No. 274 白井聖仁会病院 布施秀樹 病院長 後編:次代の地域を見据えた病院作り

インタビュー

前編に続き、後編では、布施先生に看護師への思いや、めざす病院運営などについて語っていただきました。

 

看護師無くして医療は成り立たない

 

久保:赴任当時、医師と看護師の関係が良いことが印象的とのお話しをいただきましたが、

布施先生は看護師をどのような存在と捉えていらっしゃいますか。

 

布施:現代の医療は、看護師無くしては成り立たないと思っています。

病院では、医師が1人の患者さんと接する時間は限られており、

患者さんと会話し、日々の状況を把握しているのは、どこの病院でも看護師だと思います。

 

 

そのため、看護師からの情報が無ければ、医師は良い医療を提供することができません。

また、医師は患者さんに対しIC(インフォームドコンセント)を行い、

病状や治療の選択肢などについて、できるだけ丁寧に説明をしますが、

それでも「納得できない」「どの治療法を選べば良いのか分からない」といった方もいらっしゃいます。

そのような際に、看護師が患者さんの疑問や不安を聞き、一緒に考え、

意思決定を支援することが、とても重要になると思います。

 

 

久保:そうすると、看護師さんの力量は医療の質を左右することになりますね。

 

布施:おっしゃる通りだと思います。

だからこそ看護師には医学的な知識が必要になりますし、

認定看護師や専門看護師のように、特定の領域で高い専門性を持つ看護師の存在も大切だと思います。

また、それ以上に求められるのが、当院の理念にもある「患者さんに優しく」という姿勢です。

例えば、透析患者さんは、長時間動けない状態で治療を受けますし、日常生活の制限も一生続きます。

 

 

そういった患者さんに対しては、専門知識や穿刺の技術などを高めるだけでは不十分で、

親身になって寄り添い、透析を継続できるよう支援することが重要なのです。

もちろん透析に限ったことではありませんが、

看護師には、常に自分の親や兄弟に接するような気持ちで、患者さんに向き合っていただきたいですね。

 

久保:看護師が良い看護を提供できるために、病院として取り組んでいることはありますか。

 

「良い看護」のために病院ができること

 

布施:ひとつには教育です。

 

 

新人看護師に対しては、ラダー方式やプリセプター方式といった仕組みを活用しながら、

段階的かつ体系的な教育体制を整備していますし、

専門性を高めたいという看護師については、資格取得に向けて積極的にバックアップを行っています。

また、家庭と仕事の両立を支援する仕組みとして、

院内に保育所を設置し、病児保育にも対応していますので、

家庭を持つ看護師も、働きやすい環境になっていると思います。

 

 

あとは、これらの仕組みの前提として、病院の経営を安定化させることですね。

そうでないと、職員も安心して診療、業務に取り組むことができませんし、

その結果、患者さんにも良いケアを提供できなくなるおそれもありますから。

 

久保:ありがとうございます。

布施先生は、経営を安定化させるためには、何が必要だとお考えですか。

 

布施:日頃、特に経営のことは、これといって意識していないのですが、基本的に医師、スタッフが1人1人の患者さんに対して、いかに最善の診療を提供できるか、心に留めながら診療にあたることが大切であると考えています。そのことが患者さんからの信頼につながり、ひいては経営の安定化となると思います。

 

 

久保:貴院としては、今後どういった点に注力されるのでしょうか。

 

布施:救急も含めた急性期医療の機能を維持・強化することに加えて、地域における在宅医療の推進にも取り組んでいければと思います。

いわゆる地域包括ケアシステムの構築には、在宅医の存在が欠かせないのですが、

その数はまだまだ足りていないのが現状です。

当院は、現在、在宅療養後方支援病院として、在宅療養中の患者さんが急変した際に、

いつでも入院していただける環境を整備しており、また、訪問診療、訪問看護なども行っています。

 

地域連携の重要性

 

布施:ただし、地域完結型の医療提供体制や、地域包括ケアシステムは、

1病院だけの取り組みで実現できるものではなく、地域連携の強化が欠かせません。

当院でも地域連携には力を入れており、緊密な病院連携、診療連携の達成に向けての取り組みをすすめており、

スムーズな入退院の流れを作るなど、地域連携室を中心とした活動を続けています。

 

久保:医療機関以外との連携はいかがですか。

 

 

布施:そうですね。

地域包括ケアシステムの時代においては、医療だけではなく、

行政も交え、医療と介護や福祉が一体となる必要があります。

白井市においても、在宅医療・介護連携、認知症対策推進協議会が数年前から発足し地域包括ケアシステムの構築に向けた地域連携の取り組みが始まっており、

私もその委員を務めるなど、当院も積極的に参加しています。

 

久保:進捗はいかがですか。

 

布施:開始から数年が経ち、かなり進んできたという印象です。

 

 

もちろんまだまだ道半ばの状態ですので、今後無理のない範囲でさらに加速させていく必要はありますね。

当院としても、新築移転に伴って当院と聖仁会グループが運営する特別養護老人ホームが併設する形にもなりましたので、

グループ全体で包括的な医療・介護を提供できる体制となっていますので、

今後も地域全体に貢献できるよう尽力していきたいと思います。

 

久保:なるほど。

その他には何かございますでしょうか。

 

布施:予防医学への取り組みや情報発信ですね。

 

 

高齢化社会では、一人ひとりが少しでも長く自立した生活を送ることが求められますので、

予防医学にも力を入れていかなければなりません。

当院では現在、健診センターを設け、専門の医師を中心に人間ドッグやがん検診、特定健診などさまざまな健診を行っていますが、

今後、さらに充実させていきたいと考えています。

また、地域住民に、病気のこと、医療のこと、当院のことなどを正しく知っていただくことも重要なので、

今行っている市民公開講座などの情報発信活動も活性化していくことも必要だと思います。

 

 

久保:自院のことだけではなく、これからの地域を見据えた活動が大切なのですね。

素晴らしいお話、ありがとうございました。

最後に、改めて、看護師にメッセージをお願いします。

 

看護師の皆さんへ

 

布施:当院は、急性期および療養型病床を有し、緩和ケア、人工透析など、多様な診療を行っていますので、

きっと、一人ひとりの興味や適正に合った、活躍の場が見つかると思います。

 

 

また、教育システムを整備し、資格取得にも積極的に支援しているほか、

保育所を完備するなど、家庭と仕事の両立もバックアップしていますので、

安心して働き、学んでいただける環境ではないかと思います。

現在は、3大学からの実習生を受け入れるなど、看護部の活動も活性化していますので、

興味のある方は、是非当院に来ていただき、

私たちと一緒に、素晴らしい病院、素晴らしい地域を作っていただければと思います。

 

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