No.144 病院長 田邉一成様(東京女子医科大学病院)後編:医療にAIを

No.144 病院長 田邉一成様(東京女子医科大学病院)後編:医療にAIを

  • 2018年5月27日
  • 病院長 インタビュー
No.144 病院長 田邉一成様(東京女子医科大学病院)後編:医療にAIを
No.144 病院長 田邉一成様(東京女子医科大学病院)後編:医療にAIを

前編に続き、 田邉先生に医療の未来とも言えるAIの台頭やシンギュラリティについてなどお話いただきました。

 

心を閉ざさない

 

技術の進化にともない、システムやスタッフを進化させてきたのですね。

 

田邉:大切なことは「そんなことできないだろう」と心を閉ざさないことです。

アンテナを張っていないと、情報は入ってきません。現在、取り組んでいるのは、医療の中にAIを大幅に導入することです。

AIについてアンテナを張ると、いろいろな情報が入ってきます。

「これは使える」「こうしたコラボレーションをしよう」など新たな発想へ繋がる貴重な情報を収集することが出来ますね。

 

 

医療は、人が実施することで事故が起きてしまうことは多々あります。

それをいかに機械に上手に置き換えられるかどうかが鍵だと思います。それにより、働く人の時間もかなり短縮できます。

そのように考えて物事を進めないと進めることは出来ません。

「このままでいい」と思っていれば、結局ずっとこのままになってしまうのです。

 

 

AIの導入により患者さんのみならず、医療職にも恩恵があるわけですね。

 

田邉:絶対そうだと信じています。

もちろん、患者さんのことを考えて変えるわけです。

患者さんが楽になるには、どうするか?傷が小さくなり、早期退院できるということが一番重要です。

また、それと同時に、いつも考えていることは、スタッフをいかに大切にできるかということです。

時間外労務を減らすためにはどうすればいいか。

より仕事の量を減らす事を真剣に考えなければ、良くはならないですよね。

そうした事を考えることは、結構楽しいことです。

 

 

次の目標から、違うものが見えてきますから。昨日やっていた事を、くり返すだけではつまらないですよね。

目標をしっかり定め、そこから行動に移し目標に一歩ずつ近づくために、着実にものごとを進めるようにしています。

 

人かロボットか

 

先生の描かれる未来の中に、テクノロジーと人の融合がおありになるのですね。

 

 

医療を更に進化させるために必要なものは、積極的に取り入れていかれるという。

 

田邉:人の手を使うから間違いも増えます。

ですからロボットやAIにどんどん仕事をシフトさせていくのが一番良いと考えています。

こうした話を聞くと「やっぱり人にやって欲しい」「機械に何でも出来るわけない」と思っていませんか?

 

弊社のビジョンは「看護における知識労働が自動化」です。医療業界も可能なことはAIに置き換えていく必要があると考えています。

 

 

医師からテクノロジーと人の融合についてお話を伺うことはありませんでした。ですので、とても興味深く先生のお話を伺うことが出来ています。

 

田邉:人は、大切にする必要があります。

一方で「大切にするとはどういうことか?」と考えるわけです。

福利厚生も大事ですので普段から考えていますが、仕事量が減るということが一番良いと思っています。

現在、病院の建て替え工事が進んでいます。

全室個室を予定しています。

やはり個室にしないと、人の尊厳を守れません。排泄行為にしても大部屋で動けないからとベッド上での排泄を促されたら尊厳は傷つくのです。

こうしたことは改善しなければならない。

発想としては、せめて個室で、出来れば排泄介助はロボットに対応してもらいたい。

ロボットが実施してくれる方が、患者さんとしても、余程気が楽なのではないかと。

 

 

バイタル測定も長年進化がありません。

アメリカでは既に始まっていますが、腕にはめた機械で、バイタルが自動的に記録されるシステムがあります。

看護師が転記するから間違えてしまうわけです。

こうしたことはもう人が行う仕事ではなくなって当然ではないでしょうか。

こうして減らせる業務は積極的に減らしていくことが出来ると考えています。

 

 

2045年に来るシンギュラリティ

 

確かに、バイタルの自動測定や電子カルテへの転送は、今の技術を持ってすれば、それほど難しいことではないことは明らかですね。

 

