No.276 関東脳神経外科病院 清水暢裕 院長 前編:新院長とともに発展する脳外単科病院

インタビュー

 

埼玉県・熊谷で脳神経外科の単科病院として地域のニーズに応えてきた関東脳神経外科病院

今春、その新たな院長に就任された清水暢裕へのインタビュー。

前編では同院の特色や先生のご経歴を中心に質問させていただきました。

 

東日本初のサイバーナイフ導入

 

久保:今回は関東脳神経外科病院院長の清水暢裕先生にお話を伺います。

先生、どうぞよろしくお願いいたします。

まず、貴院の沿革や特徴をお聞かせください。

 

清水:当院は脳外科の単科病院として開設し、35年ほどたちます。

現在、急性期が101床、回復期が48床です。

特徴ということでは、先進的な医療機器を導入してきていることが挙げられると思います。

 

 

例えば2005年に東日本で初めてサイバーナイフの運用を開始しました。

サイバーナイフは今でこそだいぶ増えてきましたが、それでも埼玉県内では数えるほどしかありません。

昨年は手術用ナビゲーションシステムを導入し、より精緻な手術に活用しています。

 

 

久保:患者さんの疾患としては、やはり脳血管疾患が多くを占めるのですか。

 

清水:約3分の2が脳血管疾患です。

その他は脳腫瘍や脳動脈奇形などです。

脳神経外科疾患に関してはほぼ当院内で治療を完結できる体制にあります。

 

繊細な脳外科手術に惹かれて

 

久保:次に先生のご経歴についてお伺いします。

先生が医師になろうとされた理由をお聞かせいただけますか。

 

清水:それはやはり父が医師であったことが大きいです。

また、祖父に脳梗塞の後遺症があり、麻痺のある姿を小学生の頃から見ていましたので、

子ども心に「自分がなにかできないか」と、よく思っていた記憶もあります。

 

 

久保:お父さまが貴院を開設されたのでしょうか。

 

清水:はい。

熊谷市内の総合病院で脳外科医として勤務後に独立して当院を始めました。

 

久保:そうしますと先生も早い段階から、脳外科医を志向されていたのですね。

 

清水:いずれ病院を継がなければいけないことはわかっていましたので、

他の選択肢を与えられていない状況でした。

ただし、私自身も学生時代から脳外科の手術が自分に向いていると感じていました。

 

 

久保:脳外科の手術の特徴といいますと、どのようなことでしょうか。

 

清水:手術の繊細さですね。

私が学生の時も既にマイクロサージェリーが始まっていて、

モニターを見ているだけで手技を理解でき、興味を惹かれました。

 

 

また上手な術者の場合、出血がほとんどないことも脳外の手術の特徴です。

消化器の開腹手術では脂肪組織の切除などを伴いますし出血も多くなりがちなのに比べて、

脳外は洗練されているように感じたものです。

同じ理由で眼科も好きでした。

 

今春に院長就任

 

久保:卒業後のご経歴をお聞かせください。

 

清水:岩手医大の卒業後はこちらに戻り群馬大の脳外の医局に入りました。

5年ほど関連病院を回っていたところ、偶然にも当院に派遣されて、以来、ここで働いています。

 

久保:ではこちらではまず勤務医としてスタートしたのですね。

院長に就任されたのはいつごろでしょう。

 

清水:2019年の4月です。

父が高齢になり、「若い力に任せた方が良いのではないか」と考えたのだと思います。

 

 

久保:そうでしたか。では、まだ昨年のことですね。

院長ご就任にあたって、何か覚悟と言いますか、期するものはございましたか。

 

清水:自分の判断で200人を超える職員を守っていかなければいけないという責任の重さに、

覚悟を新たにしました。

「では何をするのか?」と問われるとすぐに明確な答は出こないのですが、まだ若いので、

とりあえず立ち止まらず変えるべきことは変えて経営していこうと考えています。

 

SCU開設へ。ポイントは看護師の採用・再教育

 

久保:いま具体的に計画していらっしゃることはございますか。

 

清水:脳外専門病院ですから現在も当然24時間体制で専門治療を行っていますが、これを発展させ、

今年度中に6床のSCU(Stroke Care Unit)を立ち上げる予定です。

 

 

久保:そうしますと新たなスタッフの確保が必要ですね。

 

清水:その点がクリアしなければいけない一つのハードルです。

ドクターのほうは目処が立っています。

しかし看護師のほうがややネックです。

SCUとして3対1の看護体制をしくため、看護師の新規募集も始めています。

 

 

久保:すでに勤務されている看護師ではなく、外部からスキルを持っている看護師を招き入れるということでしょうか。

 

清水:いえ、そういうことではありません。

現在勤務している看護師にももちろん十分なスキルがあります。

しかし、新たにSCUを開設するとなると人員が不足します。

また、これを機に教育体制をよりしっかりしたものに変えていかなければいけないとも考えています。

まずはSCUを開設するとはどういうことか、

その意図をプリセプターにきちんと認識してもう必要があると考えています。

 

脳外科看護の特徴

 

久保:貴院では、他院で経験を積んだ看護師の方が多く働いていらっしゃるのでしょうか。

 

清水:中途採用が多いですね。

新卒は毎年3〜4人です。

 

久保:先ほどのお話の中に「脳外専門病院の看護師」という言葉がありましたが、

他院の看護師と何か相違はございますか。

 

清水:患者さんの急変が多いことや、動くことができない患者さんが多いこと、

また入退院や病室の移動も多く、状況が刻々と変化していくという点で、

他の病院に比べると恐らく忙しくて大変ではないかと思います。

 

 

単科病院の場合、他の診療科に異動していただくという手段が取れないことも、

私が「申し訳ない」と感じる面です。

ただ当院には回復期病棟もありますので、希望にそってそちらへ異動いただくことは可能です。

また、ひと昔前に比べてれば、看護師の数自体だいぶ増え、かつ病床をやや減らしましたので、

就労環境としてはだいぶ改善されたのではないでしょうか。

 

後編に続く

 

Photo by Carlos

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