No.178 病院長 丹羽明博様(平塚共済病院)後編:医師を動かせる看護師

No.178 病院長 丹羽明博様(平塚共済病院)後編:医師を動かせる看護師

  • 2018年8月4日
  • 病院長 インタビュー
No.178 病院長 丹羽明博様(平塚共済病院)後編:医師を動かせる看護師
No.178 病院長 丹羽明博様(平塚共済病院)後編:医師を動かせる看護師

前編に続き、院長に就任されてからの活動をお聞かせいただき、その根底にある先生の人生観に迫ります。

 

「患者の視点推進委員会」を設置

 

中:現在の院長という役職に就任される時「病院をこのように変えていこう」といった

腹案はございましたか。

 

丹羽:着任当時、院内の壁に何も飾りがなく、少し暗い感じがしていました。

そこで自宅にあった写真や絵を持ってきて飾ったり、

付近の学校の生徒の作品展示の場として利用してもらったりしました。

もう一点、当院の前院長時代には毎年黒字を計上しており「自分たちのやり方はこれで良いんだ」という

雰囲気があり、外部との交流が少ないと感じられましたので、それは変えていこうと思いました。

 

 

中:院内の雰囲気を変えるといいますと、スタッフの内面的なことにもアプローチしていかなければ

いけないと思います。

どのような手法をとられたのでしょうか。

 

丹羽:「患者の視点推進委員会」という委員会を設置しました。

接遇の問題や施設改善の課題をみんなで話し合って進めていくという組織です。

少しずつ成果が身を結びつつあると感じています。

 

 

医者を動かす看護師

 

中:院内の雰囲気や患者さんからの視点については、

こちらで働く看護師が及ぼす影響も少なくないと思います。

そこでお尋ねしますが、先生が看護師に対して「将来的にこういった存在になってもらいたい」と

期待されることはございますか。

 

 

丹羽:病院で患者さんと接する機会が一番多い職種は看護師です。

そのような環境で働いている看護師に期待することは、患者さんと接した時に

情報をしっかり捉えて判断できる「看護力」を磨いて欲しいということが、まず挙げられます。

 

 

もう一つは、患者さんを診療するための中心の部署に自分がいることを意識できているかという点です。

単に8時間または16時間働けば良いということではなくて

「自分は患者さんを看ているのだ。人と向き合っているのだ」という意識をもち、

さらには「自分が、家族が、同じ状況になった時に何をしてほしいか」を考えて欲しいのです。

自分で、見て、考えたことを、きちんと上司や医師に伝えられる看護師を期待しています。

 

 

中:医師と看護師の関係についてはどのようにお考えですか。

近年「医師と看護師は上下関係でなく、専門職として互いに同等」という言い方が

なされることが増えていますが。

 

丹羽:私の個人的な考え方は少し違っていて、

医療の現場でリーダー的な役割を担うのはやはり医師だと思うのです。

実際、法的には医師からの指示がないと看護師は動きにくい仕組みとなっています。

ですから、全くのフラットな関係ではないのではないでしょうか。

 

 

ただし、フラットではないとしても、患者さんを一番よく見ているのは看護師であることに違いありません。

その点にプライドを持っていただきたいです。

患者さんの様子がいつもと違う、おかしいと思ったら、上司や医師に

「私はこう思うので、こうしてみたらどうでしょうか」と提案できるスキルを身につけて欲しいと思います。

いわば“医者を動かす看護師”です。

 

 

人生の先輩から教えてもらえる職業

 

丹羽:私は医師に対しても

「組織の中でプロとして働くには、自分の周りの人間を動かせるようにならなければいけない」と

言うのですが、同じことを看護師にも要求したいと考えます。

ある意味、看護師が医師を操ることで、患者さんに良い結果をもたらせられれば素晴らしいですよね。

なぜそういうことにも看護の楽しみを求めていかないのかなと思います。

このような考え方は、あまりピンとこないでしょうか?

