BLS(一次救命処置)、ACLS(二次救命処置)、ICLS(二次救命処置)などのシミュレーショントレーニングコースは、日本全国様々な場所で開催されています。
どのコースも心停止した傷病者が発生した際のトレーニングコースです。
初めて心停止の患者を目の前にして冷静に対応できる人は、まずいないでしょう。
これらのシミュレーショントレーニングは、大変意味のあるコースであると考えています。
ひとたび、心停止した傷病者が発生すると、突然タイムプレッシャーが跳ね上がるように高くなります。
人的リソースも多く必要となります。
大急ぎで処置を進めなくてはならなくなります。
非常に緊張も強いられます。
正直、大変です。
その割に蘇生する確率は、期待するほど高くはないのが現状ではないでしょうか。
私たちは、心停止患者に遭遇しても対応できるように救命処置のトレーニングを受けるわけですが、そもそも心停止がおきなければ、私たちも患者さんも大変な思いをしないで済むことは言うまでもありません。
そこで、今回ご紹介させて頂くトレーニングコースは、その心停止を回避するという看護師向けのコースです。
INARSコース
INARS(アイナース)コースは、心停止を回避するナースのためのコースです。
外傷コースやAHA/PEARSなどに整合性を持って、より単純化し、体系的アプローチという手法を通して体験しながら学んでいきます。
第一印象から「評価」「認識」「行動」のPDAサイクルを回し、一次評価→二次評価+三次評価へとPDAサイクルを回し続けることによって、どの段階においてもチームで最良の介入を行うことのできるスキルを身につけるとともに医師への報告する最も適切なタイミングを検討する内容となっています。
患者の変化を早期に察知し、最適な介入を持って患者の状態を心停止から回避させることを目的としたコースです。
ビギナーからベテランまでが受講したその日から使える内容となっています。
受講時間は、他のシミュレーションコースの約半分の時間の4時間と非常に受講しやすくなっています。
例えば、沖縄で開催されているコースに午前中受講して、午後から観光するのも可能なくらい手軽に受講することができるのです。
INARSの3つの目的
1.患者の見方や対応について学ぶ(個々のスキルアップ)
一次評価のA気道、B呼吸、C循環、D神経系を一つずつ評価と認識の方法について学んでいきます。
一つひとつ学ぶ過程で評価の重要性を再認識し、評価の結果から緊急性を理解することや患者や家族からの情報収集のスキルも学ぶことができます。
心停止を回避するための変化を見逃さないとても重要な観察スキルと言っても良いかも知れません。
2.チームで戦うことの意義を学ぶ(チームのスキルアップ)
看護は、そもそもチームで活動することが多いのではないでしょうか。
チーム力は看護の強みとも言えます。
その強みをより有効に活用することで心停止を回避させるスキルを習得します。
チームへの情報共有の重要性をはじめチームで検討することの有用性についてもシミュレーションという体験を通じて学んで行くことができます。
3.必要なタイミングで医師を要請するための報告について学ぶ
ろくに情報も集めずに何でもかんでもやたらにドクターコールをしたがる看護師さんを見かけることがありますが、それでは、お医者さんも仕事になりません。
看護師達だけで出来ることは十分にやったか、医師を動かすための情報は十分に揃えられたか、今すぐ医師を呼ばなくてはならないタイミングではないかなど適切なドクターコールのタイミングを学びます。
これに加え、ドクターコールの必要な状況は、緊急度の高い状態です。
ダラダラ報告している暇はありませんから、簡潔に要点をまとめて報告する必要があります。
これらのスキルについても実際にやりながら習得していきます。
開催実績
静岡県〜沖縄県の地域で盛んに開催されていますが、関東では開催実績が少なく、定期開催を行なっているのは千葉県の船橋北病院と神奈川県内のみとなります(2018年3月現在)。
INARSコースのインストラクターになるためのコース(ワークショップ)の開催は、全国的にも開催実績が希少となっていますが、船橋北病院で定期開催しております。
プロバイダーコース、ワークショップの開催予定は、救命処置を楽しく学ぶ会または、INARSコースのホームページをご確認下さい。