No.125 園長 石井則久様(国立療養所多磨全生園)後編:ハンセン病の先へ

インタビュー

前編に続き、後編では、国立療養所多磨全生園の未来や、看護師への思いやなどを語っていただきました。

手厚い看護を学び、実践できる場所

看護職員についてお聞かせください。

石井:看護職員は、看護師が140名程度、看護助手が約100名程度勤務しています。

この施設はハンセン病の療養所ですが、入所している170人弱の生活の場でもあります。

外来受診や入院、高齢者の場合は介護施設や介護の場でもある施設です。

そしてハンセン病の方の中には、後遺症が非常に重度の方もいますので、看護師や介護職員が多く配置されています。

手厚く看護をしたい、きちんと病気や人に向き合いたいという気持ちを持つ人には非常に向いています。

職員が多いので工夫し合って、患者さんや入所者の一人一人に、手厚く、より良い看護が学べ、実践できる場だと思います。

また「一般者」と言って、普通に日常生活を送っている方も手足が不自由な方が多いので、介護員や看護師が注視し、声掛けをしたりして安全で過ごしやすい環境を整えています。

患者さんや入所者の方と非常に深い関わりができ、それを大切にしたいと考える職員が多いため、長年勤務される方が多いのが特徴です。

自分がやらねば

国立療養所多磨全生園の園長になられた経緯をお聞かせください。

石井:ハンセン病の施設やハンセン病を正確に理解し、且つ歴史を知る人物が、この施設にいなければならないという想いで、2018年2月に園長として就任しました。

診療も行いますが、同時に啓発活動も行うことが大事だと思っています。

今後は170人弱の入所者の希望や生き甲斐を叶えられる施設にしたいと思っております。

入所者の平均年齢は、85歳と非常に高齢ですので、安心して生活できる場所を保証することを看護師や介護職員にはお願いしています。

また慢性期の方が多く、急性期の看護を教育することは難しいという側面もございます。

看護師が短期間でも急性期の病院で研修し、感じた事を現場で活かすことで、より良い看護や介護ができるよう願っています。

また、うちに准看護師を取得後の2年間の進学コースがあります。

その試験の中に卒業後ここで働く自己推薦枠があり、今年は7人ほどここに就職しました。

新人で入職された方は一定期間を過ぎたら、急性期の病院で研修出来る制度があるとより良いですね。

他所の病院から入職された方が、急性期での学びをここの看護師や介護職員に少しでも情報共有し、互いに切磋琢磨できればと思います。

日本のモデルケース

医療全体で見た時に2025年問題についての考えをお聞かせください。

石井: 病院と社会との繫がりがより強固に必要になると考えます。

その点ではここの療養所がモデルケースになるのではないでしょうか。

入所者が社会で生活している形になっており、体調に異常が出現したら病院やセンターに入っていくという一連の繋がりがあります。

そして、この園では、エンド・オブ・ライフや遺産の問題もあります。また認知症が進行した方も大勢おりますので、その方々の看護や介護が今の課題です。

看護師の感覚を尊重したいと思っております。「一般者」にも、看護師が定期的に見周りを行なうなど、チェック項目に沿ってケアを実施しております。

ポイントを抑えた看護を実施しつつ、研究発表等も行うことが大切ではないでしょうか。

施設には「一般者」もいれば通院患者、入院患者、施設の入所者もいますので、今後、高齢者ケアの分野、生活から疾患への流れなど様々な情報発信をして行きたいと考えております。

ご趣味を教えてください。

石井:週末や平日の夜に時々歌舞伎や寄席に行きます。

クラッシック鑑賞も好きです。浅草で寄席を聞いた後、夜にドジョウを食べたり、飲んだりして気分転換しています。

悩んでいてもつまらないし、人生楽しく生きることを大事にしています。

辛い事は早めに忘れて、楽しかった事はきちんと思い出して、また新たな一歩を踏み出すことですね。

入所者と語り合う未来

医師としての今後についてお聞かせください。

石井:園では入所者の自治会があり、自治会の方といつも仲良く会話し、「将来の全生園について」話し合っています。

緑が非常に多い所なので、緑を残したいと思いますし、今後も入所者の方がいる限り、病院機能や生活機能は存続します。

そうした機能と、全体のバランスをどうするかも課題になるかもしれません。

この土地や建物をどうしていくか、方向性だけでも示したいと思いますが、私一人の力では不可能です。

東村山市や様々な方のご意見を拝聞すること、入所者の方々のご意見を尊重することを大切にしています。

定期的に話し合を実施することも大事ですが、時には合間を縫って自治会の部屋へ行き、お茶を飲みながら意見を収集しています。

看護師も同じで、患者と看護師という形もありますが、そこに住んでいる住民と看護師、或いは住民と住民のようでもあり、家族のように付き合うこともあります。

入所して50年の方もいますので、レクリエーションなども頻繁に実施し、入所者と職員が一緒にカラオケ大会などもございます。

クラブや趣味の集まりもありますが、みなさん高齢になり、数は減少しています。

そのためボランティアの方々が来て、入所者の方たちと交流してくださいます。

学生の方々も施設で実習したい時には、目的を持っていただけたらと思います。

「こういう実習活動をしたい!」

と言ってくれると嬉しいですね。

自治会の方々や園とも相談しながら出来る限り、多くのボランティアや学生の方々との交流を実施できたらと思っております。

園長からメッセージ

石井:この施設はハンセン病の入所者がいる施設でございます。

急性期ではなく慢性期の施設ですが、ゆっくり入所者の方、患者さんと向き合いたい方は是非いらしてください。よろしくお願いします。

シンカナース編集長インタビュー後記

医学生時代、ハンセン病と出会ったことが皮膚科へ進まれるきっかけとなった石井先生。

私がハンセン病を知ったのは、子供の頃に観た「砂の器」という映画でした。

幼心にも、罹患する恐怖や、家族もまた苦しむ疾患であると感じていました。

知識がなかったこと、エビデンスがなかったことにより偏見が生まれてしまった疾患であるとともに、医療職であればきちんと学ぶ必要のある事象が多く点在します。

現在、ハンセン病は克服出来ました。

ただ、またいつ未知の疾患に人類が遭遇するか?

その時に医療職はどのような対応を取ることが出来るのか?

こうしたことを考えるためにも、石井先生は医療職のみならず、若い世代に向けた啓発を続けていらっしゃいます。

一つの出会いが、次の進む道を決め、進んだ先で更に研鑽することにより、また次の出会いや発見がある。

石井先生は、思いを実現される力に溢れた明るく未来を語っていただける方でした。

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Interview Team