前編に続き、高柳院長と藤倉看護部長に、病院の特色や看護師へのメッセージなどを語っていただきました。
慢性期看護に必要な看護スキルと「人生経験」
嶋田:多くの専門スタッフがそれぞれの知識や経験を生かして、
個々の患者さんにとって最も良いと思われる方法を探り出されている貴院のご様子が、よくわかりました。
その中で看護師にはどのような役割を果たしていらっしゃいますか。
高柳:一人の患者さんが入院されてそれから退院されていくまで、
数か月から長い場合では半年にわたる場合があります。
特に高齢の患者さんが増えています。
このような状況においては、経験豊かな看護師、医療においての「経験」のみでなく、
ご家庭において子育て等を通しての「人生経験」も豊富な看護師がたくさんいることは、
当院にとって大きな助けになっていると感じています。
看護職員の活躍を「働きやすさ」でサポート
嶋田:いまの院長のご発言について、看護部長はいかがお考えですか。
藤倉:確かに子育て中のママさん看護師は本当に大活躍しています。
また、活躍できるような体制を整備しています。
例えば当院には保育所が併発されており、かなりの数の看護スタッフが利用しています。
また小学校の春・夏・冬の長期休暇に合わせて学童保育も行います。
このようなハード面の支援に加えて、働き方にも柔軟に対応しています。
お子さんが小さいうちはパートとして働いていただき、お子さんが成長し手がかからなくなったら
正職員になっていただいて、ある程度、夜勤にも入っていただくという方法です。
嶋田:では貴院には、パートから入りその後に正職員になられ、
長く働いていらっしゃる看護師の方が多いのですか。
藤倉:はい。
子育て中の看護職を職員同士が支えあう環境があります。
パートから常勤になり、管理職になって活躍している看護職者も少なくありません。
みなさん、そのようなキャリアアップを目指されているようなところもあります。
患者さんの性格・特徴を把握することから始まる
嶋田:そのような看護師に、院長は何を期待されますか。
高柳:患者さんと接する時間が一番長い医療職は看護師ですから、
患者さんそれぞれの性格や特徴をよく把握していただいて、良いサービスを提供していただくことです。
入院中の数か月に渡るお付き合いにおいて、それを最も期待したいです。
嶋田:院長がこのようにおっしゃっていますが、看護部長、いかがですか。
藤倉:その通りだと思います。
長期に入院されていた患者さんが退院される時は
患者さんご家族と一緒になって涙してしまうことが少なくありません。
医療職者として患者さんの前で無闇に泣いてはいけないという思いはありますが、患者さんに寄り添い、
さまざまな障壁をともに乗り越えてきたことが頭をよぎり、ついついウルっとしてしまいます。
多職種間の意思疎通が大切
嶋田:少し話題を変えまして、院長、看護部長というお立場でマネジメントされる上での
ご苦労や配慮されていることをお聞かせいただけますか。
高柳:ドクター同士、あるいは多職種間の意思疎通ですね。
つまり連携です。
連携を密にするためのコミュニケーションの維持を大切にしていきたいところです。
藤倉:看護職に関しては何より、まず元気であることを強みとしたいところです。
しかし中にはメンタル的に病んでしまい勤務が困難になるスタッフもいます。
他院にお勤めの方から聞きますと、決してこのような看護スタッフは少なくないようです。
チーム医療が重要ですので私としては、普段できるだけスタッフの話を聞くことで、
少しでも楽になってほしいと配慮しています。
嶋田:スタッフの様子に注意し、意識的に声掛けをされるということですね。
藤倉:そうですね。
もちろん、声をかけられることを煩わしいと感じる人も、中にはいるかと思います。
しかし、「お疲れ様」にわずか一言でも加えてコミュニケーションをとることが、
大切なのだろうと感じています。
院内・院外でのコミュニケーション
嶋田:コミュニケーションを維持・改善するための取り組みなどはされていますか。
高柳:院内では新人歓迎のパーティーなどを、ことあるごとに催しています。
また、院内に限らず、近隣の医療機関あるいは介護関連施設の皆さんと交流する機会も多く、
地域連携の推進にも役立っています。
高柳:「わかば会」という職員同士の互助会のような会があります。
毎月お金を少しずつ出しあって貯めていき、食事会をしたりディズニーランドに行ったりと、
さまざまな催事を開いています。
院外での繋がりということで言えば、春日部市医師会の先生を中心に看護部長会という組織があり、
この近辺の医療機関の看護部長が集まって、食事をしながら情報交換をしています。
また、感染対策のため、当院と連携している病院でのカンファレンスにも参加しています。
読書と小旅行
嶋田:いろいろ教えていただき、ありがとうございました。
少しプライベートな質問ですが、院長と看護部長のご趣味をお聞かせいただけますか。
高柳:なかなか時間がとれず本格的な趣味は少ないのですが、通勤の途中の読書が楽しみです。
特にジャンルを選ばず、何でも「読み散らかす」ような読み方です。
あとは小旅行ですね。
時間ができた時にふらっと足をのばし、訪れた先々でその土地のものを口にするのが楽しみです。
藤倉:趣味というほどのことはなくて、これから見つけようかと思っているところですが、
休みの時に電車に乗っていろんな所を出歩くことは好きです。
ショッピングなどをしながらブラブラと歩くのが心地よくて、5〜6時間は平気で歩けますね。
そして自宅に帰ってきてから「今日はあれしたな、これしたな」と思い出しながらボーっと時間を過ごす、
それが趣味といえば趣味なのかもしれません。
看護師へのメッセージ
嶋田:それでは最後に、貴院のアピール、看護師へのメッセージをお願いいたします。
高柳:当院には「院是」というものがございます。
いわゆるスローガンです。
「病める人に対し良き奉仕者たれ」これが当院の院是です。
患者さんに対して良き奉仕者であることを目標に、職員全員が努力しております。
この春日部地区の地域に根ざした施設として、
これからも多くの方の役に立つようなサービスを提供していきたいと思います。
職員一同そういう心構えで臨んでおります。
藤倉:当院には多数の看護職員がいます。
年齢的にも20代から70代までに幅広い層に渡っています。
一人ひとりが自分の目標を決めて毎日仕事をしております。
働きやすい環境づくりも推進しています。
例えば、若い方でしたら、働きながら学校に通い、看護の質をより高め、自分を磨くことができます。
子育てをされている方であれば、お子さんを保育所に預けることも可能です。
お子さんが熱を出したり具合の悪い時などは、勤務時間を切り上げてお帰りになってください。
残ったスタッフがみんなで連携を取りながら助け合います。
そういう職場です。
お待ちしています。
インタビュー後記
院長、看護部長同時インタビューという貴重なお時間をいただきました。
高柳院長へ「看護師への期待」を伺いましたが、院長と看護部長の連携の良さが如実に現れていらっしゃる内容だと感じます。
長期に入院されていらっしゃった患者さんが退院される際は、ついついウルっとしてしまわれるという藤倉看護部長。
院長の望む看護師像を、自ら実践されていらしゃる看護部長の存在は貴重であり宝です。
医師と看護師の信頼関係構築と、連携の必要性を教えていただけたこと、心より感謝いたします。