No.275 株式会社ニチレイバイオサイエンス 寺嶋一樹 執行役員 後編:プレゼンスを高め医療の充実をめざす

インタビュー

前編に引き続き、株式会社ニチレイバイオサイエンスの寺嶋執行役員に、

同社のめざす方向性や、看護師への思いについて語っていただきました。

 

めざす企業像

 

荒木:ここまで、新拠点である「グローバルイノベーションセンター」について

いろいろと教えていただきましたが、

新拠点開設の先に貴社がめざすものは何でしょうか。

 

寺嶋:新拠点のコンセプトとしてお話ししたように、イノベーションで新たな価値を創造し、

良質な製品をリーズナブルに安定供給し続ける企業でありたいと思っています。

それに加え、世界を視野に仕事をしていきたいという気持ちを強く抱いています。

新拠点の名前に「グローバル」という言葉が入っているのは、その表れです。

当社の競合となるのは、グローバルに事業展開する企業がほとんどですので、

そのなかでプレゼンスを高めていくためには、

世界に認められる価値や品質を持つ、製品・サービスを提供していかなければならないと思います。

 

 

荒木:ありがとうございます。

それでは、次に、少し視点の違うご質問をさせていただきたいと思います。

私たちは、主に看護師を対象にしたメディアを運営しているのですが、

貴社の製品のなかで、看護師に馴染みのあるものはどういったものでしょうか。

 

インフルエンザ診断キットへのこだわり

 

寺嶋:代表的なのは、インフルエンザの診断キットでしょうね。

当社では現在、3つのインフルエンザ診断キットを製造しており、

1つは、自社で販売を行っています。

残り2つはOEMとして当社で製造し他社ブランドとして販売されています。

 

 

荒木:製品に対するこだわりはございますか。

 

寺嶋:まずは、判定までの時間をできるだけ短くすることです。

インフルエンザが疑われる患者さんには、重篤な感冒症状が出ている場合も多いので、

医療機関側としても、他の患者さんへの感染が気になりますよね。

そのため、できるだけ早く診断をつけて、ご自宅で療養していただくことが必要です。

当社の製品は、判定までのスピード向上に力を入れており、

陽性反応であれば30秒程度で、陰性についても5分で検査を行うことが可能です。

 

 

荒木:その他には何かありますでしょうか。

 

寺嶋:あとは、色分けですね。

当社では、インフルエンザの陽性・陰性が単にラインで分かるだけではなく、

型別に色分けして判定結果が出るようにしています。

 

 

というのも、インフルエンザの診断キットでは稀に、

非特異反応と言ってインフルエンザではないのにラインが出てしまうことがあります。

色分けがしてあると、そうした場合にA型・B型に対応する色がはっきりと出ないので、

誤って診断してしまうリスクが少なくなるのです。

 

 

荒木:なるほど。

ところで、先ほど判定までのスピードを意識しているというお話がありましたが、

そもそもインフルエンザの正確な検査は、

発熱後かなり時間が経過してからでないとできないのではないですか。

 

正しい操作が早期診断に繋がる

 

寺嶋:確かに昔は、発熱後早い段階での簡易検査は無理だと言われていました。

ですが現在は、改良を重ね、早い段階からの検査も可能になっています。

発熱後3時間ほどでも、90%以上の精度で検査できるようになりました。

 

 

荒木:そうなのですね。早い段階から治療も開始できるので、とても助かりますね。

正確な検査というのは、誰がやっても同様に可能なものなのでしょうか。

 

寺嶋:誰がどうやっても良いというわけではなく、

早い段階からきちんとした判定を出すためには、検査キットの正確な操作が必要です。

最近では、鼻かみ液での代用も可能になってきましたが、

検査では一般的に細い綿棒を鼻腔内に挿入し、

鼻の奥で増殖したインフルエンザウイルスの検体を採取することになります。

 

 

このとき、正しい角度で適切な深さまで綿棒を入れないと、

十分な量のウイルスが採れないため、ウイルスの増殖が少ない早い段階では、

正確な診断ができなくなってしまいます。

 

荒木:検査の仕方によって、結果が変わってしまうのですね。

 

寺嶋:その通りです。

そのため、今後はさらに、正しい使い方を知っていただけるよう、

医療関係者向けに勉強会を開催するなど啓発活動にも力を入れていきたいと思っています。

 

 

そのなかでも特に、看護師さんには、正確な検体採取の有用性をご理解いただけるようにしていきたいですね。

と申しますのも、インフルエンザの検体採取は、医師が行う場合もありますが、

医師の指示に基づいて看護師や臨床検査技師が行う場合もあります。

2017年に発刊された雑誌「医学検査」で、臨床検査技師に比べ、看護師が検査をした場合には、

陽性率が低いという報告が出ています。

その報告では、陽性率が低くなる原因にも触れており、院内の看護師の2割ぐらいが、

「綿棒を鼻腔から耳孔に平行に入れる」という、正しい操作について知らなかったと回答しているのです。

 

 

荒木:なるほど。

報告は、特定の病院のケースではありますが、他病院にも同じような状況はあるかもしれません。

この記事によって、1人でも多くの看護師に正しい操作が伝われば良いですね。

そもそも、寺嶋様は、看護師という職種をどのように捉えておられますか。

 

看護師への思い

 

寺嶋:大変なお仕事だと思いますね。

専門的な技術・知識や高度なコミュニケーション力を身につけなければならない職種ですし、

非常に多忙な業務のなかで、患者さんと向き合って会話をし、

信頼関係を構築していくのは簡単なことではないと思います。

検査機器・試薬を製造している立場からは、検査キットの確実な操作をしていただくとともに、

個々の患者さんにきちんとした説明をし、安心して検査を受けていただける環境を整えて頂きたいと望んでしまいますが、

実際の現場ではそのような余裕はなかなか持てないのが現状だと思います。

皆さん、限られた時間のなかで努力されていますので、本当に尊敬すべき職種だと私は思います。

 

 

荒木:ありがとうございます。

それでは、最後に、看護師に向けて何かメッセージをいただけますでしょうか。

 

寺嶋:私たちは、医療・健康・暮らしに関わるメーカーとして、

看護師さんを含めた医療従事者の方のお役に立ちたいと思っています。

新しい医療機器等の開発も行いますが、今ある製品についても、

精度を高める、使い勝手を向上させるなど、日々改良を行い、

皆さんの診療活動がより良いものになるよう、立ち止まらず努力を続けていきたいと思います。

 

 

看護師の皆さんも、ご多忙とは思いますが、

お使いの製品に対して気付いた点がありましたら、是非フィードバックをお願いします。

また、私たちも啓発活動には力を入れていきますので、

製品を正しくご使用いただき、患者さんに最適な診療へと繋げてください。

そしてその先で、さらに医療が充実した世の中を一緒に実現していきましょう。

 

 株式会社ニチレイバイオサイエンス執行役員の寺嶋様と迅速診断薬事業部の林様

 

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