No.267 おゆみの中央病院 山下剛司 理事長・院長 後編:看護師として、医療のプロであり続けてほしい

インタビュー

前編に続き山下先生に、これからの医療や看護の在り方、看護師への期待などを語っていただきました。

 

プロとは、期待を上回る結果を出すこと

 

久保:先生が看護師に対して、今以上に期待することがあればお聞かせください。

 

山下:私どもの法人の理念の一番最初に

「医療、介護のプロフェッショナルとして日々努力に励む」と謳っています。

看護師も医療人の重要な一角を占める者として、やはりプロフェッショナルリズムを追及していただきたいと期待しています。

「医療のプロ」とは、まず患者さんに対して責任を持つこと、

そして期待を上回る結果を出すということです。

 

抜擢人事で活性化

 

久保:職員にプロフェッショナルリズムを期待するには、そのような意識改革を起こすための環境整備も必要になりますね。

 

山下:その点については、若いスタッフにできるだけ多くのチャンスを与えるようにしています。

年齢や経験年数にこだわらない抜擢人事もその一つです。

私が抜擢人事を行うのには実体験に基づく理由があります。

大学に勤務していた頃、当時非常に注目されていた軟骨再生医療を研究していたことから、若輩なのに学会のシンポジストやパネリストに呼ばれたりしていました。

 

 

その影響もあって入局6年目という早い段階で講師に就任したため、自分より何年も先輩の先生が助教だったりして、非常にやりにくかったのです。

しかしそういう環境だからこそ、がむしゃらに頑張ろうとしました。

この体験から、いま自分が「これは」と思った人には、どんどんチャンスをあげたいなと思っています。

 

看護師の出産離職はゼロ

 

久保:就労環境的なことはいかがでしょうか。

 

山下:もちろん職員の就労環境にも配慮しています。

例えば病院内の保育所は、病院の開設準備段階から設置していました。

子育てと仕事を両立されている方がたくさんいらっしゃいます。

実際、現在120名強の看護スタッフのうち14名が出産・育児休暇中です。

看護師が職を離れる理由として「出産」が大きなウエイトを占めるのではないかと思います。

しかし当院ではこれまで出産を機に離職されたケースは一度もありません。

 

 

また、出産を終え、職場復帰を果たした職員が、ご家庭の事情で辞めなくてはならないという状況にならないよう、いつでも戻ってきていただけることを前提とした勤務体系を整えています。

ただ、一つだけいま気にかけていることがあり、それは冒頭に申しました土日診療をスタートしたことに関連します。

もともと病棟は365日24時間ですので、シフトを都合し対応できているかと思うのですが、ひょっとしたら無理いただいているスタッフもいるかもしれず、内心は非常に心苦しい思いです。

 

医療人としての自覚とワークライフバランス

 

久保:その点はいま話題の働き方改革にも関連してくるかもしれませんね。

先生は医療職者の働き方改革についてどのようにお考えですか。

 

山下:医療人はある程度、ノブレス・オブリージュと申しますか、志とプライドに伴う義務を果たす姿勢が必要だと思います。

当院に新たに入職いただくスタッフの皆さんには、そういった気持ちを持ってほしいということを伝えています。

だからといって自己犠牲の精神で突っ走るのでは心身ともに疲弊して健康を損い、それは患者さんのケアにも良いことではありません。

休むべき時は休み、働くべき時は働くというメリハリを付け、ワークライフバランスをとるべきでしょう。

そこに配慮すれば、あとはダイバーシティーを優先し、いろいろな働き方があってもよいと思います。

 

 

久保:看護師は新卒で入職されてくる方が多のでしょうか。

 

山下:他院で経験を積まれた方が多いですが、新卒も採用しています。

今年は6名採用しました。

新人の看護師も即戦力に近いかたちで活躍しています。もちろん最初の1、2カ月は、私も「大変そうだな」と思いますが、みなさん、すぐに慣れていくようです。

 

さまざまな看護に挑戦できる環境

 

久保:新たに入職を検討されている方に、何かお伝えしたいことはございますか。

 

山下:当院には急性期から回復期そして維持期の入院機能があり、外来もちろんあります。

また同一法人内にクリニック、老人保健施設等の施設を備えています。

ですからあらゆるステージの患者さんの看護を経験できるとことが、我々の強みだと思います。

そして先ほど申しましたように、ダイバーシティー、多様性も重要視しています。

このような環境の中で、プロフェッショナリズムを大切にしながら仕事をしていただきたいと思います。

 

 

久保:最後の質問ですが、先生のご趣味をお聞かせください。

 

山下:あまりこれといって格好いい趣味はなく、特に最近は仕事ばかりです。アルコールも飲みませんし、タバコも吸わず、ゴルフもしません。

あえて言えば、音楽と旅行でしょうか。

もともと音楽好きで学生時代はバンドをしていました。

 

久保:今も演奏されるのですか。

 

山下:演奏は長いことしていませんが、たまにジャズクラブに行ったりします。

旅行も時間がなくてほとんど行けません。学会参加の出張がてら、付近のスポットを回るぐらいです。

 

時代の変化に応じて変化を続ける

 

久保:それでは、看護師へのメッセージをお願いします。

 

山下:これからの社会に必要とされる看護師になっていただくことを期待します。

年号も平成から令和に変わり、社会は大きく変化しています。社会が変化する時、医療人としてどうあるべきか、あるいは、どういう職場で働いて社会に貢献するか、それを判断するには今までと違った視点が必要だと思います。

病院という組織もこれからは生き残っていかなければいけない時代です。

そういった組織の変化にも対応できる人材、先輩の言うことを守るだけではなく将来的な時代の変化を見据えることができる医療者であっていただきたいと思います。

 

 

久保:社会の多様化が進むにつれて、看護師の仕事はこれから病院の外に向かって広がっていくのかもしれませんね。

 

山下:おっしゃる通りですね。

これまで急性期病院は、病院に来た患者さんを院内で治療し社会に戻すという、少しステレオタイプなイメージがあったように思います。

これからは我々医師も看護師もどんどん外に出て行って、地域が求めている医療や介護を進んで提供していくべきです。

 

 

そういった広い目線で社会を見ることで、組織も個人もいろいろなチャンスが広がっていくのではないでしょうか。

久保:本日はたいへん先進的なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

山下:ありがとうございました。

 


 

インタビュー後記

現役の整形外科医として手術も外来も行いながら理事長職を担われている山下先生。

病院全体の明るい雰囲気も、スタッフの皆様の熱気も、

山下理事長のリーダーシップで牽引されていらっしゃるということが伝わるインタビューとなりました。

地域社会にとって必要なこと、職員にとって必要なことなど、

状況やニーズに応じたアイデアと行動力で周囲を幸せにしていらっしゃいます。

人として学ばせていただくことばかりでした。

 

 

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Photo by Fumiya Araki

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