No.225 社会医療法人社団光仁会 野村明子 理事長 後編:患者さんと共有する時間を大切に

インタビュー

前編に続き、患者さんの高齢化に加え医療従事者が高齢化していることへの対応や、

看護師への期待などを野村先生にお伺いしました。

病院の歴史とともに患者さんも高齢化

中:金町の第一病院は長い歴史がおありですので、いろいろ変化があったのではないでしょうか。

野村:本当に劇的に変わりました。

特に患者さんの高齢化が進みました。

そして高齢者が元気になりました。

私は両親が存命中に当院(第一病院)に入職したのですが、その頃は60代で亡くなる方が多く、うちの父が

患者さんのご家族に「ご高齢ですからね」と言うと、ご家族も「そうですよね」とおっしゃっていました。

今や60代はもちろん、70代でも「もうお歳ですから」とは言えません。

また20年ほど前のことでしょうか。

90歳の男性が歩いて来院されたのに驚き、地域の医師同士が顔を合わせる機会に

「最近、90歳の男の人が歩いて来ますよ」と話題にしたら、全員驚いていたのを記憶しています。

医療者側の高齢化対策が必要

中:高齢化は2025年問題として医療にとって重大なテーマになっていますね。

この問題に関して、貴院のスタッフに対し何か期待されることはございますか。

野村:高齢者の治療や看護に関する知識を深めていただきたいということが一つありますが、

それとは別の問題として、医療を継続して提供していくために、

高齢の方も雇用していかなければいけないのではないかと考えています。

少なくても70歳くらいまでは働いていただく必要があるかと。

もちろん外国の方の手も借りなくてはいけません。

当院も今年初めて台湾出身で日本の資格を取得された看護師を雇用しました。

中:テクノロジーが進化しても、医療はやはり人の手が必要ということなのでしょうか。

野村:工場であれば機械化で済むのでしょうが、医療は人を相手にすることですし、

診療報酬算定上、人員数が定められている職種もありますから。

将来、ナースロボットのようなものが開発されて、

患者さんとの繊細なコミュニケーションも上手にとれるようになれば話は別かもしれませんが。

看護師がなるべく患者さんのそばにいられる環境

中:そうですね。

相当な技術革新が起きない限り、看護業務はまだ人に頼る部分が大きいのでしょうね。

先生は、看護師に対してどのようなことを望んでいらっしゃいますか。

野村:やはり患者さんをよく見て寄り添っていくことが大切だと思います。

技術の進歩とともに、人が器械に使われるようなことが増え、時間の流れも年々速くなってきています。

さらに作成しなければならない書類も増えてきて、

医師も看護師も業務に忙殺されギスギスした関係になりがちです。

そのような中にあっても、

できるだけ患者さんのそばに行き会話をするようにしていただきたいと期待しています。

中:かつての看護師は今より患者さんのそばにいたのでしょうか。

野村:昔の時代の看護師は患者さんの家庭環境までよくご存じでした。

当院にも以前は、金の卵と言われた集団就職で上京し、

医師会の看護師学校を卒業して入職された看護師が勤務されていました。

そういったベテラン看護師は、

我々医者が知らない患者さんの細かな事情をとてもよく把握されていたものです。

そのおかげで診療上、助かることも多々ありました。

あの時代に帰ることはできないかもしれませんが、少なくともお一人お一人の患者さんに、

看護師がなるべく時間を割けるような環境に近づけたいと考えています。

もちろん看護師ばかりでなく、医師も優しくなるように心がけていく必要があります。

挨拶が病院を変える

中:そのような先生の思いを貴院の看護師へ伝えるために、何か工夫をされていらっしゃいますか。

野村:個人的にお話しをする機会はあまりないのですが、毎日1回は必ず病棟を回るようにしています。

その時に看護師さんと顔を合わせると「ご苦労様です」と声をかけます。

もちろん看護助手や清掃スタッフにも「ご苦労様です。ありがとう」と言うように心がけています。

そのようなことを通して何となくいろいろなことが院内に伝わっていくのではないかと期待しています。

看護師には患者さんだけでなく患者さんのご家族にも挨拶をしていただき、

優しく接していただきたいということが、私の一番の気持ちです。

口で言うのは簡単で実際はなかなか難しいことではあるものの、

毎日必ず挨拶をするという行動が、病院全体を変えていくのではないかと最近考えています。

中:最後に、先生がお仕事を離れた時間、どのように過ごされているかお聞かせください。

野村:あまり時間がないものですから、ビデオを観るくらいでしょうか。

中:どのようなジャンルをご覧になりますか。

野村:海外のCSI(科学捜査班)ものが好きです。

長時間割くことはできませんので、1回で完結するものを選んで観ています。

看護師へのメッセージ

中:それでは改めて看護師に向けてメッセージお願いします。

野村:当院は歴史が長く、

かなり以前から継続して来てくださっている患者さんがたくさんいる地域密着型の病院です。

当院に入職していただいたら、私も含めてスタッフ全員で一緒に仲良く患者さんを一生懸命みる、

良い医療をしていただきたいと思っております。

ぜひ当院に来ていただきたいと心待ちにしております。

よろしくお願いします。

インタビュー後記

初の女性理事長インタビュー。

生まれながらの使命感、患者さん、地域を思いやるお気持ち、自らを奮い立たせて医療を継続する力など

野村理事長から熱く、情熱的なお話を伺うことが出来ました。

医師として、経営者として、妻として、母として様々な顔をお持ちで女性としても尊敬することばかり。

看護師に対する信頼をしていただいていることも伝わる貴重な体験をいただきました。

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