田邉:10年経てば、病院は大きく革新的に様変わりすると思います。

薬剤の治療もすごい勢いで進み続けています。

今政府が「人生100年」と言っていますが、これは科学的な根拠で平均寿命がほぼ100歳であることが見えてきたということです。

我々医療職が提供することは、更に身近な問題として捉えていく必要があると考えています。

2045年のシンギュラリティの時期にはもう人生500年なんていうことになる可能性もある。

その時に考えるのでは遅く、既に視野に入れて医療設計もしていく必要があるわけです。

今、我々が見ているものが全てではなく、更なる未来の医療の姿を思い浮かべることが必要ですね。

だからこそ、新たに病院を作るにしても、未来を想定して設計をします。

自動化でバイタルが取れ、手術もかなりの部分は人の手を借りないで出来るようになる。

画像診断も、撮影後自動的に解析されるなど、ここからの10年で劇的に医療は変化があると思っています。

 

 

科学技術は加速度的に発展している。まさにシンギュラリティの考え方ですね。

今は緩やかに見える技術のカーブが、技術的特異点に向かって進化を遂げる。我々もこれを信じてビジネスを進めています。

 

田邉:今、我々が見ているものは無くなり、次に来ることを考えて準備する。

手術室作るとしても、血管内治療はこの先もっと増え、あるいはロボット手術が増えて、ロボットも自動でやれるとなったときに、今のような手術室じゃダメかもしれないですよね。

もっと違ったかたちになってないと。

 

 

医師と2045年という数字を共有してお話ししたことはありませんでした。

シンギュラリティは、ここ最近よく聞くようになりましたが、弊社は創業当初の13年前からここを見て進んできましたので、医師とこのお話しが出来ることが不思議でもあり嬉しい気持ちです。

 

田邉:女子医大の中に「メディカルIT、AI部門」という新しい部門を設立します。

そこに副院長も参加し、ITやAIをどのように医療に導入するかということを進めていきます。

いよいよ、自分たちで開発していく段階にきました。これはとても楽しいことです。

 

病院の中にとうとう「メディカルIT、AI部門」が新設される時代に突入したのですね。今後も是非、定期的に経過を取材させて下さい。

 

 

看護師へのメッセージ

 

田邉:今後、看護師の仕事は大きく変わっていくと思います。

いわゆる「治療」にもっと参加する。実際の患者の治療に携わってもらうということが必要になってきます。

これから10年の間、その流れは進み、治療に介入してもらう、あるいは医師と一緒にやっていただくということが大事になってきます。

今は、医師が回診している間、看護師はナースセンターで仕事をしているという構図がよく見られます。

これは全く間違えていて、医師と一緒に患者さんを見に行き、治療に参加をしていただく。こういった方向性が必要だと思っています。

 

看護師も今だけを見ずに、未来を見越した治療への参加、及びテクノロジーへの対応が必要だという貴重なお話し、ありがとうございました。

 

 

シンカナース編集長インタビュー後記

出会えました。

シンギュラリティについてお話出来る先生と。

田邉先生は、進化し続ける泌尿器科が専門であり、変化の激しい東京において、最大の病床数を持つ大学病院の病院長です。

よって未来についての思考が、具体的なのでしょうか?

明確な理由は最後まで分かりませんでした。

ただ、出会いたかった方と出会えた喜びは感じることが出来ました。

まだ見ぬ未来を想像しつつ、どのような状況にも対応しうる組織や建物を構築されようとしているお話は、伺いながら思わず笑顔がこぼれてしまいました。

様々な仕事が自動化されるであろう時代において、労働集約型の産業である医療が安穏としていられるわけもない。

看護師も現状に留まらず、看護のイノベーションを起こす必要がありそうです。

 

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病院紹介

田邉院長インタビュー前編

田邉院長インタビュー後編

 

Interview Team

中 友美
A-LINE株式会社 代表取締役社長 シンカナース編集長
東洋大学文学部国文学科 明治大学大学院グローバルビジネス研究科 経営管理修士(MBA) 日本大学大学院総合社会情報研究科 総合社会文化博士(Ph.D.) ニュージーランド留学 帝京大学医学部附属病院 東十条病院 三井住友銀行 A-LINE株式会社/代表取締役社長 東京医科歯科大学非常勤講師 同志社女子大学嘱託講師 著書『わたしの仕事シリーズ2 看護師』新水社