ショックは、循環血液量減少性ショック(hypovolemic shock)、血液分布異常性ショック(distributive shock)、心原性ショック(cardiogenic shock)、心外閉塞・拘束性ショック(obstructive shock)の4つに大別されます。
それぞれの特徴などについては、ほかに譲るとして、
ここではショックの見分け方やそのメカニズムについて解説していきたいと思います。
ショックってどんな状態?
簡単に表現するならば、心停止のすぐ手前。
しかも、心停止までのどのくらいの時間が残されているのかは、何の保証もない状況です。
つまり、超緊急事態なのです。
だから、何よりも早くショックかショックでないかを知る必要があるのです。
5P:ショックの5P徴候
ショックには、いくつかの症状があります。
以下の5症状が挙げられ,英語の頭文字をとって「ショックの5P徴候」と言います。
1.蒼白(Pallor)
2.虚脱(Prostration)
3.冷汗(Perspiration)
4.脈拍触知不能(Pulseless)
5.呼吸不全(Pulmonary insufficiency)
ショックは3つの観察で判断できる
実は。。。
次の3つの症状が認められればショックと判断できるのです。
つまり、血圧計など特別な機械が手元に無くても瞬時にしてショックを判断することができるのです。
1.頻脈(120回/分以上)
2.末梢冷感湿潤
3.CRT延長:capillary refilling time延長(2秒以上)
CRTは、ブランチテスト、毛細血管再充満時間とも言われ、指の爪床を5秒間圧迫した後に圧迫を解除。
圧迫解除後、爪床の色が元の色に戻るまでの時間を測る。
2秒以内が正常。
外気温などに影響を受けることがあるため、注意が必要。
ショックの症状のメカニズム
では、なぜ、脈拍が早くなったり、末梢に冷感や湿潤が見られるのでしょうか。
侵襲に対する生体防御反応や代償機転として、交感神経が興奮します。
交感神経が興奮すると脈拍が早くなり、発汗と末梢血管の収縮が促されます。
これによって、末梢に冷感と湿潤が認められるのです。
末梢血管を収縮させることによって中枢の主要臓器への血液を確保し、頻脈によって循環を維持(代償機転)させているのです。
ショックの重症度による分類
冒頭でショックは、原因によって4つに大別できると述べましたが、重症度によって代償性ショックと低血圧性ショックの2つに大別することができます。
1.代償性ショック
上記の代償機転(頻脈・末梢血管の収縮:頻脈/末梢冷感湿潤/CRT延長)が働いて血圧が正常に保たれた状態。
代償期にあるとは言え、ショックはショックですから、超緊急事態には、代わりはない。
2.低血圧性ショック
代償機転が破綻した状態で頻脈、末梢冷感湿潤、CRT延長に加え、低血圧を認めるより重症度の高い状態。
より超緊急事態と言えます。
この状態は、ショックの5P徴候が出揃った状態です。
ショックを認識したら。。。
ショックを認識たら、超緊急事態ですから、まず応援要請をしましょう。
場合によっては、救急コールやRRSの発動が有効な場合もあるかも知れません。
酸素循環が破綻または破綻しかけた状態ですから、酸素吸入の準備が必要になります。
心停止までの時間は、わずかかも知れません。
モニター心電図の準備やルート確保も必要となります。
1.酸素(Oxygen)
2.モニター心電図(Monitor)
3.ルート確保(Intravenous drip)
終わりに
循環は、生命維持に欠かせない機能の一つです。
ショックの状態となれば、いつ心停止がやってくるかわからない状態です。
心肺蘇生は、人的リソースや使用する薬剤、機械も沢山必要となります。
また、タイムプレッシャーも大きくかかります。
そのような状況を回避するためにもショックの観察はいち早くしたい観察項目の一つになるのではないでしょうか。
このショックを始め呼吸などの観察方法やチームでの活動をトレーニングできる研修コース(ナースのための心停止回避コース(INARSコース))についての記事も合わせて読んで頂けますと幸いです。
イラスト)中田貴久