前編に引き続き、兵庫県立尼崎総合医療センターの箕浦 洋子副院長のインタビューをお届けします。
自分から学ぼうとしなければ大きくならない
病院の看護部として取り組まれていらっしゃることはございますか。
箕浦:様々な取り組みをしています。
その一つに「〇〇カフェ」という、毎週火曜日と木曜日にキャリア支援室のスタッフが主になって開催しているメンタルカフェがあります。
「〇〇」にはその時の自分の気持ちを書くようになっていて、その中ではお茶を飲んで自分の話をしても良いですし、悩みを相談して貰っても構いません。
もし仕事のことであれば、アポイントをとって直接相談して貰える形にしています。
組織も大きいですから、しんどいと感じる人は常にいると考えています。
気持ちを吐き出して貰うことが離職を思い止まらせる有効な手段かはわかりませんが、そういう場を作る事は絶対に必要だと思っています。
教育面でも工夫していて、わからない事を質問できる場として、開院の翌年から誰でも自由に参加できる「バンブー塾」というものを開いています。
少し変わった名前ですが、その由来は病院の教育体制の「たけのこキャリアパス」です。
自分から学ぼうとしなければ大きくなれないと私は考えていますが、人は皆同じ歩調で勉強できるわけではありません。
ですから、色々な経験できる場所を作ろうと、eラーニングもその手段の一つとして取り入れていますが強制にはしていません。
スタッフには「尼崎総合医療センターで働いた」という経歴に誇りを持って貰いたいと思っています。
意見を共有しあう事が大切
「エビデンスに基づいた的確な臨床判断とこころを込めた看護を提供し、患者さんを笑顔にいたします」という理念を実現させるために取り組んでいらっしゃることはございますか。
箕浦:まずは丁寧な看護をしてもらいたいという思いがあります。
理念を達成するためにも患者さんに対して丁寧に、やるべき事をやって貰えるように伝えていますし、時にはディスカッションも提案します。
まとめる役を担う師長にとっては中々大変かと思いますが、話をすることで考えがまとまってくる事もありますし、共有しなければ始まらない事も沢山あります。
患者さんに治ってほしい、笑顔にするという事は何かと考えていく事が大切だと思います。
皆それぞれ、とても良い素材を持っています。
だからこそ色々と考える機会があってその中で気付く事があれば、とても良いものが生まれてくると思うのです。
それに気が付けない状況にはならないようにしたいです。
看護師だけでは仕事は回らない
この病院の看護補助者はどのような役割を担っていますか。
箕浦:看護補助者は当院に約100人勤めていて、看護師と協働して医療サービスを向上していくためのスタッフという位置付けです。
病棟の中では直接的に看護業務をアシストする方、看護の事務作業を手伝ってくれる方もいます。
外来には診療介助をしてくださる方や、中材料室で働いてくださる方がいます。
患者さんにとっては看護師以上に色々なものを感じ取ってもらう大切な存在として活躍して貰っていると思います。
看護師だけでして頂ける仕事はほとんどないのかもしれません。
看護補助者に周辺業務や看護ケアのアシストをして頂くことで、看護ケアの質を向上できます。
看護補助者にはそうした大切な役割を担ってもらっています。
仕事以外で楽しいと思う事や気分転換をされている事はありますか。
箕浦:あまりこれ、という物は無いのですがウィンドウショッピングや、香りの付いた小物集め、読書や瞑想も好きです。
気分転換には足のマッサージをして貰う事もあります。
頭がさえてさっぱりするのでお勧めです。
自分の頭の中を整理してすっきりさせて、心を落ち着かせることは大切なので、そうした時間を作るように心がけています。
新人看護師や看護の勉強におすすめの本はありますか。
箕浦:「摘便とお花見」という本です。
多くの看護師へのインタビューを通して、どういった感情や事実からどのような行動に移しているのかを分析されています。
この本は非常に面白くて感動しました。
また最近聞いて、看護魂が揺らいだのは、日本看護管理学会のインフォメーションエクスチェンジの中で発表されていた抑制ゼロにするという取り組みです。
急性期の病院で患者さんもお歳を召してきていらっしゃるので、治療のためにセンサーを付ける場面は少なくありません。
そのような現状があっても、抑制をゼロにしていくという取り組みは、倫理面だけではなく看護の真価が問われている事だと発表されていました。
その話を聞いて、そういった事が看護の中で非常に大切な事だと改めて考えさせられましたし、非常に感動しました。
箕浦副院長からのメッセージ
新人看護師へのメッセージをお願いしてもよろしいでしょうか。
箕浦:皆さんは今、新人看護師として頑張っておられると思います。
今ちょうどこの時期には、様々な事を考えながら、患者さんに何をやったらいいのかを悩んでいるかもしれません。
先輩のいう事が本当に患者さんにとっていい事なのか、そして自分は何がやれるのかなと悩んでいるかもしれません。
しかし、看護とはいったいなんでしょうか。
実はそこにあなたがいるだけで患者さんにとって良いことが沢山あるかもしれません。
沢山勉強して、いい看護ケアを提供する事は職業人としてやらなければならないことです。
ですが、それ以上にあなた一人がここに存在することが患者さんにとって素晴らしい看護になることも大事にしてほしいと思います。
色々な荒波もあるかと思いますが、ぜひ私たちと一緒に一人の看護師として進化してほしい、成長してほしいと思います。
シンカナース編集部 インタビュー後記
箕浦副院長の笑顔には、パワーと情熱が感じられました。
問題を発見する力、問題を解決する力、乗り越えたらまた次のステップに進む力など、箕浦副院長のお話には進化と成長の大切さが多く含まれていました。
ご自身でもおっしゃられていたように、お話しを伺う雰囲気も、とてもおおらかで優しい箕浦副院長でしたが、眼の奥で光る情熱は輝いていらっしゃいました。
時には壁を感じながらも折れることなく前進されていらっしゃる経験を積みかさねることによって、成功体験をステップに!というお話しに繋がっているのだと感じます。
やはり、ご自身で体験されているからこそ、事例もわかりやすく、とても説得力のある内容ばかりでした。
箕浦副院長、この度は、素晴らしいご示唆をいただき、誠にありがとうございました。
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No.94 箕浦 洋子様(兵庫県立尼崎総合医療センター)前編「何が足りないかを考えながら学ぶ」