No.179 病院長 宗像博美様(湘南藤沢徳洲会病院)前編:内視鏡治療の進化と医療のAI化

No.179 病院長 宗像博美様(湘南藤沢徳洲会病院)前編:内視鏡治療の進化と医療のAI化

  • 2018年8月4日
  • 病院長 インタビュー
No.179 病院長 宗像博美様(湘南藤沢徳洲会病院)前編:内視鏡治療の進化と医療のAI化
No.179 病院長 宗像博美様(湘南藤沢徳洲会病院)前編:内視鏡治療の進化と医療のAI化

今回は湘南藤沢徳洲会病院の宗像先生に、消化器内科の特色と、近未来の医療のかたち、

医療におけるAIの可能性などを語っていただきました。

 

 

内視鏡手術の先進性

 

中:今回は湘南藤沢徳洲会病院病院長の宗像博美先生にお話を伺います。

先生、どうぞよろしくお願いします。

 

宗像:よろしくお願いします。

 

 

中:まず貴院の特徴をお聞かせください。

 

宗像:当院は病床数が419で、救急車の搬送受け入れが年間1万台弱です。

忙しい中でもスタッフのチームワークがよく、多職種共同してそれぞれの専門性を発揮していることが、

当院の強みだと思います。

 

中:ありがとうございます。

では続けて、先生が医師になろうと思われた動機を教えていただけますか。

 

 

宗像:実家が福島で、父親が整形外科を開業していました。

田舎のことですから、整形外科と言いましても実際にはほとんど全ての診療科を兼ねていて、

さまざまな患者さんを診ていたようです。

また昔のことなので父が往診に出向くことが多く、私も後からついていき、

よく診察の様子を横で見聞きしていました。

そのような時、なんとなく「医師とは、人との触れ合いができる良い仕事だな」と思っていた

記憶があります。

 

 

中:それで医学部を目指されたのですね。

大学は慈恵医大と伺いましたが。

 

宗像:そうです。

父親も慈恵医大でしたので。

慈恵の良さは、実習の時によく実感していました。

他大学からの参加者も温かく迎え入れて、教員が熱心に指導されていたことが、

とても素晴らしいことのように思えました。

 

 

中:先生のご専門は消化器内科でしたね。

どのように消化器内科を選ばれたのでしょうか。

 

宗像:2年間かけ、いろいろな科をローテーションしていく中で、自分は外科が向いていると思い、

最初の1年半ぐらいは外科に所属していました。

ところがそのうち、内視鏡治療や血管造影、肝動脈化学塞栓療法など

内科的なアプローチが本格的に行われるようになってきて、それらの新しい技術に魅力を感じ、

徐々に消化器内科へシフトしていきました。

 

 

自分が何に向いているか結局はやってみないとわかりません。

私は多くの科をローテーションした結果、一番自分に合っている科を選びましたので、

今も楽しく仕事しています。

 

中:先生が「今でも楽しい」とお感じになられる消化器内科の魅力を教えていただけますか。

 

 

宗像:消化器内科の魅力は、早期の胃癌や大腸癌、あるいは正常と癌の中間に当たる腺腫性ポリープを

自分で見つけられ、しかもその場で切除してすぐに治してしまえることです。

このような診断と治療をほとんど日常的に、当たり前のように行えます。

しかも、必要な処置は主に静脈麻酔と内視鏡操作だけです。

治療の成果に比べて患者さんの負担が少なく、短時間で済んでしまうことが一番大きな魅力かと思います。

 

 

また、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、または大腸憩室炎による出血も、

ほとんどは内視鏡的な治療で済んでしまいます。

このような緊急性が高い状態にも対応できることが、消化器内科の醍醐味だと感じています。

 

中:先生が臨床医になられた時と今の消化器内科治療を比較すると、かなり進化があったかと思います。

その変遷を少し教えていただけますか。

 

 

宗像:私が卒業したのが1981年です。

その2年後に今の肝動脈化学塞栓療法が行われるようになりました。

当時はまだ保険も適用されない時代です。

使用するカテーテルも自分たちで購入し、それを適当な長さに切り、

先端を蒸気で形成するといったことまでしていました。

 

 

正に試行錯誤の連続です。

もちろん今では専用カテーテルが製品化され、非常に便利になっています。

食道静脈瘤も同様です。

西ドイツの大学で作られたエトキシスクレロールという硬化剤を取り寄せ、院内の薬局で調剤してもらい、

食道の血管や粘膜に注入して組織を荒廃させることで瘤を退縮させていました。

今はクロロプレンのゴムバンドで結紮するという手法で、非常に安全かつ確実に治せる時代になりました。

これも格段の進歩です。

 

 

中:これから先はいかがでしょうか。

今までもかなり進歩されてきたと思いますが、消化器内科はさらに進化していくとお考えですか。

 

宗像:いま我々が積極的に取り組んでいるのは内視鏡的粘膜下層剥離術です。

食道、胃、大腸の早期癌の中で、転移の可能性がない、あるいは極めて低いと判断される病変を

内視鏡で切除するという治療です。

 

 

当初は穿孔や出血などの合併症がよく問題になりましたが、機器の進歩によりかなり改善してきました。

改善してきてはいますが、さらに安全性を高めた機器が開発される余地は残されています。

 

AIへの期待

 

中:早期癌をAIで診断するようになる可能性はありませんか。

先日、内視鏡画像をAIで診断する技術が新聞にも掲載されていましたが。

 

 

宗像:AIはこれから、癌診断の主流になっていくかもしれません。

AIによる早期胃癌検出率の感度・特異度はともに95%以上に向上してきており、

早期胃癌自体の治療技術もかなり進歩していますから、治癒率もさらに高まっていくと思います。

今後、食道、大腸への応用が期待されています。

 

 

AIの可能性としてもう一つ、僻地医療での活用が考えられます。

離島などで地域に消化器専門医がいない場合、診断上、非常に助けになるのではないでしょうか。

1万枚、2万枚という膨大な画像をディープラーニングで覚え込ませることで、

我々が4時間、5時間かけて判断することを、20分、30分でできるまでに進歩してきています。

消化器内視鏡医レベルぐらいの精度で早期癌を診断できるようになる日は近いのではないかと、

期待しています。

 

 

中:やはり画像診断などはAIが得意とする分野のようですね。

画像診断以外にもAIの可能性があるとしますと、それはどのようなことだとお考えでしょうか。

 

宗像:医療事務関係にも応用できると思います。

すでに開発が進んでいるようですが、例えばレセプトを書きますと、処方薬の適応や

検査と傷病名との整合性を事務部門がチェックしてドクターにフィードバックし確認する

という作業を、今はマンパワーでこなしていますね。

 

 

これをAIが代行できるようになるのではないでしょうか。

「先生が何月何日に診た患者さん、この検査とお薬を出していますが、診断名はいかがでしょうか」と

AIが自動的に確認を求めてきて、ドクターはそれに対してメールで返信すれば良いという仕組みです。

これが実現されると医師事務の作業が35%ほど削減できると言われています。

 

 

後編に続く

Interview Team

中 友美
シンカナース株式会社 代表取締役社長
東洋大学文学部国文学科 明治大学大学院グローバルビジネス研究科 経営管理修士(MBA) 日本大学大学院総合社会情報研究科 総合社会文化博士(Ph.D.) ニュージーランド留学 帝京大学医学部附属病院 東十条病院 三井住友銀行 A-LINE株式会社/代表取締役社長 東京医科歯科大学非常勤講師 同志社女子大学嘱託講師 著書『わたしの仕事シリーズ2 看護師』新水社