No.96 平井 三重子様(関西ろうさい病院)後編:スタッフ一人一人に浸透するように語りかける

インタビュー

前編に引き続き、関西ろうさい病院の平井 三重子看護部長へのインタビューをお届けします。

急性期の看護を支えるというプライドを持って

イギリス看護管理研修のお話を聞かせていただけますか。

平井:ナイチンゲールが近代看護を築いた発祥の場で、看護学の発展において非常に重要な位置づけにあるGuys & Thomas’で実施されました。この病院は、テムズ河畔に立ち、対岸にビックベンと愛称される国会議事堂があり、ロンドンで最大規模の急性期病院で、ファウンデーショントラスト(病院機能評価が高く財政基盤も強く経営努力している場合、国から承認され資格がとれるシステムで公益法人)という社会的地域を与えられた病院です。

この研修の目的は、国民保健医療サービス改革や看護管理者が保健医療サービスにどのように影響しているか研修し、看護管理者の資質の向上に寄与することでした。

医療保健制度、医療提供システムは違いますが、変化する医療政策の中で、イギリスの看護管理者が主体的に病院経営に参画し医療の質向上に貢献している姿を通して、そのマネジメントのあり方を知ることができ大きな学びでした。

いつ看護部長になられたのでしょうか。

平井:副看護部長を3年経験したあとに看護部長になりました。

それまでは役職が変わるたびに戸惑いがありましたが、このころになると形式知と多くの経験知を積み重ねていく中で、少しづつ主軸が持てるようになり意思決定の際、揺らぎが少しづつ少なくなっていきました。

看護副部長になられてから始められたことはありますか。

平井:リソースナースセンターを開設しました。

医療の高度化,複雑化などに伴い,看護サービスの質を保ち,さらに高いレベルの看護サービスを提供する取り組みは急務でした。看護領域でもスペシャリストを病院組織の中で効率的,効果的に活用する必要性が増していました。そのためには,リソースナース(常に変化する医療現場の最前線で働く看護師たちを専門知識や技能で支援する看護師のこと)である専門看護師および認定看護師の活躍が必要でした。

これら専門看護師、認定看護師をリソースナースとし、リソースナースが所属し、より有効に効果的に機能するためのあらゆる役割を持つセクションとしてリソースナースセンターを開設しました。

現在、当院には診療看護師5名、専門看護師5名、認定看護師19名、特定看護師1名のリソースに恵まれています。

また、最近では通院が難しい自宅療養中の患者さんのご自宅へ、当院のがん看護専門看護師、緩和ケア認定看護師、皮膚・排泄ケア認定看護師が、担当の訪問看護師と一緒に伺い、退院後の療養生活について相談や支援をさせていただいております。

当院は忙しさもありますが、急性期の看護を支えるというプライドを持ってスタッフがケアにあたっています。

看護部長になられてから始められたことはありますか。

平井:主にキャリア開発に向けての継続教育の再構築を行ってきました。

最近では、地域包括ケアシステムの構築に向けて取り組んでいます。

その構築の一翼を担う役割として、PFM(Patient Flow Management:ペイシェント・フロー・マネジメント)による入退院支援強化システム、つまり、患者の入院前に基本情報を収集し、これをベットコントロールや退院支援などのために組織的に活用していくしくみを導入しようとしています。

スタッフが元気に働けるための環境作り

看護部長として大切にされていることはありますか。

平井:看護部長として今後の方針や描いているビジョンなどをスタッフに伝えたい時、スタッフの一人一人にまで浸透するように語るということが重要だと考えています。

看護部長の伝えたいことが看護部全体に浸透し、そしてスタッフたちの意見が看護部長までフィードバックする、という循環を良くしなければなりません。

看護部という組織は、トップに看護部長がいて、看護副部長、看護師長、看護師長補佐、そして次にスタッフというピラミッド式になっているので、トップと末端の繋がりのカギを握るのは各看護副部長や各看護師長になります。

