No.121 李 道江様(村田病院)後編:装具を必要としない状態が目標

インタビュー

前編に引き続き、村田病院の李 道江管理部長へのインタビューをお届けいたします。

みんなに目標を共有して欲しい

管理の仕事はいつ頃からしていましたか。

李:回復期リハビリテーション病棟にいた時に課長職として、地域連携課も課長職として約10年させていただきました。その中で病棟稼働や地域連携としてのノウハウを覚え、次のステップとして、村田病院に10年前に来ました。

急性期病院での管理は、全くわかりませんでした。入職当初はスタッフとして入りました。しかし、様々なローカルルールがあり、今まで自分が課長として学んできたことが即時に実践できない、特にスタッフは権限がなく、それが自分の中でジレンマでした。すごい勇気と厚かましさだと我ながら反省しますが、スタッフで入ったものの、主任職をしたいと申し出をさせて頂きました 。

役職になりたかったもう一つの本当の理由があります。

それは、看護は一人ではできることや提供するケアに限界があります。

24時間多数の患者様をケアするため、看護師全員が情報を共有して、患者個人に対する目標をもって、同じ方向性を向いていく必要があります。しかし一人でやれることには限度があります。

ですから、同じ目標をもち、同じ看護観をもった看護職を束ねた時に獲得できるケアの力は、一が十に百になります。それが私は管理職の魅力だと思っています。

医師の指示待ちでは絶対ダメ

これからの目標を教えてください。

李:一つは村田病院の発展です。

今現在、看護職の意識はとても変わりました。

私たちは、その方が生きてきた生活と成育歴を理解し、保障して従来の生活場所に戻してあげることが大切です。しかし、脳卒中は根底に色々なリスクを持っています。それは、糖尿病や高血圧など、そういう生活習慣病管理をして再発予防することが必要です。

院内だけのケア、治療で終わるのではなく、地域に帰った患者さんの責任を持つ、もっと言えば、病気を発症させない、予防までの全てができる看護を提供していきたいと思います。

今はまだ急性期と回復期だけですが、在宅支援の訪問看護ステーションや看護多機能型施設、居住ケアハウスなど、そういうところにも目を向けていきたいと思っています。

理念の中にある『主体性のある看護』とは、医師と看護師は上下関係ではなく同等だと思っています。医師と看護師はもちろん、それ以外のコメディカルも含まれます。

横のつながりで、それぞれが専門性を持ち、専門分野に関しては、自分たち独自が考えて、やっていかなければならないのです。ですから、看護師が医師の指示待ちでは絶対ダメです。

特に日常生活ケアに関してはプロですから、そこは徹底したプロ意識とプライドを持つべきだと思います。当院は、看護師の提供するケアについて医師が理解を示してくださっているというのが大きな強みだと感じています。

看護部の理念は統括管理部長が考えましたか。

李:はい、自分の気持ちです。

「患者さんを、人としてきちんと見て欲しいということ」と「自分たちが専門性をもってプライドを持ちましょう」ということです。

一番は感性を磨いてほしいと思います。

また、仕事以外の部分でもしっかりと自立して欲しいと思っています。

当院は、主婦ナースが80%を占めています。家庭を大事にして、プライベートを充実させていなければ、いい仕事はできないと思っています。

ですから、そこの充実はみなさんにしっかりとお願いしています。

患者さんにとって一番身近な存在の看護助手さん

看護助手の役割は、この病院ではどのような役割ですか?

