皆さんこんにちは。
日本は少しづつ涼しくなってきたと聞きましたが、シドニーは逆に春真っ最中。すでに昼間は夏の気配もするほど暖かくなって過ごしやすくなってきた今日この頃です。
さて今回は、前回少しお話しさせて頂いた「働き手としての権利の尊重」のお話しをもう少し掘り下げて、特になぜオーストラリアの看護師は勤務時間内に業務が終わるのか?!ということについて少しお話しできたらと思います。
オーストラリアの看護師業務は日本と比較するととにかく余裕があります。朝の勤務(三交代の場合、午前7時から午後3時半)では、昼食時の薬剤投与が終わると残った業務はほぼ記録のみということもよくあります。ではその差はなぜ生まれるのか?
まず気が付くことはとにかく記録に掛かる時間も含め、看護師の仕事量の違いです。
オーストラリアの看護師業務は主に薬剤投与と記録!といっても過言ではないほど明確に他職種業務と分担化されています。もちろんその他にも主に重症患者さんの日常生活援助(清潔、排泄介助など)やガーゼ/包帯交換などの必要な看護処置を行いますが、日本の看護師が行っていてオーストラリアの看護師が行っていない業務は多くあるように感じられます。そのような業務の多くはオーストラリアでは他職種に分担されています。(特に看護師資格がなくてもできるような業務)また、看護助手(各病棟に1人など)の行うことのできる仕事の範囲も広く、ナースコール対応、バイタルサインチェック、尿量測定、移動/移乗/体交介助など、、、薬剤投与と看護処置や記録以外のほぼすべての看護関連業務を行うことができます。
オーストラリアで他職種に分担されている日本の看護師業務の例をいくつか紹介したいと思います。
① 採血→採血担当専門職(採血の資格がないと看護師でも採血できない!)
② 環境整備、患者さんの退院や病棟/病室移動後の清掃→清掃担当者(障害物や転倒防止、感染対策などの環境整備は必要であれば看護師も行います。)
③ 患者さんの病棟/検査などへの移動や移乗介助→主に大柄な男性の移動/移乗介助専門者(重度の運動機能障害等で2人の介助が必要な患者さんなどは看護師も介助を行います。)
④ 食事の配膳→配膳担当者
また、理学療法などのリハビリテーションは担当者が患者の病室に来て病棟内で行います。
オーストラリアの病院はとにかく分業!利点としては作業の明確化と効率化による一職員当たりの負担の減少から看護や提供するサービスの質の向上につなげられることです。一方、明確な分業制は逆に自分の仕事以外はしない!という認識を与えることにもなり、例えそれが近くの給湯室に紙コップを取ってくるだけであったり、たまたま居合わせた移乗に少し手を貸すことであってもやらない!という場面もたびたび見かけました。各個人の仕事/看護観や捉え方にもよるとは思いますが、いずれにせよ、患者さんにとって最善の医療につながるように取り組みたいものです。
基本の看護業務の流れ↓
このようなプランをナースステーションなどに貼り、実施済み業務は斜線で消すなどしてチーム全体で業務の進行状況/分担を判断します。例)看護師が薬の準備をしている間に看護助手が朝食の環境設定など。
シンカナース株式会社 代表取締役社長
看護師として勤務していた病院において、人材不足から十分な医療が提供出来なかった原体験を踏まえ「医療の人材不足を解決する」をミッションに、2006年に起業。 現在、病院に対しコンサルティングおよび教育を通じた外国人看護助手派遣事業を展開。25カ国以上の外国人看護助手を育成し、病院へ派遣することで、ミッションを遂行している。 東京都立公衆衛生看護専門学校 看護師 東洋大学 文学部 国文学科 学士 明治大学大学院 グローバルビジネス研究科 経営管理修士(MBA) 日本大学大学院 総合社会情報研究科 総合社会文化博士(Ph.D.) ニュージーランド留学 帝京大学医学部附属病院 東十条病院 三井住友銀行 元東京医科歯科大学非常勤講師 元同志社大学嘱託講師 元日本看護連盟幹事 元東京都看護連盟幹事 日本看護連盟政治アカデミー1期生 シンカナース株式会社/代表取締役社長 著書 『わたしの仕事シリーズ2 看護師』新水社 『医師の労働時間は 看護業務の「分業化」で削減する』幻冬舎 『外国人看護助手テキストブック』幻冬舎