前編に引き続き、武蔵野赤十字病院の若林看護部長へのインタビューをお届けいたします。
一人一人の意思を尊重する関わり
師長になってからの取り組みをお聞かせください。
若林:看護体制を考え直し、機能別から受け持ち制に、夜勤体制を一度12時間夜勤に変更しました。
その後は救命センター、内科病棟、そして手術室で勤務し、4年ほど副部長として看護部で勤務しました。
看護部長として苦労したこと、印象深い取り組みはありますか。
若林:毎朝9時に師長全員が集まり、ベッドコントロール会議することを副部長時代に取り組み始め、今でも行なっています。
看護部長になり7年目ですが、副部長たちが本当に優秀で、今はほとんど任せています。
昔は離職率が高く、就任当初は離職率が16%ほどで、離職率を10%にする目標を掲げていましたが、やっと3年前に達成され、今年は9%ほどだと思います。
取り組みとして、日赤全体で育児短時間制度などが浸透してきたことや、丁寧に面接することを心掛けてきたこと、採用方法を工夫し、良い人材を採用できるよう努めました。看護副部長とのコミュニケーションをよく取り、毎日のミーティングや会議を定期的に行い、そこで情報を共有しています。
看護部理念の「ひとりひとりを大切にします。あなたの痛みを和らげます。4つ(病む人・同僚と職場・地域住民と地域・地球、自然、命)の愛への心を高め、ひとりひとりを尊重した看護を実践し、地域社会の医療に貢献します」を実践するために心がけていることはありますか。
若林:「ひとりひとり」という言葉は様々なところで使われていますが、本当にそうしたいと思っています。
現場の看護師たちは患者さんにその思いを持っていると思いますが、管理側は様々な思いや、様々な価値観を持っている職員に対し、この場所で思い描くような看護を展開し悔いなく行うことを大事にしたいと思います。
様々な職員がいます。当院以外の選択を考えた時に、丁寧に一人一人と語りながら、お互いが納得をして、背中を押せる関わりをしたいと思います。離れた後もここを薦めたいと思い、ここでの経験が糧になっていると思われる病院にしていきたいです。
当院を辞めるからもう教育しないなどと、器の小さなことは言わず、「武蔵野赤十字病院から来た人はしっかりしてるね」と思われる人を増やしたいです。
赤十字医療の施設の独自のキャリア開発ラダー或いは人材育成などについてお聞かせください。
若林:キャリア開発ラダーは本社が平成16年頃に作って積み上げ、今では基本的に同じ基準で、全国で看護師を段階的に教育しようと行っています。
ラダー取得を推奨するために、研修受講要件に「キャリアラダーⅢ以上を取得する必要があります」などの条件を付けたり、文言に出すことでみんなが意識するように工夫しています。
今全体の6割くらいが何らかのラダーを取得しています。
人材開発も、ラダーと連動させ、認定看護師教育や大学院への進学を支援しています。キャリアアップに対して、極力NOは言いません。
スタッフの意識も違いますか。
若林:係長の昇任試験に手が上がり、その前段階である管理者研修も割と手が上がるので、いい事だと思います。
先輩や師長たちがいい背中を見せて、上手に声をかけているのではないかと思います。
手を上げるというのは、立候補制ですか。
若林:もちろん背中を押す時はありますが、原則的に立候補制で、掲示をして、長期研修者募集や昇任試験受験者募集などをしています。
積極的に自分で色々な思いを持ってくることがいいと思っています。
試行錯誤しながら、力を最大限活かしていく
看護補助者についてお聞かせください。
若林:助手と介護員とクラークと3職種あり、全部合わせると100人ほどになると思います。
クラークは事務的な事を主に行っており、助手は生活援助ですが、配膳とシーツ交換などを行い、介護員はヘルパー2級以上、身体介護の入浴介助や体位交換を一緒に行うことが多いです。
きっちりする事を分けて行なっているのですか。
若林:どうしてもリンクする部分もあるので、共にどちらも行うように伝えています。
だんだん電子化が進み、事務作業が少なくなるので、仕事の中身を、毎年悩みながら考えています。
仕事を上手く組み立てていくことは難しいので、ここ数年本当に試行錯誤をして、何度もやり直しながら行っています。
趣味などありますか。
若林:テニスやジムに行き体を動かすなどしています。
人と会ったり、おいしいものを食べに行ったりなども好きで、オススメされた場所はすぐメモします。また本が好きでジャンルを問わず読みますが、最近「有川浩」「綿矢りさ」などの作品を読んでいます。
基本的に楽天的でポジティブなので、あまりストレスを感じません。
看護部長からのメッセージ
若林:就職説明会にいらっしゃる学生の皆さんにいつも話しますが、当院を選んでくださった方はとてもラッキーだと思います。
教育体制は丁寧に作っていますし、スタッフ全体で新入職の人を支えようという気持ちのある病院です。
611床の急性期病院で、高度急性期医療を行っており、慌ただしいところもあり、重症の方も多くいらっしゃいますが、赤十字のHumanityを基盤にしたやさしさと、やりがいのある良い職場だと思っています。
シンカナース編集部 インタビュー後記
緑豊かな広大な武蔵野の地に60年以上、地域の医療を支えてきた武蔵野赤十字病院。
管理者研修に力をいれているという看護部では、
研修や管理者の昇任試験でも積極的に手が上がるという話をお聞きし、大変驚きました。
若林看護部長ご自身が看護の存在価値を見いだせない時期に 管理者研修を経験され、人との出会いの中で、意識の変化を感じたといいます。
研修後は、様々な体制を整え、常にチャレンジし、前に進まれてきた姿勢には力強さを感じました。
また、スタッフの方々にもチャレンジ精神が受け継がれていると感じました。
スタッフひとりひとりの積極的な意見や思いに常に向き合い、尊重し、受け止めていらっしゃるということは、まさに貴院の看護部理念であるひとりひとりを大切にしますにも繋がっており、
自分たちの意見を尊重してもらえる職場というのは、やりがいを感じ、働きやすい環境へとつながっていくのではないでしょうか。
若林看護部長、この度は素敵なお話をどうもありがとうございました。