李:全職員と同じです。

看護助手は、看護師以上に患者さんの一番身近な存在だと思います。

患者さんにとって、看護師には言えないことや医師には言えないことがあるかも知れませんが、看護助手には、気楽にお話できます。

ですから看護助手に、その役割をしていただいています。

それから、看護助手は生活全般のこと、洗面や更衣、食事など日常生活のフォローをしています。

看護助手は、そこに関してのプロでないといけないと思っています。

オムツの当て方一つにしても、一般の方が当てるのとは違い、きちんと学んでおり、プライドを持って欲しいと思っています。

看護助手の存在や役割はこれからももっと大きくなっていくと思います。

看護師になる看護助手はいますか。

李:進学する方は多いです。

自分たちのできる範囲が狭いと、もっとやってあげたいという方がたくさんいるので、看護学校に進学します。

これは、ぜひ応援したいといつも思っています。

ですから、万年、看護助手不足です。

年間、何名くらいしていますか。

李:2名〜3名ほど受験します。

どんどんキャリアアップをしていっていただきたいと思っています。

今年は1名、介護福祉士を受けました。中材の業務をしており看護助手がMEの学校に入ったこともあります。

資格は大事で、様々なところでアドバイスしたいです。そういう専門性を随時、看護助手にお話をし、道を広げてあげたいと思っています。

人との出会いが楽しみ

プライベートな時間で、嬉しい、楽しいと思う一時を教えてください。

李:国内、海外問わず旅行が大好きです。

新しいところに行き、新しい発見をする。

そして、新しい出会いがある。

私はポジティブで人との出会いが大好きです。

様々な方々と話をして、その土地柄に行けば、そこのお話を聞くこともできます。ゆっくりと温泉に浸かって、まったりとする時間も大好きです。

これが一番の楽しみです。

残存能力を十分活かしたリハビリテーション

村田病院のアピールポイントをお願いします。

李:70床で小規模な病院です。

院長、副院長先生が、120名のスタッフ全員のお名前と顔を覚えています。

院長室、副院長室がなく、医局で他の医師全員と一緒にいます。

職員に対して大変思いやりの強いお二人です。

ご兄弟で32年やっていますが、人間性は他に見ない優しさを持ってらっしゃる方です。

ですからみんなアットホームで働きやすいのが一番のポイントです。

臨床では、脳神経外科に特化した病院として、一次予防から二次救急、回復期から社会復帰へというシームレスな展開ができる病院です。

リハビリテーションにも力を入れており、セラピストは現在34名います。単純計算をしても患者さん2人に1人はセラピストがつきます。

急性期の治療と回復に向けたリハビリテーションとケア、これが一連の流れの中で展開できることで、患者さんやご家族の個人的背景をどの職員も理解し、共通の個人目標を設定することができます。

特に、装具を必要としたとき、在宅に戻った患者さんは、ご自身で装具を付けなければなりません。私たちは、患者さんの身体能力をしっかりと評価して、家に帰っても装具を必要としない状態を目標としています。

最終的に装具が必要な場面はありますが、残存能力をしっかり見極めて、活かすリハビリテーションを行っています。

その中の全てに看護は関わっています。どの看護師もフィジカルアセスメント能力は非常に高いと思っています。検査データや患者状態を見て、医師へ治療の提案や一緒に相談することもあります。

それができるのは、医師と看護師が上下の関係ではなく、横並びの同等な関係にあるから実現できると考えています。

看護師は、皆が大変明るく、家庭を持っている方が多いので、包容力があります。特に他者に対する思いやりは強いと思っています。

子どものことで休まなければならないことも確かに多いですが、同僚に対してフォローをしながら連携し助け合い、とてもいい環境だと感じています。

目標の共有力が私たちの強み

最後に院内で働いている看護師さんに向けてメッセージをお願いします。

李:時々ですが、スタッフに言っていることがあります。(本当は常に思っていますが、滅多に口には出していません)それは、看護職一人ひとりに対する感謝の気持ちです。

一人ではできないことを全員が一緒に共有してやっていただいている。

例えば、夜勤でも、救急の患者さんの対応も、本当に細かいところまで含めて私一人ではできないことをみんながたくさん助けあって、やっています。それに対していつも感謝しているということが一つです。

もう一つは、みんながとても強いパワーを持っているということです。

個人個人が全員患者さんのことをしっかり思っているということは、手に取るようにわかっています。

それをもっと引き出してあげることが、私の課題であると思います。

他者への思いやりと、秘めたパワーを存分に発揮して、これからも看護師としての天性をますます磨いて欲しいと心から願っています。

シンカナース編集部 インタビュー後記

大阪天王寺駅にほど近く、周囲には多くの住宅と病院が立ち並ぶ一角にある 穂翔会村田病院。

脳神経外科、循環器内科を中心に急性期及び回復期リハビリテーションの病院で市民とって重要な役割を担っている病院。

インタビューの中で「看護師が急性期の病院へ出向いて患者さんを直接見るから受け入れできるか否かの判断が即時できる」という言葉が印象的でした。

他院との連携方法として、決まった枠にとらわれることのない斬新さを感じます。

合わせて「主体性のある看護」という言葉にも力強さを感じました。

豊富なご経験と看護への熱い想いをお話いただきました。

また、主婦ナースへのご配慮をはじめ、職員一人ひとりの生活を踏まえた心配りがインタビューの端々に感じられ、働きやすさとチームワークの良さを容易に想像することができました。

働く側にとって良い病院は、患者さんへ最高のサービスをもたらすと信じています。

知性とエネルギーの漲るそして、とても温かい温もりを感じる統括管理部長の李様でした。

大変貴重なお話ありがとうございました。