No.172 病院長 関根信夫様(JCHO東京新宿メディカルセンター)前編:超急性期から慢性期まで

インタビュー

今回はJCHO東京新宿メディカルセンターの関根先生に、

病院の特徴と院長に就任されるまでのご経歴を伺いました。

慢性期医療まで手厚く対応する急性期病院

中:今回は、東京新宿メディカルセンター病院長の関根信夫先生にお話を伺います。

先生、本日はどうぞよろしくお願いいたします。

関根:よろしくお願いします。

中:まず、貴院の特徴をお聞かせください。

関根:当院は520床という比較的規模の大きい病院です。

特徴の一つは、さまざまな病床機能を有していることです。

具体的には、超急性期病床であるICU、そして7対1看護の急性期病床、回復期リハビリテーション、

地域包括ケア、さらに、都内で急性期医療も行う病院としては珍しいと思うのですが、緩和ケア病床もあります。

超急性期から慢性期まで広く対応できることが特徴と言えます。

もう一つは、総合病院として多くの診療科がそろっていることは当然ながら、

いくつかの領域では専門性の非常に高い治療を複数の診療科からなるチームで対応できる体制を

整えていることです。

例えば、脳血管障害については脳神経外科の他に、脳神経血管内治療科という診療科を設けており、

カテーテルによるステント留置(CAS)などを施行可能です。

もちろん脳血管障害に対する内科的治療を担う神経内科もありますし、

後遺症に対してはリハビリテーション科が対応します。

また、がん診療であれば、がんの部位ごとに各々の診療科が診療するだけでなく、

放射線治療や緩和ケア等に関しては多職種によるチーム医療を推進しています。

乳がんについては乳腺外科とともに、形成外科が乳房再建を担当し、放射線治療を含め、

ブレストセンター化を予定しています。

研究の経験が後の臨床の糧に

中:先生ご自身のことについて伺いますが、先生がご専門領域をお決めになる時、

どのように決められたのでしょうか。

関根:今になって思い返しますと、かなり迷ったような記憶があります。

内科の他、外科も考えました。

個人的には耳鼻科や小児科にも興味がありました。

しかしながら、医局への入局には‘人の縁’も大きく関係します。

例えば自分のクラブ活動の先輩に強く誘われて、といったことです。

私自身も、主任教授をはじめクラブ(医学部準硬式野球部)の先輩が多く所属されていたこともあって、

最終的に第4内科に入局、内分泌・糖尿病領域を専門とすることを決めました。

中:先生はスイスへご留学されご研究されたと伺いました。

その時期のご研究内容は現在の臨床につながっていらっしゃいますか。

関根:そうですね。

私の研究テーマはインスリン分泌機構に関するものでしたが、それは留学から帰国して後も続けていました。

インスリンはどのようなシグナル伝達経路を介して膵β細胞から分泌されるのか、

これはもちろん基礎研究レベルの話であって実臨床で確認できることではありません。

それでも、そのような基礎研究の経験があるからこそ、実際に糖尿病の患者さんを診るときにも、

「この患者さんのインスリン分泌パターンはどうなっているのだろう」と、

常に興味をもって診察しています。

例えば検査結果ひとつ見るにしても、研究で培われたイメージを通して見ることができるという点で

視野が広がるというのも、研究を行うことのメリットではないでしょうか。

病院マネジメントにつながる経験の積み重ね

中:研究と臨床がつながっていることがよくわかりました。

さらに医師という職業は、時に教育者にもなったりと役割が非常に多岐にわたります。

加えて先生の場合、病院全体をマネジメントするという別の責務もおっています。

先生が院長として病院経営を担うことになった経緯をお聞かせください。

関根:私がマネジメントに関係した最初の経歴は、大学病院勤務時代の臨床研修です。

今から15年ほど前、新しい臨床研修制度のスタートに備え、それに対応する研修担当部署が設けられ、

私がその担当に任命されました。

さまざまな研修プログラムを立ち上げ軌道に乗せる仕事は、それまで私がやってきたこと、

例えば内分泌や糖尿病の専門医としての職務とは全く違うものでした。

病院全体を見渡しながら、全科の医師、そして看護師や事務職員とともに仕事をした経験は

その後、非常に役立ちました。

当院に着任したのは2007年ですが、やはり前職でのそのような経験が評価され、研修管理委員長を任されました。

その後、院長補佐、副院長といったマネジメント役職で経験を積み、今に至っています。

もう一点付け加えますと、

日本医療機能評価機構のサーベイヤーを務めていることも、病院マネジメントの勉強になっています。

他院を審査するためには、病院全体のことを熟知していないとできない仕事ですから。

このような積み重ねが今につながっているのだと思います。

中:院長として管理する対象は当然、医師だけでなく看護師も含まれます。

医師や看護師をある役職につけようとする時、

その人がマネジメントできる人かどうかという適性を、どのように判断されるのでしょうか。

関根:自分の専門だけでなく、幅広い分野を見渡せ、しっかり人間関係を築ける能力が大切だと思います。

組織の中で人は一般的に縦割りの仕組みの中に生きています。

しかしマネジメントは組織を横にして、すなわち横断的に見ることが求められます。

例えば先ほど申しました臨床研修であれば、自分が所属する科だけを考えるのではなく、

他の科の研修の状況と比較して、良し悪しを判断するということです。

医療安全や感染制御など、病院全体に関係することもやはり同じで、

組織を横一線で見られるようになることが大切です。

そういう意味で病院における業務のあり方を考えますと、

医師は通常一つの診療科の中で働いているのに対し、看護師は、専門性の高い看護師を除けば、

様々な部署を経験することになります。

つまり、看護師は看護という業務を基本に据えて、色々な部門を横並びに見ることになるのではないかと思います。

こういう視点は、実は‘医療または病院の質’ということを考える上で、とても大切な技能なのです。

後編に続く

Interview Team