意識がなければ、人を呼べ
街中での傷病者救助や心配蘇生は、意識の確認から始まり意識がなければ応援要請をして救急要請(119番通報)へと進んで行きます。
傷病者に意識がなければ、自分一人では救助することはできません。傷病者を救助する仲間を増やす応援要請が必要となるのです。例えば、周囲にいる人へ「AEDを持って来て下さい」「119番通報して救急要請をして下さい」と仲間を増やしていくのです。まずは、傷病者に声を掛けて意識の確認をしなければならいのですが。。。
傷病者へ声をかけることへの困難さ
朝の通勤途中に過労で駅の階段で倒れ込んだという人の話を聞いたことがあります。彼が言うには自分が倒れた時、誰も声をかけてくる人はいなく、次々と人の波が自分の上を通り過ぎて行ったということでした。
実際のところ、倒れている人を見かけて声をかけられる人はどの位いるのでしょうか。声をかけるという行為は、大変難しいのかも知れません。声をかけたら、関わったことで結果責任を追求されるかも知れないと考える人もいるでしょうし、しばらくの間は、自分の時間は取られます。これによって職場に遅刻することも予想されます。
正直なところ、「面倒は避けたい」「面倒に関わりたくない」というところが人間の心理ではないでしょうか。
実は、傷病者に声をかけることが最も困難なことかも知れません。
病院内で同じことが起こると看護師はどうか
看護師さんは、いろいろな知識を沢山持っています。
看護師さんはプロですから、傷病者への声かけ(意識の確認)は、驚くほど速やかにします。これまで救命処置の訓練をして来て多くの看護師さんが意識の確認をして意識がないと何をするか。看護師さんは瞬時に情報を集められます。顔色、呼吸など全体的な状態を集めます。一気にマッピングをするのです。その結果、いきなり胸骨圧迫(心臓マッサージ)をし始めたり、呼吸脈拍の触知をし始めるのです。部分的に正しいのですが、これもまたNG。意識がなければ、コードブルーなどの院内救急コール(応援要請)を出す。これが重要なのです。
すぐに胸骨圧迫をしたくなるのは分かりますが、まずは意識がなければ、応援要請。
路上でも病院内でも意識の確認と人集め
救命処置や蘇生は路上でも病院内でも結局、「意識の確認と人集め」から始まるのです。
ここで重要となるのは、誰にどのような応援要請をしているのかを明確にすることです。
人間は面倒に関わりたくないという心理があります。誰に応援要請をしているのかを明確にします。病院内であれば、その人の名前を呼ぶ。そして応援要請の内容を伝える。名前を呼んでしまえば、もう逃げられません。
【例】
「鈴木さん、コードブルーをお願いします」
「緑川さん、救急カートをナースセンターから持ってきて下さい」
街中では、知り合いが周りにいることは珍しいので、名前は呼べないかも知れません。目についた応援要請をしたいと思っている人の特徴を言ってしまうと逃げられなくなります。
【例】
「そこの黒いTシャツを着ている男性の方、119番通報をして救急車を呼んで下さい」
「そこのポニーテールの女性の方、20m先のコンビニからAEDを持って来て下さい」
それでもあなたは声をかけない選択をしますか
「あなたの職場への遅刻」と「人の命」どちらが重要でしょうか。
「一時の面倒」と「人の命」どちらが大切でしょうか。
答えは簡単。あなたのほんの少しの勇気で人の命が救われる可能性があるのです。
人間は、最初からうまくできることはありません。何でも「訓練」「練習」をして少しずつうまくなるものです。
傷病者へ声を掛けるということも同じ。
消防署などで行われてる普通救命講習。医療関係者でしたら、ICLSコースやACLSコースなどの講習を受ける機会がありましたら是非受講してして頂いて、要救助者を見かけましたら勇気を出して声を掛けてみて下さい。その場で仲間を増やして(応援要請)行けば何とかなるものです。
ほんの少しの努力と勇気が人の命を繋げていくのです。
関連記事
・インタビュー#6 シリーズ心肺蘇生実践編〜登山や駅伝大会中に人命救助できますか? <前編>