 

 

中:そんなことはありません。

たいへん力強い言葉だと思います。

やはり、周囲に自分の判断を伝えられるようになって、

はじめて本当の意味での観察ができたということなのですね。

 

 

丹羽:見て、考えて、伝えるところまでいかないと、これからのチーム医療は成立しません。

院内のスタッフにこのような姿勢が根付いていけば、

自然に改善が進む非常に良い病院になっていくと思います。

私は看護学校で医療倫理の話をすることがあるのですが、その際には

「看護師は患者さんからいろんなことを教えてもらえる職業だ」ということをお話しします。

 

 

看護学校を卒業した時点で二十歳ぐらいですよね。

しかし相手にする患者さんの多くは50代以上です。

そんな人生経験豊富な方々から教えてもらえる職業はそうそうありません。

 

 

中:本当にそうですね。

吸収しようと思えば、いくらでも患者さんから知識やものの見方、考え方を吸収できますね。

 

丹羽:ふだん、健康な時に人と交わす会話は「建て前」で話すことが多いですよね。

しかし、病気の苦しみを味わっている患者さんは、少しでも早く苦しみから逃れるために、

信頼できる看護師には「本音」を語ります。

 

 

患者さんのその訴えをどこまで深く受け止められるかが、

それまでの自分とはまた少し異なる人生を経験し成長できるかどうかという差を生みます。

看護師は本当に面白い職業だと思います。

 

自分を磨き、看護師の面白さを味わって欲しい

 

中:とても意義深い多くのお話をお聞かせいただきました。

ありがとうございます。

もう少し先生のお人柄に迫るために、ご趣味についてお聞かせいただけますか。

 

 

丹羽:趣味は25年ぐらい前に始めた船釣りです。

もともと魚を食べることは好きだったのですが、釣りの経験はありませんでした。

以前の勤務先の事務スタッフに勧められて始めたのがきっかけです。

当たりがあると「ググググッ」と引きますよね。

あの感触が自分としては初体験。

 

 

しかも毎回、初体験のような新鮮な感覚を味わえます。

釣った魚も見よう見まねで、自分で捌けるようになりました。

今こちらには単身赴任できていて、生まれて初めての自炊生活しているのですが、

魚を捌けるようになっていたので、肉や野菜は問題なく捌けると思い、全く不安はありませんでした。

 

 

もう一つの趣味は写真です。

平塚ではマンションの6階に住んでいるのですが、日の出の変化も面白いし、

窓から見る富士山の朝焼けもたいへん美しく、よく撮影しています。

 

 

太陽が地平線から上るに連れて、刻々と赤~ピンクの色が空の高いところから富士の雪に降りてくるのです。

きれいですよ。

 

 

時には綺麗な朝日を撮るために、早朝に近所の撮影スポットに行くこともあります。

本格的なカメラではなく、コンパクトカメラをぶら下げて移動します。

ただ、朝日というものは写真にすると夕日と区別つかないのですね。

半ばあきらめているのですが、いつかきっと一枚の写真を見ただけで

「これこそ朝日だ」という写真を撮りたいと思っています。

 

 

中:では最後に、既に十分お話しいただいたのですが、

改めて看護師へのメッセージをまとめていだけますか。

 

丹羽:看護師は、とても面白い仕事だと思います。

いろいろな人や年長の人たちと、いつも会話ができますし、自分次第で医師とも対等に話ができるようにもなります。

ぜひ自分を磨いていただければと思います。

 

 

シンカナース編集長インタビュー後記

丹羽先生が実践されていらっしゃるように、人生を楽しみ、仕事を存分に行う。

これがいかに素敵なことかと改めて感じさせていただきました。

お忙しい中でも、ご自身の興味を持たれたことには積極的に取り組まれる姿勢は、

時間がないことを言い訳にしてはいけないなと改めて感じました。

「看護師という仕事は面白い」

看護師がこのことを日々感じているか?は分かりませんが、時に俯瞰して自らの仕事を振り返ることは大切ですね。

 

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院紹介

丹羽院長インタビュー前編

丹羽院長インタビュー後編

Interview Team

中 友美
シンカナース株式会社 代表取締役社長
東洋大学文学部国文学科 明治大学大学院グローバルビジネス研究科 経営管理修士(MBA) 日本大学大学院総合社会情報研究科 総合社会文化博士(Ph.D.) ニュージーランド留学 帝京大学医学部附属病院 東十条病院 三井住友銀行 A-LINE株式会社/代表取締役社長 東京医科歯科大学非常勤講師 同志社女子大学嘱託講師 著書『わたしの仕事シリーズ2 看護師』新水社