No.267おゆみの中央病院 山下剛司 理事長・院長 前編:人口増加・高齢化のニーズに迅速対応

インタビュー

整形外科(無床)クリニック、内科系(有床)クリニック、

介護老人保健施設を運営する医療法人の理事長として平成21年に就任後、

訪問看護ステーション・居宅介護支援事業所の開設、

地域包括支援センター(千葉市より受託:2圏域)、通所リハビリテーションの機能強化に邁進、

平成26年には念願であったおゆみの中央病院(149床)をオープンさせ、

平成30年には、更に21床の病床配分を経て、170床に増床するなど、

地域の期待を受け、急成長をリードしてこられた山下剛司先生に、同院の特徴や先生のご経歴を伺いました。 

 

オリジンは整形外科クリニック

 

久保:本日は、医療法人社団淳英会理事長、おゆみの中央病院院長の山下剛司先生にお話を伺います。先生、どうぞよろしくお願いします。

 

山下:よろしくお願いします。

 

 

久保:まず、貴院の特徴を挙げてください。

 

山下:特徴の一つは、急性期から回復期、そして維持期に至るまで、一貫した医療を行えることです。

診療科としては、整形外科、内科、循環器内科、呼吸器内科、リハビリテーション科、形成外科、麻酔科、脳神経外科等を標榜しており、

高齢化社会において最も必要とされる診療科を中心に構成しています。

もともとオリジンは平成8年にJR鎌取駅前に開設した整形外科クリニックですので、

その歴史的な流れを踏まえ我々の強みを生かしながら、千葉市・市原市の地域ニーズに応えて拡大してきました。

 

 

今春からは常勤の整形外科医師が5名、内科(救急)医師が2名、形成外科医師が1名就任し、整形外科は基より、内科救急、形成外科的緊急症にも対応しています。

また、当法人全体でリハビリスタッフが総勢133名在籍しており、手術をして終わりではなく、

しっかり機能回復した後に退院いただき、在宅に戻られた方々にも対応するシームレスな医療提供体制を整えております。

 

 

病床数は170床で、急性期医療を行う一般病棟、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟という3病棟構成です。

その他、訪問診療にも力を入れており、現在約500名ほどの患者さんを在宅で診ており、

いざ入院が必要になった時には当院に入院していただくという体制を整えています。

 

土日診療もスタート

 

久保:エントランスに「土日の診療も始めました」という告知が貼ってありました。

それも特徴的なことではないかと思いますが。

 

山下:整形外科・内科診療やリハビリ外来を土日にも行っています。

この地域は新興住宅街のため平日は働いていらっしゃる方が多く、地域からの要請もございました。

そこで「ペイシェントファースト」の目線から、土日診療を始めました。当初の見込みよりもかなり多くの患者さんが、土曜日・日曜日とも、来院されており、少し驚いています。

 

シニアリーダー養成講座

 

久保:平成8年に診療所として開設し現在170床ということですので、急速に拡張されていらっしゃるのですね。

 

山下:経営的にはスピード感を持って、地域の皆さまの高齢化を背景とする社会的要請に応えていく必要があると考えています。

増床して170床になりましたが、既にフル稼働状態であり、隣接した土地を二千坪購入して新たな展開に備えてあります。

 

 

当法人の特徴ともいえるプロジェクトを紹介させていただきますと、「シニアリーダー養成講座」というプロジェクトがあります。

仕事をリタイアされた方を対象に、健康の維持増進に関する栄養や運動、基礎的な医学知識、あるいは健康体操の方法を身につけていただき、それぞれがお住まいの地域でその情報を拡散いただくという、ある意味、新しいソーシャルネットワークです。

平成31年3月時点でシニアリーダー登録者は746人いらっしゃり、千葉市内191カ所で体操教室を開催しています。

私どもの提案を基に、千葉市からの委託事業として平成27年から展開しています。


 

 

久保:シニアリーダーの養成は貴院のスタッフが担当されるのだと思いますが、そのコスト負担はどのようになさっているのでしょうか。

 

