皆さんこんにちは。
さて今回は、前回オーストラリアの看護師は記録にかける時間が短いということを少しお話しさせて頂いたのですが、オーストラリアと日本の看護記録の違いについてもう少し紹介させて頂きたいと思います。
1処置、1手洗いじゃないですが、オーストラリアの看護記録の基本は「1看護処置、1記録」です。看護ケアを行ったらその場で記録を行うことによって、時間経過による書き漏れや書き写しによるミスを防止し、より効果的な看護記録を実践する目的があります。バイタル測定の際にはカルテ(またはバイタル記録用紙)を持ち歩き、1患者ごとに測定後その場で記録していきます。ガーゼ交換なども処置後すぐに傷の状態や実施処置、ケア内容の変更の有無などの記録を行います。そもそもオーストラリアの看護記録は看護処置ごとに記録が分かれているため、その場で処置ごとの記録が可能なのです(褥瘡や傷、ドレーン、意識レベルや神経血管系アセスメントなど)。医師やリハビリなども統一された記録を使うのですが、他職種間で共通の経過記録には患者さんの一通りのアセスメントなどを簡潔に記載し、細かい看護処置や観察内容などはそれぞれ別の記録に記載するという形です。
オーストラリアの看護記録は新人や学生にもとても分かりやすい!というのも特徴です。チャート式やチェック式の記録に観察項目や観察方法、異常値、異常時の対処方法などが一目で分かるように記載されており、経験などによる記録の質的・量的な差を最小限にするために統一された記録用紙を使用しています。州(日本の県のようなもの)はもちろん、オーストラリア全土の公立病院でほぼ共通の記録用紙を使用しているため、他病院などへの転勤も困りません。
異常値(黄色の危険ゾーンと迅速な対応が求められる赤色ゾーン)
が一目で分かるバイタル記録用紙 ↓
↑ それぞれの異常値ゾーンへの対応方法も分かりやすく明記
処置ごとの記録によって効果的でタイムリーな記録の実践と、後回しにされた記録に追われて残業ということもありません。また、明確で簡潔に統一された記録は経験や能力差による質的/量的差を最小限に抑えるとともに、記録時間も最小限に抑えられています。記録に時間が掛かりすぎていると感じる現場であれば、オーストラリア流の記録を少し目指してみてもいいかもしれません!
シンカナース株式会社 代表取締役社長
看護師として勤務していた病院において、人材不足から十分な医療が提供出来なかった原体験を踏まえ「医療の人材不足を解決する」をミッションに、2006年に起業。 現在、病院に対しコンサルティングおよび教育を通じた外国人看護助手派遣事業を展開。25カ国以上の外国人看護助手を育成し、病院へ派遣することで、ミッションを遂行している。 東京都立公衆衛生看護専門学校 看護師 東洋大学 文学部 国文学科 学士 明治大学大学院 グローバルビジネス研究科 経営管理修士(MBA) 日本大学大学院 総合社会情報研究科 総合社会文化博士(Ph.D.) ニュージーランド留学 帝京大学医学部附属病院 東十条病院 三井住友銀行 元東京医科歯科大学非常勤講師 元同志社大学嘱託講師 元日本看護連盟幹事 元東京都看護連盟幹事 日本看護連盟政治アカデミー1期生 シンカナース株式会社/代表取締役社長 著書 『わたしの仕事シリーズ2 看護師』新水社 『医師の労働時間は 看護業務の「分業化」で削減する』幻冬舎 『外国人看護助手テキストブック』幻冬舎