No.257 丸木記念福祉メディカルセンター 棚橋紀夫 院長 前編:130年の伝統と革新

インタビュー

 

丸木記念福祉メディカルセンターの前身である毛呂病院の開設は明治に遡り、

戦後の埼玉医大設立の母体にもなったとのことです。

現院長の棚橋紀夫先生もその伝統を生かしながら、新しい取り組みを次々と始められています。

新人看護師の教育には「時間をかけ過ぎているくらい」充実されているそうです。

 

130年前に遡る歴史

 

中:今回は丸木記念福祉メディカルセンター病院長の棚橋紀夫先生にお話を伺います。

先生どうぞよろしくお願いいたします。

 

棚橋:どうぞよろしくお願いします。

 

 

中:最初に貴院の沿革を教えていただけますか。

 

棚橋:当院は3年前まで「毛呂病院」と称していました。

毛呂とはこの地域の地名です。

毛呂病院の起源は古く、130年近く前の明治25年に遡ります。

創立者の丸木清太郎先生は馬車に乗って遠方まで往診に行っておられたそうです。

 

 

その後、昭和47年の一県一医大構想により、毛呂病院が主体となって埼玉医科大学が設立されました。

その時から数えても、そろそろ50周年を迎えようとしています。

 

精神科医療中心から多機能型医療・介護施設へ

 

中:たいへん伝統があるのですね。

機能的にはどのような特徴がありますか。

 

棚橋:埼玉医科大学病院設立後は、精神科病床中心の総合病院で、

約440床の精神科病床、回復期リハビリテーションビリ病床110床、

緩和ケア病床20床、内科病床48床があります。

さらに現在も精神科病床から一般病床への転換を進めています。

また今秋には地域包括ケア病床を50床設ける予定です。

 

 

そういう意味で、かつては精神科医療が中心だったものが、現在は非常に多機能な病院になりました。

加えて関連施設として介護老人保健施設やケアハウスなどを併設しており、

トータル約1,000人の患者さん・利用者さんが当院の敷地内に常時いらっしゃる巨大な施設です。

看護師は270名以上勤務しています。

病床稼働率が95%以上と高く、それだけ地域に貢献している病院だと思います。

 

埼玉医大の「第4病院」

 

中:歴史がありながら、組織を改革し成長されているのですね。

看護師が活躍できる場が存分にあるように感じます。

 

棚橋:そうだと思います。

外科診療こそ行っていませんが、慢性期疾患をトータルで治療・管理するといった、

いわゆる総合内科的な要素と、認知症治療を含めた精神科医療という、多様性が特色です。

それから、当院は埼玉医科大学の中で「第4病院」としての機能も担っています。

 

 

どういうことかと申しますと、埼玉医大には本院の他に総合医療センターと国際医療センターという

計三つの急性期病院があるのですが、それらの病院から転院される患者さんを受け入れる、

大学病院の後方病院的な役割も果たしているということです。

 

 

中:では次に、先生のご経歴をお聞かせください。

 

棚橋:私は岐阜の出身で、18歳の時に慶應義塾大学に入学し、卒業後も長く慶大に席を置いていました。

神経内科、近年は脳神経内科と呼ぶようになってきましたが、その神経内科の専門医資格を取得し、

米国のヒューストンのベイラー医科大学に脳循環代謝の研究のため留学いたしました。

 

 

帰国後に市中病院の神経内科管理職を務めたり、大学に戻り臨床・研究・教育をしていたところ

「埼玉医大が新設する国際医療センターに脳卒中センターを作るのでそこの教授に」

とのお話をいただきました。

以来、埼玉医大の教授という役職を続けてきて、65歳時に当院の先代理事長(丸木清浩先生)から

副院長、次いで院長就任のお話をいただいたという流れです。

 

研究実績を基盤にした臨床姿勢が求められる

 

中:先代の理事長が棚橋先生に院長就任を求めたのには、どのような理由からとお考えなさいますか。

 

棚橋:医学部教授ともなると、管理が中心で臨床現場に足を運ばない人が多くなりますが、

私は大学勤務時代、常に現場にいて患者さんを診ることを心がけていました。

実際、救急車が到着すればいつも駆けつけ、若いスタッフとともに対応していました。

 

 

また臨床だけでなく研究マインドを重視し、後進を育ててきたという自負もあります。

若いうちに研究の手法をしっかり身に付けることが、医師として将来の臨床の姿勢にも役立つからです。

大学での私のそういった動き方を評価いただいたのではないかと考えています。

 

 

中:大学教授をお務めされていたご経験は、院長になられてからも活きていらっしゃいますか。

 

棚橋:超高齢社会を迎え、認知症患者さんが急増しています。

認知症患者さんの医療サイドの受け皿は、やはり精神科です。

 

 

当院は先ほど申しましたように精神科医療の歴史が長いため、

埼玉県から認知症疾患医療センターの指定を受けています。

私も精神科のドクターとともに認知症の診断や患者さんのケア等に携わりますが、

これは私が神経内科医であり、現場を大切にしていたからこそできることだと思います。

 

「評判のいい病院」であるということ

 

中:現在の病院の運営・経営面については、どのようにお考えになっていますか。

 

棚橋:病院にとって大切なことは、まず、患者さんに喜んで来ていただける病院であることです。

つまり、いわゆる「評判のいい病院」でなければなりません。

それには医師や看護師、その他のスタッフすべてが患者さんにいかに親切であるか、

患者さん中心の医療をしているかが試されます。

偶然ですが、当院院長に就任した1年後に病院機能評価を受審し、高い評価をいただきました。

 

看護教育システムには十分すぎる時間をかける

 

中:そのような改革の中で、看護師はどのような役割を果たしていますか。

 

棚橋:看護師は本当によく勉強してくれています。

それはいま申しました病院機能評価受審のための活動でもそうですし、当院が目指す地域医療への貢献や

Patient Centered Medicine、患者さん中心の医療もよく理解していると感じます。

 

 

もろちん、病院としても新しい職員が入職する都度、オリエンテーションを行います。

そこでは、我々は患者さん中心主義の医療を徹底的するという姿勢をしっかり教育しています。

当院の看護師は、かつては精神科病床が中心ということもあって新卒者が少なかったのですが、

病床構成の変化によって幸い近年は当院での勤務を希望する新卒看護師が増えています。

 

 

中:そうしますと新人看護師に対する教育システムも必要になってきますね。

 

棚橋:当院は新人教育を重視しています。

最初に中途半端な知識を得てしまうと、後からの修正が非常に困難になるからです。

医師の世界でもよく言われることですが、「中途半端な知識なら、ない方が良い」のです。

わからないところは徹底して知識を積み重ねていくことが大事で、

看護師に対しても基礎から成長できるキャリアアップコースを用意しています。

 

 

後編に続く

Interview with Toan & Carlos