病院や看護部が組織管理のためバランススコアカード(経営のためのマネジメントシステム)や目標管理(経営管理方式)を取り入れています。

そして現場で働いている看護師や他スタッフは元気でないといけないと思います。

スタッフが元気に働くためには、働く環境を整える必要があります。

看護部長には運営・経営に寄与するなど様々な仕事がありますが、人が活きるための人材育成、そして、人を活かすための職場環境つくりは考えています。

受け継がれる看護理念を元に、時代とともに変化する看護

関西ろうさい病院の看護理念について伺っても宜しいですか。

平井:看護理念「信頼される看護をすべての人々に」は先輩から伝承・発展させながら受け継いできたものです。

看護部がめざす看護は、3つの柱から成り立っています。

1つ目は患者さんご家族に寄り添い、同じ目線で(感じる)ことができる看護、2つ目は、行われている看護が、患者さん・ご家族・医療者間で納得、共有でき自己決定を支援し、(見える)看護、そして、3つ目は常に新しい知識に裏付けられた、(進化する)ことができる看護です。

さらに、看護部の基本姿勢を『看護宣言』として広くみなさんに提示することにいたしました。宣言によって、今まで以上に看護部としての責任を自覚し、めざす看護の実現に努めております。

それでは、看護補助者の方々はどのような業務を担当されているのでしょうか。

平井:患者さんの快適な療養環境の提供と看護師の作業環境の整備を目的に、安全かつ効果的に行動し役割を果たしてもらってます。

原則として環境整備にかかわる業務と日常生活にかかわる業務、診療に関わる周辺業務を行ってもらっています。

看護チームの一員として、看護補助者がいなければ看護師が看護に専念できる時間が少なくなってしまうので、本当に助かっています。

今まで様々な地域への転勤をご経験されておいでですが、転勤という経験は如何でしたか。

そうした中で楽しんでいらしたことはございますか。

平井:多くの方々と出会い、いろいろな環境の下、そこでしか体験出来なかったことがあり、視野が広がっていきました。もちろん苦しいこと、楽しいこといろいろなことがありますが、人生は1度ですので、経験は全て財産と思ってます。仕事以外でも基本的にはいつも楽しもうと思っています。

新潟ではスキー、大阪に転勤にした時は山登りを始めました。

バレーボールもしていましたし、プライベートではライブにも行きます。

やはり転勤していなかったら、今の様にやっていなかったかもしれません。

相手を知り、理解することが看護師の基礎

新人看護師に向けてメッセージをいただけますか。

平井:看護は相手を知り、理解をすることから始まります。

日常生活の中で相手を知る、理解する事を心かげておけば、看護師になった時に良い看護をする基礎になります。

また、「継続は力なり」という言葉があります。

これは人生の中で嬉しいこと悲しいことがたくさんあると思いますが、その一つ一つを乗り越え、諦めずに継続することが良い結果として表れてきます。看護師になるという目標があるのであれば、そこに向かって諦めずに進んでいって欲しいと思います。

関西ろうさい病院は急性期高度医療を担う642床の病院です。

特に医療の質は高く、DPC対象病院(Ⅱ群)を取得し、がん、循環器、脳外科、外科、整形外科、救急等にわたる診療機能を提供しております。

それに伴い、めざす看護ができるように看護師の教育研修制度の再構築、やりがいを感じられる職場環境を整えることにも力をいれております。

そしてさらにそれを支えてくれるリソースナースがいます。

新人看護師の皆様、めざす看護を提供するために充実した教育体制を整えておりますのでどうか安心してお越しください。

関西ろうさい病院はとても元気な病院です。

みなさんをお待ちしております。

シンカナース編集部 インタビュー後記

関西ろうさい病院は市中にあり、地域の方々の健康を下支えするという大きな役割を担った病院です。

病院の外にはとても手入れの行き届いた公園や草花、イルミネーションがあります。

地域の方や患者さん、また職員の方々の心も癒してくれる、そういった雰囲気で溢れていました。

その病院の看護部長として組織を支えていらっしゃるのが、今回お話を伺わせて頂いた平井看護部長です。

キャリアの節目節目でご自分にとってとても大切なキーワードを見出され、課題から全く逃げることなく、

常に全力で打ち込まれていらしたご経験をお持ちのとても素晴らしい方です。

そのような方が率いている看護部には、平井看護部長と同じく明るさ、前向きさ、勤勉さを持った看護師が沢山いることでしょう。

平井看護部長、この度はとても希望と活力に溢れたお話をとてもして頂きまして、誠にありがとうございました。

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