神経内科に特化した狭山神経内科病院。
その院長である沼山貴也先生は、大学在学中に経験した
意外なことがきっかけで神経内科医を志したそうです。
沼山先生に、神経内科医療の特徴や、院長としての豊富をお伺いしました。
神経内科専門病院の特色
荒木:今回は狭山神経内科病院院長の沼山貴也先生にお話を伺います。
先生、どうぞよろしくお願いいたします。
沼山:よろしくお願いいたします。
荒木:最初に貴院の特徴を解説いただけますか。
沼山:「神経内科病院」という名称のとおり、
神経難病などの比較的患者数が少ない領域を対象としていることが特徴と言えるかと思います。
神経疾患は経過が長引くことが多いため、患者さんを長期にわたって受け入れる体制をとっています。
医師への憧れ
荒木:続きまして先生のご経歴についてお伺いします。
まず、先生が医師になろうとされた動機をお聞かせください。
沼山:最初に医師という職業の素晴らしさを意識したのは、
小学生のときに指を怪我し治療を受けた時のことです。
傷が化膿してしまい抗菌薬を点滴投与しても病勢が収まらず、結局、切開して排膿することになりました。
局所麻酔下に切開されたのですが、その手技と効果が子供心に衝撃的と申しますか、
排膿後、急速に改善していき、「ああ、やっぱりお医者さんってすごい人だな」と思った記憶があります。
それから成長する過程で、常に医師という職業を意識するようになりました。
荒木:先生は神経内科をご専門とされていますね。
それにはどういった経緯があったのでしょう。
沼山:いま申しましたような子どもの頃の記憶があったものですから、
弘前大に進学した当初は外科に憧れを感じていました。
「外科に比べると内科は少し地味かな」などと思ったものです。
それでも神経内科医を志すようになった理由というのはシンプルなことで、
在学中の試験で唯一満点をとれた科目だからです。
それまでは特に神経領域が好きだったわけではないのですが、そのことがあってから、
「自分は神経に向いているのかな」と徐々に興味を持つようになり、そのうちのめり込んでいった感じです。
神経内科医の志
荒木:神経内科のどのような点に魅力を感じられたのでしょうか。
沼山:医学部6年目の実習の時のことです。
神経内科の患者さんはみなさん、やはり、障害のある神経に応じた症状が現れているのですね。
その症状から病気を鑑別していく過程に関心を持ちました。
また、神経難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)で長期入院されている患者さんがいらっしゃいました。
ALSは現在でも有効な治療法がありません。
研修で病床を訪れて、「どうですか?」と声をかけても、
寝たきりで声も出せない患者さんは瞬きをして応えるだけです。
そんなとき、何もできない無力感とともに、
「何か自分にできることはないだろうか」という思いに突き動かされるような気がしていました。
なお、当院の入院患者さんで最も多い疾患がALSです。
特色のある病院で働く楽しさ
荒木:弘前大ご卒業後はどのようなご経歴をたどられましたか。
沼山:親族に医者がおらず当然、継承する診療所もないため、
親から「戻ってくる必要はないから自由にやりなさい」と言われていました。
そこで大学院を修了し、いわゆる「お礼奉公」と言われる関連病院での勤務が一段落すると、
思い切って医局を離れ当院に就職しました。
荒木:神経内科の専門病院を選ばれたのですね。
沼山:当院のような神経内科専門病院が存在することを知り、とても驚いた記憶があります。
神経内科専門で成り立っている病院はたいへん珍しく、画期的とも言える存在だと思います。
そういう特色のある病院で働いてみたいと思い、就職しました。
荒木:こちらの院長に就任されたのはいつでしたか。
沼山:平成26年のことでした。
地域への貢献が課題
荒木:院長に就任されて、病院をどのようにしていこうとお考えになられていますか。
沼山:近年、診療報酬がかなり大胆に改定されるようになり、
また地域包括ケアなどの国の施策の影響もあって、病院の役割が大きく変化してきています。
どちらの病院も対応を急いでいるようです。
ただ、当院はもともと神経内科に特化し非常に狭い患者層を対象にしている病院です。
その点を大きく変えようとは考えていません。
しかしその一方で、やはりこの地域に病院がある以上は、
より地域に貢献できる努力は必要だと考えています。
当院は現在、入院診療が中心ですので、外来機能を強化するのも一つの方法かもしれません。
実は以前、外来も毎日受け付けていたのですが、マンパワー不足で中止しています。
毎日は難しいかもしれませんが、もう少し外来を充実させ地域に貢献できればと思っています。
院長は院内の調整役
荒木:病院の経営面についてはいかがでしょうか。
院長というお立場ですと、お気遣いされることが多いのではないか思いますが。
沼山:経営に関しては、当院が戸田中央医科グループの一員であることから
法人本部や事務部門に任せているような状況です。
管理職としての業務ということで言えば、院内の人間関係の調整役のようなことが多いように感じています。
院長ではあるものの、スタッフのバックアップをしながら一人の神経内科医として働いているような状況で、
このスタイルが自分に合っていると感じます。
後編に続く