熊本震災 本震直後の出産 Vol.2

熊本震災 本震直後の出産 Vol.2

  • 2017年4月16日
  • コラム
熊本震災 本震直後の出産 Vol.2
熊本震災 本震直後の出産 Vol.2

車に乗せて頂いた妹は、少し安心したそうです。

この病院は、熊本市の私立病院で、産科病棟の新館その他の科の本館の2棟があり病院全体で約100床の規模の病院です。

 

本舘の1階に以前の産科外来があり、どこからか、そこが安全であるとの情報が入ったようで、先生の車でそちらへ移動。本館の産科外来室は、今は使われておらず、物置部屋のようなところになっていたそうです。その雑然とした中、スタッフの方がベットを運んできて下さり、「ここに休んでください、大丈夫ですよ」と、言われた時に“あ~大丈夫かも“と、思ったそうです。その時、陣痛は1~2分間隔、出産までもう少しです。

2016年4月16日午前3時3分にその時はやってきました。午前1時25分の本震からわずか1時間半ほどでの出産でした。母子ともに元気との報告に、スタッフの方々へ感謝の念でいっぱいになりました。

余震が続く中、妹は、今度大きな地震がきたら天井が崩れてくるかもしれない、と思いながら力んだ!と言っていました。有り難いことに、かなりの安産で、スルッと生まれてきたそうです!あっという間の出来事だったように感じたそうです。

無事に生まれてきた赤ちゃん。どれほどホッとしたことでしょうか・・・。そんな幸せな気持ちに浸る時間もそこそこに、寒かったので赤ちゃんは、違う場所に連れて行かれ、その後助産師さんが、「揺れも落ち着いてきたので、新館に戻りましょうか」と。もちろん徒歩です。出産直後に歩くの!?と私でさえ思いました。しかし、震災の後はいつもとはやはり違うのです。安全が最優先。

ゆっくりと立ち上がり、外来室を出た時、サプライズがありました。大きな拍手に包まれたそうです。こんなに人がいたの?という人数が外来の待合室に避難してきており、妹の出産の叫びは皆さんにも聞こえていたみたいで、お腹を押さえながら、ヨチヨチと出てきた妹にみなさんが温かく拍手してくれたそです。

出産も大変でしたが、産後は災害後の厳しさに直面したそうです。断水しているため、赤ちゃんは産湯には入れません。産後の妹もお風呂はもちろんシャワーも使えません。出産直後の朝食は乾パンと牛乳。ガスが使えないため、温かい食事は3日後くらいにいただいたそうです。病院の備蓄が底をつき、先生が食糧不足をSNSに投稿され、全国の皆さまからご支援をいただき、本当にありがたいことに、食事が出てこなかった日はなかったそうです。

赤ちゃんとは昼は個室で一緒に過ごせましたが、基本的に、次に大きな揺れがあった時に備えて、新生児は看護師さんが連れていくと決めてあり、夜間の母子同室は禁止。また点呼せずに素早く非難できるように、妹を含むお母さんたちは各階のホールで雑魚寝だったそうです。

 

16日を振り返り、全てのスタッフの方が大変テキパキとされていた事に、「訓練されていたんですか?」と、妹が尋ねると、前震(4月14日)の時はあたふたされたそうで、その後のスタッフ会議で次の大きな地震があったら、何時でもどんな状態でも全ての人を外へ避難させると決めてあったそうです。そして訓練されたようで、本震の時は大変てきぱきと動かれていたようです。

当時は、夜中でしたが、ふと気づくと、助産師さんも何人いるんだろう、と思う人数が駆けつけて下さっており、医師もスタンバイしてくださっていたそうです。災害時にスタッフの皆さんの行動に感謝しかなかったようです。

災害はいつ、どこで起こるか予測できず、起こった時に迷うことなく動けることは、医療施設にとって患者さんの安全確保に大きくかかわるということを教わりました。医療者が不安な様子もなく、テキパキと動くことができると、患者さんは安心してその指示に従うことができ、パニックにもならないのではないだと確信しました。

医療者として、日ごろからの訓練の大切さを教訓に、何かあった時に動ける自分でいたいと思います。

 

私事で申訳ありませんが、

〇〇病院の先生方、助産師・看護師のみなさま、スタッフの皆さまに心から感謝申し上げます。お蔭様で、甥っ子はすくすくと育ち、本日1歳の誕生日を迎えました。

正木 左希子
A-LINE株式会社
ニュージーランド留学, UCOL Bachelor of Nursingにてニュージーランドの看護師免許取得、MCH Palmerston North Hospital 、TESOL(取得)、日本にて看護師免許取得、済生会熊本病院HCU勤務、熊本大学大学院医学教育部 生命倫理学分野 修士 同大学博士課程在籍中