前編に引き続き、三菱京都病院の小野副院長のインタビューをお届け致します。
新人看護師はどのくらい採用されていますか。
小野:新人看護師は25~30名採用していて、近年は1年目の離職がないことが自慢です。
離職率ゼロは素晴らしいですね。
何か取り組まれていらっしゃるのでしょうか。
小野:インターンシップ制度と新人看護師のフォロー体制が整っているからだと思います。
インターンシップは、私が看護部長になって1年目に、もっとたくさんの看護師を確保するために始めました。
スタッフみんなで新人看護師を育てるという体制をとっています。
少しユニークですが、当院では新人看護師1人に対して複数のプリセプターを付けています。
精神的なサポートは2,3年目の看護師が担い、リーダーをしている5年目看護師には「メンター」として実践的な指導を担ってもらう、という具合です。
また5年目以上の看護師には指導計画を担当してもらいます。
1対1のプリセプター制度ですと、ウマが合わなかった時、新人看護師は相談相手がいなくなってしまうので、このような制度を取り入れました。
「この人だったら話せる」という先輩が側にいられるように、何らかのかたちで全ての看護師が新人看護師に関われるように教育計画を立てています。
認定看護師はいらっしゃいますか。
小野:当院は188床の病院ですが、10人の認定看護師がいます。
認定看護師達は自分自身の活動だけでなく、病棟からのコンサルテーション、新人教育、看護部の教育、看護研究など、いろいろな所で関わってくれています。
困った時に電話をかけるとすぐに対応してくれるので、とても頼もしい存在です。
これだけの認定看護師がいるので、これから全体の看護の質がもっと良くなることを期待しています。
こちらの病院に看護補助者はいらっしゃいますか。
小野:現在18名採用していまして、各病棟やICU、手術室、内視鏡室、透析室に配置しています。
病棟の看護補助者の方には主に入院のオリエンテーションや看護師のケアの介助、搬送、ベッドメイキングなどの業務をしてもらっています。
三菱京都病院では「看護補助者」ではない呼び方を取り入れていらっしゃるのですよね。
小野:院内では看護補助者のことを「メディカルアシスタント」と呼んでいます。
スタッフのモチベーションを上げるために一役買ってくれています。
その方々のサポート体制はございますか。
小野:以前は募集に対して応募してくださった方を採用していたのですが、昨年から初めに病院の見学をして頂いています。
実際に働いている看護補助者とも話をしていただき、一緒に仕事体験をしていただきます。
新しい看護補助者の中には医療現場で働いたことのない方もいらっしゃるので、働く前に仕事のイメージができるようにするのは大切な事だと思います。
入職後にも看護師が適宜サポートしていますし、年間計画に基づき、月に1回は研修会も開いて知識や技術指導を行っています。
三菱京都病院の特徴を教えていただけますか。
小野:三菱京都病院は「循環器」「がん」「周産期」の3つを柱にしている188床の急性期病院です。
二次救急は24時間受け付けており、CPAの患者さんも運ばれてきます。
「心臓の三菱」は有名ですよね。
小野:昔から言われていますね。
心臓血管外科では今でも心臓の手術をたくさんやっていますし、緊急手術、緊急心臓カテーテル治療も多いです。
循環器だけではなくがん治療にも力をいれており、2015年には緩和ケア病棟がオープンしています。
周産期にも力を入れてらっしゃるのですか。
小野:少子化の影響や産科クリニックでの出産が増加しているので、病院での件数自体は減っています。
しかし昨年は約645人の赤ちゃんが産まれており、総合病院での出産件数としては京都で一番多く取り上げています。
いらっしゃる患者さんはこの地域の方が多いのでしょうか。
小野:外来では一日に600人を超える患者さんが来られますが、そのほとんどが近所の方です。
三菱京都病院は三菱自動車工業株式会社の企業立病院ですが、早くから一般にも解放しているので、地域に根差した病院になっています。
最後に、小野副院長にとって看護とは何でしょうか。
小野:看護師が私の天職だと思っています。
看護師になる前から思っていたわけではなく、自分が経験を積んでいく中でそう思うようになりました。
私は手術室看護師の経験が長いので手術室の仕事が大好きなのですが、やはり患者さんのそばにいるのが好きです。
患者さんの側でお話をして、患者さんの思いを聞き、その全てへ対応することは残念ながら難しいです。
ですが、まず患者さんの思いを受け止め、自分にできる最大限のことを試行錯誤しながらするという事が大好きなのです。
小野:三菱京都病院は188床と小規模の病院ではございますが、急性期医療・循環器医療・がん医療・周産期医療ものみならず、非がんの緩和医療にも取り組み始めています。
地域から求められているニーズに対応できるよう取り組んでいる病院です。
病院の規模が小さいので職員の顔がよく見え、職種ごとの垣根が低く、横の連携も密に取りながらチーム医療を行っています。
そのためとても働きやすく、私自身も大好きな病院です。
看護に関して申しますと、「こういうことをやりたい」という希望が出た時には「まずやってみる」いう風土が根付いています。
まずは、見学に来ていただきたいと思います。
看護師はご自身の天職で、とてもお好きだと笑顔で仰った小野副院長。
看護に対する飽くなき情熱を持っていらっしゃるという事を、今回のインタビューの中でとても強く感じました。
脈々と受け継がれてきた病院の伝統を大切にしつつ、地域の方々の健康を支えるために新しいことにも臆することなく挑戦され続けている京都三菱病院。
特にメディカルアシスタントとして働く事を希望される方に向けたインターンシップ制度には大変感動いたしました。
スタッフからの「こういうことをしてみたい」という意見を尊重し、実際にやってみることを後押してくれるという風土がその原動力にもなっているのでしょう。
病院で働かれている看護師を含めたスタッフのみなさまのエネルギーが伝わってくるようです。
小野副院長、この度は貴重なお話をお聞かせ頂き誠にありがとうございました。
No.97 小野典子様(三菱京都病院)前編:看護師になるきっかけは、母のような存在の姉
シンカナース株式会社 代表取締役社長
看護師として勤務していた病院において、人材不足から十分な医療が提供出来なかった原体験を踏まえ「医療の人材不足を解決する」をミッションに、2006年に起業。 現在、病院に対しコンサルティングおよび教育を通じた外国人看護助手派遣事業を展開。25カ国以上の外国人看護助手を育成し、病院へ派遣することで、ミッションを遂行している。 東京都立公衆衛生看護専門学校 看護師 東洋大学 文学部 国文学科 学士 明治大学大学院 グローバルビジネス研究科 経営管理修士(MBA) 日本大学大学院 総合社会情報研究科 総合社会文化博士(Ph.D.) ニュージーランド留学 帝京大学医学部附属病院 東十条病院 三井住友銀行 元東京医科歯科大学非常勤講師 元同志社大学嘱託講師 元日本看護連盟幹事 元東京都看護連盟幹事 日本看護連盟政治アカデミー1期生 シンカナース株式会社/代表取締役社長 著書 『わたしの仕事シリーズ2 看護師』新水社 『医師の労働時間は 看護業務の「分業化」で削減する』幻冬舎 『外国人看護助手テキストブック』幻冬舎