No.239 春日部厚生病院 高柳寛 院長、藤倉みち子 看護部長 前編:回復期・慢性期の医療と看護

インタビュー

埼玉県東部に位置する春日部市の回復期・慢性期医療を担う春日部厚生病院

その院長の高柳寛先生と、看護部長の藤倉みち子様に、お話をお伺いしました。

春日部に根ざして、回復期・慢性期医療を支える

嶋田:本日は春日部厚生病院院長の高柳寛先生と、看護部長の藤倉みち子様にお話を伺います。

どうぞよろしくお願いいたします。

高柳・藤倉:よろしくお願いいたします。

嶋田:はじめに貴院の特徴を教えてください。

高柳:さまざまな医療サービスを提供していますが、ひと言で申しますと、

春日部地区のリハビリテーションや慢性期の患者さんを対象とする地域に根ざした病院です。

子育てをしながら看護師免許取得

嶋田:続いて、医師・看護師を目指された経緯をお聞かせください。

では看護部長からお願いします。

藤倉:はい。

看護師になる方の多くは通常、看護学校を卒業しますとすぐに病院等に就職されるのですが、

私は准看護師の養成学校を卒業後に結婚いたしまして、4人の子どもを産みました。

子育てをしながらパートタイムで働き、十数年過ぎた時に、私のまわりに居た看護師の姿勢を見て、

自分も看護を追究してみたいと思い通信教育で学び看護師免許を取得しました。

なぜ看護師を目指したのか明確な動機はないのですが、

小さかった頃から人の世話をすることが大好きでした。

今になって振り返りますと、そのような性分が原点なのかなと思います。

循環器領域の進化とともに

嶋田:院長はいかがでしょうか。

高柳:私の場合は父親が医師免許を持っておりまして、

臨床はしていなかったのですが保健行政に携わっておりました。

その関係か、高校生の頃から医学の道を意識していました。

ただ、父親とは違い「臨床医になりたい」という希望が早くからありました。

嶋田:ご専門は循環器と伺いましたが、どのように循環器領域に絞り込んでいかれたのでしょうか。

高柳:当時、内科診療において循環器のウェイトが高まっていた時期で、そこに魅力を感じました。

循環器領域はその後も急速な進歩を遂げて、例えばかつて収縮期血圧が200mmHgを超える患者さんを

外来でもよく見かけたものですが、薬剤の進歩により今ではほとんど遭遇しません。

ペースメーカーや植え込み型除細動器などのデバイスの進歩もしかりです。

米国留学、教授就任、そして院長へ

嶋田:大学ご卒業後のご経歴をお聞かせいただけますか。

高柳:大学院での研究と関連施設での研修を経て、

学位を取得するために東大第2内科に戻り心電図学の研究をいたしました。

学位取得後は東京第一病院、現在の国立国際医療研究センターに勤めた後、

ニューヨーク州立大学に2年間留学し薬理学を研究しました。

帰国後は獨協医大越谷病院、現在の埼玉医療センターに長く勤務いたしまして、

最後の10年間は循環器内科教室の教授として勤めていました。

獨協医大を定年退職した後、当院にまいりました。

4年半ほど前のことです。

嶋田:看護部長は看護師免許取得後、どちらでお勤めされていましたか。

藤倉:最初は個人病院の勤務から始まりまして、

一時期は子育てをしながら産婦人科の病院で勤務していました。

子育てと看護の両立

嶋田:子育てとの両立は大変だったのではないでしょうか。

藤倉:産婦人科に配属されていた当時、外来のほか手術室にも入っていました。

帝王切開は夜間が多いので帰宅後に呼び出されることもあり、手術が終了して自宅に戻り、

わずかに仮眠をとって朝食の支度を済ませてまた病院へ、ということもしていました。

その後は精神科、眼科、耳鼻科以外の診療科を回ってきました。

当院は今年で14年目です。

嶋田:看護部長に就任されたのはいつでしょうか。

藤倉:去年のことです。

スタッフの皆さんが協力的なおかけで、今の自分があります。

私は平成27年から副看護部長という立場にありました。

看護部長のお話をいただいた時は力不足であると感じておりましたので、かなりの重責のためとても悩みました。

しかし、チャレンジ精神でまわりの皆さまのお力をお借りし、病院の経営を学びたいと思い、

看護部長という職を務めていこうと考えました。

回復期・慢性期医療に求められること

嶋田:院長へお尋ねしますが、

病院運営にあたってふだん気をつけられていることなどがありましたらお聞かせください。

高柳:当院のような慢性期病院に入院される患者さんは、すぐにご自宅に帰れることはまずありません。

心疾患にしても脳卒中にしてもリハビリテーションのプロセスが必要です。

そのため、なによりも個々の患者さんの状態をよく把握し、

その状態に沿った治療あるいは看護が非常に重要です。

卒業後まもない看護師には、そういった判断や配慮がなかなか難しいところがあるかと思います。

実際にそれができるようになるにはかなりの経験が求められます。

当院はその点に重点を置き、地域の患者さんの需要に十分こたえられる看護体制を敷き、

ケアをしていけるような病院を目指しているところです。

看護師は元気でなければいけない

嶋田:看護部長はいかがでしょうか。

藤倉:やはり看護職員が元気でいないと、患者さんのご自宅への復帰をサポートすることは、

なかなかできないと感じています。

ですから一番心がけていることは、私たち看護職者が常に元気で患者さんに寄り添い、

いつも笑顔でいようということです。

そのためには、日頃からスタッフとの係わりを多く持ち、

育児や親の介護など困った時はいつでも相談できる職場でありたいと思っております。

すべてのスタッフがスペシャリストに

高柳:看護職員、それからリハビリスタッフ、さらにはヘルパーやソーシャルワーカーの役割も重要です。

例えば患者さんの退院に際しては、ご自宅の構造や環境を正確に把握しなければいけません。

そのために患者さんごとに専任のソーシャルワーカーが付き家庭訪問し、

階段の状況や室内の段差を確認します。

そういった分野のスペシャリストの養成も行い、十分なサービスができるように配慮しています。

365日リハビリ

藤倉:リハビリに関しましては、当院では土日も含めて365日リハビリを行っており、

患者さんの早期復帰を支えています。

また退院支援に関しては、患者さんご家族と一緒になって支障となっている問題を一つ一つ整理して、

安心して退院することができるよう支援しております。

後編に続く

Photo by Carlos