前編に引き続き、さいたま記念病院の小木曽看護部長へのインタビューをお届けいたします。
知識と経験の共有
他に大切にされているお考えは御座いますか。
小木曽:今までやってきた事が全て正しいとは思わず、疑問を持って、より良くしていって欲しいと思います。
『笑顔で挨拶、優しい看護』を理念として共有していても個性のある組織であって欲しいのです。
新しいスタッフが入ってきた時や特定機能病院で働いていた人が入ってきた時、「今まで当院ではこうやっていたから」とその人たちの考えややり方を必ず変えてもらう必要もないのです。
新しい知識、最先端の経験があるならばぜひ共有して貰いたい。
それが自然にできる組織になって欲しいです。
専門職ですから、スキルアップしていく義務は個人にもあります。
でも、それを個人に全て丸投げしてしまう環境だと、例えば子育てをしている方などは時間の制約があって学習する機会も限られてしまいますし、負担が大きいです。
折角同じ専門職なのですから、知識も経験も知恵も考え方も分かち合えばいいのです。
それぞれが持ついい点を集団の中に埋もれさせてしまうのは組織にとってもマイナスです。
その事をしっかりと理解してほしいのです。
そうした組織で働きたい人はとても多いのではないでしょうか。
職場の構成や雰囲気はどのようになっていますか。
小木曽:准看護師もおりますが、看護師は125名、看護補助者は45名採用しております。
従来は新卒採用がなかったようなのですが、このところ3、4人は毎年入って来てくれています。
一番手厚い部署でも13対1という看護基準ですので、少数精鋭になりがちですが、高度急性期を経験したことのある方が多いですので安心できます。
そして、高度急性期よりもスピードは緩やかです。
看護の技術を身につけて自信をつけてもらえる職場だと思います。
看護補助者の方は資格をお持ちの方が多いのでしょうか。
小木曽:絶対的に義務付けはしていませんが、30%ほどは初任者研修を修了されています。
全員資格を取れれば良いかもしれませんが、いろいろな事情の方がいらっしゃいますので、そこはあまり求めていません。
私個人としては、看護助手の方々はいわば家の土台、基礎であると思って関わっています。
看護補助者の方々は、病院内の経験がなくても家庭看護のご経験はお持ちですから、感性を大切にしたいのです。
ただ、病院内だからこそ余計に気をつけなければいけないこともあります。
そこは病棟責任者にきちんと気をつけて教えて貰うようにお願いしています。
本当に、看護補助者の方々も患者さんと関わる中にやりがいを感じてくださっていることをいつも感じます。
キャリアを積んで、ご自身の生活スタイルに合わせた形で長く介護職として働ける環境を作って行きたいと思っています。
役割を拡大していく取り組み
いらっしゃる患者さんの特徴はございますか。
小木曽:急性期病院を退院された後に施設へ入られている方など、ご高齢の方がやはり多いです。
誤嚥性肺炎になられた方などです。
病院と異なって看護職員が常にいるとも限りませんし、施設によっては病院への送り迎えは業務外というところもあります。
地域にお住いの方を支えるためには、そうした施設一つ一つの運営方針を確認して、具合が悪くなった場合の対応を予め決める取り組みをしています。
その結果が上がってきたのか、当院が開く時間になると近隣施設から利用者さんに関する相談の電話を頂くようになりました。
そうした近隣施設との繋がりの強さもこちらの病院の特徴ですね。
精力的にお仕事に取り組んでいらっしゃいますが、趣味などは御座いますか。
小木曽:趣味と仕事の両立が自分の中でなかなか出来ず、とにかく仕事を一所懸命にして来たように思います。
時々気分転換に旅行をしていましたが、最近友人に誘われて歌舞伎や能を観に行くようになりました。
自分とは全く違う世界の人達なのですが、一心不乱に芸を磨いていて、その結果素晴らしい作品や文化となっています。
そうした事を見ているととても感激できます。
歌舞伎や能は伝統芸能で、古くから受け継がれて来たものです。
でも、その伝統を大切にするだけでは生き残っていけません。
歴代の襲名した人たちそれぞれが、何らかの自分なりの感性を芸の中に表していっている、そうした部分にすごく惹かれるのです。
本当に小さな子供でも、連獅子の舞台に立つまでには泣きながらでも意思を示しています。
そうして代替わりをしながらも芸術をつないでいくのを肌で感じることができるのがとても好きです。
看護にも通じる部分を感じますね。
では、最後にメッセージをお願いします。
小木曽:さいたま記念病院看護部の小木曽です。
辛いことがあっても諦めないでください。
乗り越えた先に必ず自分の未来があります。
乗り越えるということが一つの大切な経験であると私は思っています。
挫折し、諦めて「もう辞めよう」と言うことは、看護師としての道を自ら閉ざしてしまうことです。
当院のスタッフは本当に一生懸命に人を育てる人ばかりです。
入職して来た人の看護師経験の有無に関わらず、看護を一緒に考え身につけ、自立した看護師になって貰うことに対して最大の努力をしています。
ぜひ看護師としての人生を大切にして頂きたいです。
地域密着型の病院で自分の可能性を試してみたいという方、ぜひ当院に足を踏み入れていただけませんか。
よろしくお願いいたします。
シンカナース編集部 インタビュー後記
様々なバックグラウンドを持つ看護師達が働く病院だからこそ、誰も集団の中に埋もれること無く、個性が光る組織を作りたいとおっしゃった小木曽看護部長。
他職種の経験や知識をお互いに尊重し合うチーム医療を新人時代からご経験していらっしゃったからこその言葉だと感じました。
今は学校でも「他職種との協働」や「チームワーク」の大切さが教えられています。
でも看護師同士ではどうでしょうか。
同じ専門職だからこそ視点や意見の違いが目立つこともあるでしょう。
先輩後輩、古参新参という立場があった場合、どのように考えて動けばいいのでしょうか。
今回はその答えを聞くことが出来たように感じます。
小木曽看護部長、この度は貴重なお話をどうもありがとう御座いました。
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