前編に続き「看護師は笑顔が大切」とおっしゃる吉田先生に、
そのようにお考えになる理由をお聞かせいただきました。
笑顔に経験は必要ない
中:看護師は笑顔でいること、そして観察力を身につけることが大切ということですね。
吉田:それが看護の基本ではないかと思います。
私は新人看護師に対する訓示でいつもそのように話しています。
レベルの高い看護の実践力を身につけるにはやはり年月が必要ですが、
笑顔の輝きは新人でもベテランでも全く変わりありません。
笑顔に経験は必要ありませんから。
中:おっしゃる通りですね。
笑顔の輝きはベテランも新人も変わらないと。
そうしますと逆に、看護師として経験を積み少し疲れが出てきたような時にも、
先生の言葉を思い出して笑顔になり初心に帰ることもできるのかな、と感じました。
吉田:そうですね。
ただ、職員が笑顔でいられる職場環境を作ること、それは私の責任かもしれません。
私自身は関西出身ですから「人を笑かしてなんぼ」という性分です。
関東ではなかなか大変ですが、笑いを日々のモットーにしています。
最近「パワハラ」「セクハラ」「何とかハラ」と、何にでも「ハラ」が付けられるような世の中ですが、
笑顔に文句を言う人はいないので、笑顔のあふれる職場になれば、
パワハラをはじめ、何とかハラスメントは一切なくなるのではないでしょうか。
中:その発想は社会全体に向けた大事なメッセージとも言えますね。
吉田:病院という存在は、それ自体が小さな一つの社会ですから。
イムスグループ運動会でスタッフが団結
中:そういった先生のお考えをスタッフの方に発信したり、スタッフ間のチームワークを維持するために、
何か取り組みはされていますか。
吉田:全体会議や所属長会議、あるいは新入職員が入職した際などにはメッセージを述べています。
チームワークの維持に関しては、イムスグループ全体の運動会があります。
中:かなり大規模な運動会のようですね。
吉田:グループ内すべての医療機関が参加し、
前年のランクに応じてAからFグループに分かれて競い合います。
当院は今年(2018年)、Cグループで優勝しましたので、来年からはBグループに上がります。
もしBグループで最下位になりますとまたCグループに戻ってしまいますので、練習が大変です。
中:練習はスタッフが一丸となれる良い機会ではないでしょうか。
吉田:確かにふだんの業務ではあまり顔を合わせない職員同士が、
一つの目的のもとに切磋琢磨することのメリットは小さくありません。
そこでの出会いが次の診療に生かされ、互いに協力して頑張る体制ができていくように感じます。
2025年問題と看護師
中:少し話題を変えまして、将来の日本の医療を考える時に欠かせない2025年問題について
お伺いしたいのですが、高齢者がさらに増加していく中で、看護師の役割に変化が起きてくるかどうか、
先生はどのようにお考えでしょうか。
吉田:高齢者の割合が増えていきますから、我々のような救急病院も、
まず病院として高齢者への対応力を養わないといけません。
つまり多くの疾患や障害を併発している患者さんへのトータルなケアをする力です。
当院は平成29年の開設時に「患者さん満足度100%」をスローガンに掲げたのですが、
100%の達成は困難であることがわかりました。
しかし困難ではあるものの、毎年1%でも上げていく努力は大事にしたいと思います。
その上で看護師に期待するところとしては、先ほどの話と重複しますが、
笑顔を絶やさない病院にしていってほしいということです。
それは患者さんに対してだけでなく、患者さんのご家族に対しても同じです。
ロボット支援手術やAIによる診断の進化も重要かと思いますが、結局のところ医療は人間対人間です。
患者さんがご家族とともに笑顔で退院されていかれる姿に、我々はとても安堵と喜びを感じます。
中:看護師への期待など、さまざまな有益なお話を伺ってまいりましたが、
最後の話題として、先生のご趣味などをお聞かせいただけますか。
吉田:小学生の頃からプロレスが好きです。
東京に移り住んでからも後楽園ホールなどのプロレス会場に観に行っています。
ピンチを脱するための日頃の努力
中:お子さんの頃から、ご自身でもからだを動かすことがお好きだったのでしょうか。
吉田:格闘技好きで、柔道をやっていました。
格闘技をやっていて何が良かったかと言いますと、やはり手術の修羅場、
例えばこのひと針で出血を止めなければ患者さんの命が危険になるという状況で、
自分の心に迷いがあっては上手く手が動かなくなるのですが、
武道をやっていたおかけでメンタルが強くなり、そういう場面でも動じることがありません。
肉体は年々衰えますがメンタルは衰えないです。
今でも、窮地においても手が震えないとか、判断を間違わないといった自信はあります。
このような感覚は言葉で言っても伝わらず、やはり修羅場をくぐって育んでいくしかないのだと思います。
手術中に発生する困難を乗り越えるためには
さまざまな代替となり得る手技や方法を日々勉強しておかなければなりません。
一発逆転の良いアイデアが突然思い付くわけはなく、
いろいろな引き出しをふだんから用意しておくわけです。
そしてピンチに陥った時に、最適な引き出しを開ける冷静な判断力が必要です。
看護師へのメッセージ
中:ふだんの努力がいざという時の対処に欠かせないというそのお話もまた、
看護師が参考にすべきことではないかと感じました。
それではまとめとして、看護師へのメッセージをお願いします。
吉田: 看護師さんに望むところは、笑顔が大事ということです。
当院はオープンして2年足らずの新しい病院で、建物は東京で一番きれいなのではないかと思います。
周辺は豊かな緑に囲まれています。
このような環境の中で、私たちと一緒に新しい病院を作っていきましょう。
よろしくお願いします。
インタビュー後記
新人でも、ベテランでも出来る看護の基本でありながら、意識を怠ると忘れてしまいがちな「笑顔」
吉田先生は、単に看護師に笑顔を求めるのではなく、笑顔になれる環境作りやコミュニケーションを日々
行なっていらっしゃるということが分かりました。
病院内で職員の方々とすれ違っても、気さくに声をかけられ、看護部の皆さんには冗談を言って笑わせたりと
実践されている姿も拝見させていただき、感動いたしました。