山下:収益につながる活動では全くありません。

あくまで地域社会に必要なことを当法人の社会的責任において行っています。

この「シニアリーダー養成講座」のほか、認知症やロコモティブシンドローム等の予防に特化した「元気UPテラスおゆみの」という介護予防事業プログラムも提供しています。

これらがフレイルやプレフレイルを減らし、増大する医療・介護需要を少しでも抑制できるのではないかと期待しています。

 

整形外科は明るい外科

 

久保:まだたくさん特徴的なことがおありだと思いますが、ここでいったん先生ご自身のことについて質問させてください。

まず医師になろうとされた理由はどのようなことでしたか。

 

山下:祖父が外科医であった影響はあると思います。

子どもの頃から「メスをふるって癌を治せる医者になりたい」と思っていました。

医学部に進学し外科医療の実際がわかってきますと、興味の対象が腫瘍外科から整形外科へと徐々に変わっていきました。

と言いますのは、当時、癌の手術を行っても患者さんの半数は亡くなられていました。

それに対し整形外科手術では9割の方が術前より症状もQOLも改善し、明るく退院されていきます。

そこに魅力を感じました。

 

 

久保:大学ご卒業後から現在までのご経歴をお聞かせください。

 

山下:岡山大を卒業後に千葉大の整形外科に入局し、膝関節外科で大変高名な守屋秀繁先生の下で研鑽を積みました。

スイス留学で関節軟骨の修復を研究したり関節鏡視下の手術、人工関節手術の腕を磨き、入局から10年ほど経ったとき、当法人の開設者である私の叔父に誘われて平成21年にキャリアチェンジし、理事長に就任したという流れです。

 

有床診からスタートし、急拡大

 

久保:理事長に就任された時点ではまだ診療所だったのですね。

 

山下:鎌取駅前の整形外科クリニックと、19床の有床内科診療所、100床の介護老人保健施設のみでした。

 

久保:そうしますと平成21年から10年ほどの間に病院の開設・拡張とともに、さまざまな関連施設を開設されてきたわけですね。

 

山下:老人保健施設は以前からありました。

理事長就任5年目に病院を開設し、その他、訪問看護ステーション等をニーズに応えるかたちで拡充してまいりました。

 

職員のやりがいを最も大切にする

 

久保:理事長に就任される際にお考えになったことを教えてください。

 

山下:医学研究者と医療機関の経営者では根本的に仕事の内容が異なりますので、大きなキャリアチェンジでした。

ただ、患者さんを良くするという点、そして社会に貢献するという点については、立場は違えども本質的に大きく変わるものではないと考えていました。

経営の知識など自分に不足している部分はそれを自覚し走りながら勉強し、現在に至ります。

整形外科医としては現在も年間200件執刀し、週に3回外来も担当しています。

一方、経営者としては、600人の職員がやりがいを持って働いていただけるような環境を創出すること、それが一番大切なことだと考えています。

 

看護師へのタスクシフト

 

久保:ここで看護師についてお尋ねします。

先生にとって看護師とはどのような存在ですか。

 

山下:看護師は、病院にとって非常に大切なポジションを担う存在です。

患者さんに最も密接に関わっていただく職種で、ある意味病院を左右する存在といえます。看護師なしでは病院経営は成り立ちません。

 

 

久保:看護師に助けられたという経験はおありですか。

 

山下:それはもう助けられてばかりです。

日々の診療も看護師がいなければ成り立ちません。

この現状に関連し、私は最近よく医師業務のタスクシフトについて考えます。

現在、医師が行っている仕事の中には、本来であれば患者さんとより密接な関係にあり状況を正確に把握している看護師が担った方がよいはずなのに、慣例的になんとなく医師が行っている事柄が少なくありません。

 

 

大学病院に勤務中、常に気になっていました。

今は、看護師が得意とする業務は積極的に権限移譲し任せていく、ただし最終的な責任は医師が担うという仕組みにしていく時期に来ているのではないでしょうか。当院では看護部長や看護師長がリードし、徐々にそのような体制に移行しています。

 

 

後編に続く

Photo by Fumiya Araki

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