今回は鶴巻温泉病院の看護部長、感染管理認定看護師でもいらっしゃる小澤美紀様にインタビューをさせて頂きました。
小澤看護部長の手腕と魅力に迫ります。
看護師になったきっかけ
看護師を選んだ理由について教えてください。
小澤:母が看護師をしており、私が幼い頃から働いていました。
高校生になり、進路を考える時、「働きながらここまで育ててくれた母の仕事はどのような仕事なのだろうか」と興味が湧き、看護師を目指すことに決めました。
看護学校で印象深かったことはありますか。
小澤:看護技術の授業で、先生が「シーツ交換というのは、病気になっている人がそこにお休みするのだから、とにかく清潔でピシッとしたシーツでなければならない」と言っていました。
普段は自分のシーツなど特に意識していませんでしたが、シーツも療養環境のひとつなのだと学びました。
他の人に対しての思い
学生時代の実習などで、思い出に残っている事はありますか。
小澤:末期ガンの患者さんを受け持った時に、「今日は元気で来たのか」「ちゃんと成績はとれるのか」と具合が悪い中、学生の私のことばかりを心配してくださりました。
関わりの中で「私は元気で何でもできるのに、これほどまでに他の人に対しての思いを持ってはいないな」と、たくさんの事を教わりました。
また患者さんのご家族にも色々やさしくしていただいたことを覚えています。
最初に配属されたのは何科ですか。
小澤:希望していた血液内科でした。
ターミナルケアの授業で、患者さんの最期を看護する、とても大事な役割だと聞き、私もぜひ携わってみたいと思いました。
患者さんときっちり向き合うことが難しかった1年目
入職していかがでしたか。
小澤:病棟に配属されて2日目ほどで患者さんが亡くなり、死後の処置を見学するところから始まりました。
血液内科といっても白血病だけではなく、様々なガンを持った方がおり、化学療法も多く行われていました。
15歳前後から、上は80代の方まで、多くの方が入院していました。
ターミナルケアがやりたいと思い入職しましたが、実際に患者さんの前に行くと何にもできず、「患者さんに何か聞かれたら、何を答えたらいいのだろう」と分からなくなり、1年目は患者さんとしっかりと向き合えなかったと思います。
今では病名を患者さんに告知することが普通ですが、当時は患者さんには伝えないこともありました。
病名を患者さん自身がご存知なのかも分からず、患者さんからの問いに答えられなくなったことがあります。
その時、自分の力のなさを痛感して「もっともっと勉強していかなければいけないな」と思いました。
患者さんに言われて気づいたこと
小澤:患者さんに言われてやっと気がついた事もありました。
3年目の時、患者さんのためではなく、自分の業務中心になっていました。
「看護師だったら、患者の立場になって物を考えろ」と患者さんに怒られたことがありました。
怒られた直後は分からなかったのですが、一晩寝た後に「あ、そうだよな」と、その時にハッと目が覚めました。
先輩に「患者さん中心よ」と言われても、なかなか理解できませんでしたが、その患者さんに怒られたことで、初めて看護師らしく、出来るだけ患者さんに寄り添っていくことができ始めたと思います。
感染管理という強みを持った看護部長に
どのくらい血液内科に勤務されていたのでしょうか。
小澤:6年9カ月同じ科で勤務し、結婚を機に退職しました。
その後、近くの病院の混合病棟に出産ギリギリまで働き、1年半で退職しました。
出産後、子どもが1歳を過ぎた頃に保育所完備の当院に入職しました。
入職してすぐに主任になり、その後病棟の科長になりましたが、大学病院との違いに驚くこともたくさんありました。
特に感染管理に関して、気になる点が多く、きちんとしていきたいという思いを強く持つようになりました。
当時は看護師が積極的に研修にいく風土ではありませんでしたが、看護部長が変わり、病院機能評価を控えていた時期に、感染管理の認定看護師の教育課程の1期生を募集しており、その看護部長が推薦してくださり、そこで認定を取得できました。
その後の経緯を教えてください。
小澤:認定看護師の学校を卒業した後、感染管理室を新しく立ち上げることになり、そこの室長を7年ほど務め、副部長になりました。
「次は看護部長に考えている」と言われていましたが、「私に看護部長は無理だ」と思っていました。
けれども、自分のキャリアを考えた時に、同じポジションで長く勤務していることをよい事とは思っておらず、誰か後輩に譲っていかなければならないとは考えていました。
そして「看護部長という立場はどうなのか」「自分のやりたいことは一体何なのだろう」と考え、とても悩みました。
感染管理というスペシャリストを目指すのか、看護管理というマネージメントを選ぶのか悩んでいましたが、安全管理に長けている看護部長にお会いしたことで「看護部長になるからといって感染管理が得意な自分を捨てなくても、強みを持った看護部長になればそれでいい」と思えたことで、看護部長になる決心をし、今3年目になります。
後編へ続く