前編に続き、病院の特色や看護師との協力関係について様々なお話を伺いました。
スタッフを引きつける吸引力
貴院の特色を教えてください。
金丸:当院は311床を有し、この規模を維持する一方で救急医療の拡充も目指しています。
そして非常にいいドクターが集まっていることも特色です。
脳神経外科では、血管内治療も手がけ良好な予後へつないでいます。
整形外科も力を入れています。
実は私、ゴルフが大好きで、雪の日に転倒して左肘を粉砕骨折してしまいました。
当院の整形外科にスポーツ整形のプロフェッショナルがいまして、彼が「先生、治しときます」と言ってオペをしてもらい、以前通りに動くように戻りました。
飛距離も前と変わりません。
そして、循環器内科です。
循環器の部長は国内外でロータブレーダーの指導をしている権威です。
そして血液内科も現在常勤7人、無菌室が6床。
白血病、多発性骨髄腫、再生不良性貧血など、ありとあらゆる血液疾患を治癒しています。
最近は外科に非常に優秀なドクターがグループで来てくれまして、今後は血液がんと消化器がんというがん医療、それに心臓血管、脳血管の血管治療、整形外科の外傷といった大きな柱を何本か立てようかと計画しています。
医師と共有できる看護師に
今後ナースが進化するために必要だと思われることは何ですか。
金丸:看護は今、養成課程での教育がどんどん進化し、知識という点では、すごい勢いで成長しています。
その一方で私は常に患者さんあっての我々だと思っております。
絶対に忘れてはいけないことは、人のためになるためにここにいるのだということ。
高度な知識を得て、ERなどでかっこいいと思われるような仕事をすることもいいことだとは思います。
ただ、患者さんのお話を聞きながら問題点を掘り下げ、それをきちんと医師と共有できる、そういう能力のあるナースになってほしいと思います。
先生のお考えになる「優秀な看護師」の具体像をお聞かせください。
私が言う優秀な方というのは、例えば「先生、患者さん今日は何かいつもと違う気がします。何だか脈が速いし、どこかフラフラしているんです」ということから始まって、きちんと医師に患者さんの変化を報告してくれる人。
「先生、もしかして治療後なので敗血症性ショックではないでしょうか」、「そうだね。至急検査してみましょう」と検査をして救われた患者さんが何人もいます。
外来でもしかり。
「今日の患者さん、お腹痛いと言っていますが、妙に冷や汗をかいています。ただの腹痛ではない気がします」と言ってくれたので、診察すると腹部大動脈瘤でした。
我々医師と看護師とが違う方向から情報を持ち寄って患者さんのためにそれを共有できれば、最高の医療になると思っています。
原点を忘れないということ。
知識をつけ、満足してはいけませんね。
医師と看護師は協力しあうライバル
金丸:いつも思うのですが、看護師さんは、ずっと患者さんのそばにいて話を聞いています。
故に患者さんが心を許し、看護師さんにしか言わないことが沢山あるのだと思います。
私自身は今の院長という立場では業務が多すぎて、患者さんと座って世間話するという一番好きな時間をとれないのですが、たまに患者さんが「先生、実はね」と話してくださることがあり、それが本当に素晴らしい情報になることがあります。
ある時、病棟師長から「患者さんのことを先生の方が知っているのは許せない」と言ってくれ「お互いライバルみたいだね」という話をしたことがありました。
すごく嬉しかったですね。
看護は看護で誇りを持ってほしい。
我々のどちらが上の存在ということは絶対にないので、患者さんを中心として僕らが協力しなければ良いことができるわけがない。
だから僕らがお互いにライバルになった方がいいと思っています。
看護師へのメッセージ
金丸:看護師のみなさんは、私にとって最大の友人でありライバル、そんなふうにずっと思ってきました。
看護師さんたちはやはり患者さんに一番近い存在で今後もあり続けてほしい。
知識はとても大事なものです。
しかし、それ以上に大事なのはナイチンゲール誓詞の通り、心だと思います。
患者さんに寄り添う良い看護師さんに、みなさんなられてください。
頑張ってください。
シンカナース編集長インタビュー後記
金丸先生と同様に、明理会中央総合病院になる以前の東十条病院で私も勤務していました。
久し振りに訪問する東十条の地はとても懐かしく、タイムスリップしたような気持ちになりました。
病院が閉院するという衝撃は、勤務しているスタッフのみならず、受診してくださっていた患者さんや家族にも関わる。
現在は、離れてしまった患者さんも戻って来てくださり、外来は多くの患者さんで溢れていました。
信頼回復に力を入れられた金丸先生のお話は、責任感溢れるリーダー像そのものだと感じました。
金丸先生の元に多くの医師が集結されていらっしゃるということも、必然なのだと思います。
過去の自分に出会える、そして未来を創造する貴重なインタビューの時間でした。