No.160 竹内由美様(板橋中央総合病院)後編「まず、人を愛すること」

インタビュー

前編に引き続き、板橋中央総合病院の竹内様へのインタビューをお届けいたします。

問題を小さく分割して解決する小集団活動

具体的な取り組みをお聞かせください。

竹内:師長会の管理者研修で、小集団活動という試みを始めています。

小さなグループごとに課題をたて、結果をしっかり出すことを目指すというものです。

例えば今、どちらの病院もスタッフの離職には頭を悩ませていると思います。

この問題にスポットを当て、

ワークライフバランス十カ条に対する小集団を作りました。

「スタッフはこれが原因で辞めていくのだろう」と考えられる理由を

10個ピックアップし、

それを一つずつ解決して働きやすい職場を作ろうという活動です。

具体的な例を挙げると、昼休みが1時間取れずにストレスを感じているスタッフが

多いことがわかり、誰もが1時間休めるように対策を練り改善しました。

また日勤帯のスタッフが夜勤者に気を使ってのサービス残業が習慣化していました。

上から指示しているわけではないのになぜそこまでするのか理由を調べてみると、

日勤者から「ナースコールのPHSを夜勤者に渡しづらい」という声が漏れてきました。

そこで夕方の申し送りの場でPHSを手渡しするというルールを作り、

日勤者が定時で上がりやすい環境を整備しました。

その結果、日勤者と夜勤者がともに相互の負担を意識して、自分たちの勤務時間内に

できることは片付けるという雰囲気が育まれ、全体の業務効率が改善しました。

「勤務時間の30分以上前には出勤してはいけない」というルールも作りました。

若手看護師が「先輩より先に出勤しなければ」と自主的に

かなり早く職場に出てきていたためです。

このようなワークライフバランス十カ条の効果はてきめんで、

離職率は急速に低下してきました。

素晴らしいですね。

他にはどのような小集団があるのでしょうか。

竹内:看護の質に対する小集団というのもあります。

昔から「看護の恥」と言われている褥瘡の発生率を

可能な限り下げることを目指しています。

最近は口腔ケアに力を入れています。

その一環でスタッフに認定看護師の資格取得を勧めていますし、

今は歯科衛生士の採用を検討しています。

歯科衛生士はその道のプロですから、病棟でその能力を発揮いただければ、

よりしっかりした口腔ケアを実現できるのではないかと思います。

他職種連携の基盤は「互いの尊重」

多職種による看護が必要になってきますね。

竹内:看護に限らず今の医療は

個人の技能だけで何かできるという時代ではありません。

医師、看護師はもちろんのこと、リハビリスタッフや看護補助者も含め、

全員が多職種連携の必要性を感じていると思います。

多職種連携による看護の実践にあたり、気をつけていることはありますか。

竹内:病院は資格者の集合体ですから、

それぞれの資格を尊重することが円満に事を進める前提だと思います。

そのためカンファレンスを含め、日頃の意思疎通の場を非常に重視しています。

当院へインターンシップに来た学生が一様に言うのは

「職場の雰囲気がよかった」「看護師さんが生き生きしていた」という言葉です。

当院の医師は院長も含めて本当に紳士的な人が多く、看護師を対等な存在として

位置づけ、意見にしっかり耳を傾けて提案をとり入れてくれます。

カンファレンスで「自分は看護師だから黙っていたほうが良い」などと考える必要は

全くありません。

この点は当院の素晴らしい魅力であり強みだと思っています。

本当に人を尊重されているのですね。

竹内:当院が所属する法人の当初の理念は「愛し愛される病院」でした。

現在は病院以外に老健施設等も加わったため少し変更し

「愛し愛されるIMS(イムス)」としています。

なぜ単に「愛される」ではなく「愛し愛される」なのかと言えば、

人から愛されるにはまず自分が人や地域、患者さん、職員を愛すことから始まると

考えが創立者にあったためと聞いています。

実際、親子二代にわたってこのグループに就職されている方が

たくさんいらっしゃいます。

それだけ裏表がなく、満足のゆく職場環境なのだと思います。

そのようなグループにあって当院は、この地で60年にわたる歴史を築いてきました。

付近には大学病院をはじめとする大病院が増えましたが、いつまでも地域住民の方に

「板中が近くにあってよかったね」と言われるような存在でありたいと思っています。

看護部長からのメッセージ

竹内:当院は、579床の急性期病院です。

IMSグループの本院として救急に特化しています。

また働きやすい病院として、ワークライフバランス十カ条に取り組んでいます。

看護部では「人間の生命と人格を尊重した看護を提供する」

という理念を掲げています。

この理念からは、貧しい人に対しても豊かな人に対しても同じように

質の高い看護を提供する看護師、そしてもう一つは、

老いた命も若い命も命の尊さは一緒であるという倫理観を持った看護師が

期待されます。

そのような看護師を育成していきたいと思っています。

本当に働きやすい病院ですから、皆さんぜひとも来てください。

シンカナース編集部 インタビュー後記

「最初の教育が重要」と語る竹内看護部長。

研修医の教育制度を見てそう感じたそうです。

お話しの端々から、身の回りで起きている全ての事柄を学びにしていると感じました。

変革をしていく際に、行動を明確で細かい言葉で伝えていく取り組みがとても印象的でした。

「その人を尊重する」このことを常に意識して、実践されているとのお言葉からわかるように働きやすい人間関係を構築されているのだと感じました。

竹内看護部長、この度は貴重なお話しを頂き、誠にありがとうございました。

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