は今でも重要課題と位置付けています。

後編に続く

Interview Team