前編に続き伊藤先生に、病院経営のマネジメント、甲状腺専門病院における看護師の働き方、
医療や看護のAI化といった話題について、お考えをお聞かせいただきました。
名古屋と札幌にも甲状腺専門の医療拠点
中:マネジメントのお話のつながりでお尋ねいたします。
病院経営に最も重要こととはどのようことでしょうか。コアの部分だけで結構ですのでお聞かせください。
伊藤:病院という組織は資格職者の集合体ですから、どうしても縦割りの組織になりがちです。
そこを横断的に見ることが大事なことだと思います。
また当院の60床という規模は、
院長が先頭に立って「自分が頑張るから付いてこい」と職員に言っていられるほど小さくはなく、
そうかと言って私が白衣を脱いで経営者に徹するほどの規模でもありません。
よって両者のバランスをとりながら自分のペースで続けております。
私の代になってからの経営的な挑戦を申しますと、名古屋と札幌に診療所を開設したことが大きな変化です。
互いの病院間で人事異動もあり、その点は理事長、あるいは経営者としての仕事だろうと認識しています。
実務面では、電子カルテを比較的早期に導入していました。
これにより院内の意思疎通が各段にアップしたものと感じます。
専門であるがための苦心
中:貴院の大きな特徴は甲状腺に特化していることだと思いますが、
運営や経営の面にも何か特徴的な工夫などされていらっしゃいますか。
伊藤:私自身もそうなのですが、
業務内容がやはり同じことの繰り返しになってしまう傾向があることは否めません。
これは楽なようであって、実は大変なことです。
甲状腺疾患とその合併疾患に関しては、
常に完璧でなければいけないという緊張感を持ち続けなければなりません。
そうであるために、最も恐れていることはマンネリ化です。
マンネリ化の懸念を払拭するために、先ほど申しましたような病院ぐるみで勉強会などを行っています。
看護師に関しても、急性期病院に求められる専門性と効率性の追求とともに、それらと相反することの多い、
療養に求められる「心のケア」も大事にし、その双方にわたる勉強会を行っています。
医療のAI化、看護のAI化
中:看護師について触れていただきありがとうございます。
ところで今、医療のAI化が進み始め、あるいは2025年問題への備えのため、
日本の医療システムが大きく変わろうとする中、
看護師の役割も自ずと変化していくのではないかと思うのですが、先生のお考えをお聞かせいただけますか。
伊藤:医療とAIについて申しますと、私どもが行っている内分泌領域の診療は
非常に相性が良いと考えております。
内分泌疾患は検査結果の数字から客観的に病態を評価することが多いからです。
そこで我々は独自にコンサルティング会社と組み、アメリカのメイヨークリニックと協力して、
実臨床においてAIが何をどこまでできるのか検証しているところです。
医療のAI化は既に是非を論じる段階は過ぎています。
当院でも可能なところから進めていくつもりです。
看護業務へのAIの応用も模索しています。
ただし「患者さんと接する」という点において人間が機械に勝ることは間違いなく、
その視点を絶対に失ってはいけません。
私自身も入院経験がありますが、入院生活を送る上で接する機会が多いのは、
担当医よりも、圧倒的に看護師であることを強く実感しました。
ですから看護に関しては、あまり効率だけを追い求めてばかりだと、
逆に患者さんの期待に応えることができなくなるかもしれません。
中:貴院にはどのような看護師が適任だと思いますか。
伊藤:私自身は医師のスタート時点から非常に狭い分野で生きてきましたが、
一般的にはやはりジェネラルなところを学びながら「自分の生業はこれだ」と気が付き、
その結果として甲状腺疾患の診療や看護に入っていくというのが理想ではないかなと思います。
多彩な院内イベント交流
中:病院内のスタッフ同士の交流が非常に盛んという話を伺ったのですが、
どのようなことをなさっているのでしょうか。
伊藤:組織内でのイベントは活性化のために積極的に行うべきだという考えと、
反対に職員の負担になるからやらないほうがいいという考え方があるようです。
私どもは前者のスタンスで、伝統的に熱心に取り組んでいます。
一番大掛かりなイベントは、2〜3班に分かれての職員旅行です。
名古屋や札幌のスタッフも含めて行います。今年は上海に参ります。
また、表参道での歴史が長いことから、年度初めに、明治神宮へ全員で参拝します。
その他、夏は納涼パーティー、秋にはお月見の会、11月には懇親会を全員で、
12月は忘年会を部署ごとに行っています。
政治家の講演会や芸能人を呼んでパーティーをすることもあります。
少し宴会が多すぎるような気もしますが、宴会ばかりでなくスポーツも盛んで、
トライアスロンやバレーボール、釣り、登山などのクラブが活動しています。
また毎年開催されている「渋谷・表参道 Women’s Run」という女性のマラソン大会には、
当院からも女性職員が多数参加します。
中:本当に多彩な活動をなさっているのですね。
伊藤:普段は縦割りになりがちな病院という組織の中で、
横のつながりを強化できる大切な機会だと考えています。
女性だからこそ可能な甲状腺疾患の看護に期待
中:それでは最後に看護師へのメッセージをお願いします。
伊藤:甲状腺疾患専門、伊藤病院院長の伊藤公一です。
看護師として活躍している方、それからこれから看護を目指す方へお伝えしたいことは、
甲状腺疾患は女性に非常に多い疾患だということです。
ですから多くの方にとって、同性ならではの問題として捉えていただきたいと思います。
甲状腺疾患では軽微なホルモンの異常で、全身にさまざまな症状が現れてきて、
やはり気持ちの上でも落ち着かなくなってしまうことがあります。
様々な性質のがんも生じます。
このような甲状腺疾患の患者さんを診る看護師には高い専門性が求められます。
それらの要求に対して正確に応えられる看護師を、私どもはこれから
どんどん育てていきたいと思っております。
是非とも伊藤病院に注目いただければと思います。
よろしくお願いします。
インタビュー後記
明確に未来の医療を見据えていらっしゃる伊藤先生。
医療とAIに関しては、既にAIが出来る範囲の検証も開始されていらっしゃるとのことです。
AIが誰の為になるか?という視点で、得意なこと、不得意なことを見極める大切さを感じました。
先進的な取り組みをされていらっしゃる、専門特化した病院、場所は表参道という特徴が明確な病院です。