No.232 県北医療センター高萩協同病院 近藤匡 院長 後編:看護師の成長をサポート

インタビュー

前編に続き近藤先生に、院長就任後の取り組みなどをお聞かせいただきました。

職員との個別面接から改善点をピックアップ

嶋田:職員の方と個別に面接されているとのことですが、どのような話をされるのでしょうか。

近藤:ヒヤリハットの体験や職場の改善点、病院全体に関係することなど、いろいろな意見をいただきます。

また、自分自身でテーマを持ってスキルアップにチャレンジしている看護師が結構多いという印象を得ています。

明らかにすぐ変えるべき重要な指摘を受けることもあり、その場合は直ちに関係部署に改善を指示します。

ただ、中には「今これを現場に伝えたら、私に伝えた本人が特定できてしまうな」と思われる事案もあり、

その場合はあえて少し間をおいてから担当部門に伝えるようなこともしています。

職員の方々がこの面接をどのように感じているのかわかりませんが、

私自身は非常に参考になると感じています。

嶋田:今は職員の方の意見を参考にしながら、やるべきことを模索中といったところでしょうか。

近藤:そうですね。

当院の長所はアットホームな雰囲気にあるのですが、それは注意しなければ、緊張感の欠如に繋がりかねず、

少し調整が必要です。

ただしそれは私一人でできることではありませんので、

現場の協力を得ながら徐々に変えていこうと考えています。

訪問看護を再スタート

嶋田:具体的にはどのような改善を目指していらっしゃいますか。

近藤:NST(栄養サポートチーム)や褥瘡管理にまだ少し改善の余地があるようです。

個人的には誤嚥性肺炎の防止、嚥下サポートなどに関心があり、いまチーム形成に向けて準備中です。

また来春から訪問看護をスタートさせます。

実は当院は以前、訪問看護を行っていたのですが、人手不足と採算面から一旦中止しておりました。

しかし当院は日立医療圏で唯一の地域包括ケア病棟を有し、訪問看護に一定のニーズがあり、

当院が担うべき医療であると考えています。

一旦中止したものを再開するのですから、今度は人手や採算を理由に撤退するわけにはいきません。

万全の体制を整えているところです。

高齢者医療と周産期医療

嶋田:人口がさらに高齢化しますと、訪問看護はますます必要性が高まりますね。

近藤:日本の総人口の高齢化率が2015年時点で26.6%ですが、高萩市は4%高く30.6%で、

県内における「高齢化最先端地域」です。

間もなく3人に1人がお年寄りとなり、さらに2035年には高齢化率が4割を超えると予測されています。

日立医療圏において急性期病棟は比較的充足していますが、回復期や慢性期が足りず、

このような状況では、急性期を過ぎた患者さんをなるべく地域に帰していくことが望まれます。

嶋田:インタビューの冒頭で、貴院の特徴として

高齢医療のほか周産期医療も掲げられていらっしゃいました。

周産期医療の特徴についても少しお話しいただけますか。

近藤:2006年までは医療圏内の日立総合病院が年間1,000件以上お産を取り扱っていたのですが、

一時期の深刻な産婦人科医不足時代に産科医療を中止しました。

現在は再開しているのですが、中止していた時期に当院で周産期医療を開始し、

ひと頃は年間700件近くのお産を扱っていました。

人口減に伴いお産の総数は減っていますが、現在も500件台で推移しています。

今後、現在は非常勤の麻酔科医や小児科医を常勤とし、

緊急の帝王切開や新生児医療により力を入れていきたいと計画しています。

看護師のスキルアップをサポート

嶋田:先ほど「自分自身でテーマを持ってスキルアップにチャレンジしている看護師が多い」と

おっしゃっていましたが、そのような看護師のモチベーションをサポートするような活動はされていますか。

近藤:すでに当院には嚥下サポートとがん化学療法の認定・専門看護師がいますが、

これらの陣容をより拡大したいと考えています。

助産師のアドバンストコースもしかりです。

当院は都内の病院に比べると資格取得に必要な研修会参加などの点で不利な面があることは否めませんが、

できる限り病院としてバックアップしていきたいと考えています。

嶋田:看護師が他院で研修を受けるといった交流はありますか。

近藤:今後はそういった交流を増やしていきたいですね。

今でも厚生連グループの中で異動がありますが、転居や離職によるものが多いので、

これをキャリア形成のための研修目的で行うなど、後押しできればと思います。

マイブームは鹿児島旅行

嶋田:最後の質問ですが、先生のご趣味をお聞かせください。

近藤:今は鹿児島旅行がマイブームです。

大河ドラマの『西郷どん』の影響ではなく、2〜3年前から年に4〜5回行っています。

ふるさと納税も全部、鹿児島県です。

嶋田:鹿児島で何をされるのですか。

近藤:観光スポットを巡る以外に、最近はスタンドアップパドルサーフィンをします。

サーフボードの上に立ってオールを漕ぐスポーツです。

「どうして茨城でやらないんだ?」と聞かれますが、鹿児島にやりに行って、

終わってから焼酎を飲むのを楽しみにしています。

嶋田:面白そうですね。

近藤:あんまり長期間、旅行に出ますと外来や手術に影響しますので、

短期間の旅行を頻繁に行くようにしています。

日帰りの時もあります。

ただ、院長就任後はあまり出かけられなくなりました。

看護師へのメッセージ

嶋田:それでは、看護師へのメッセージをお願いします。

近藤:高萩協同病院の近藤です。

当院では、看護師さん、助産師さんを広く募集しております。

当院のアピールポイントの一つは、NHKの連続ドラマ『ひよっこ』の舞台になった高萩市にあることです。

ドラマをご覧になった方はおわかりかと思いますが、非常に緑があふれている地域です。

当然、高齢の方がとても多く、当院でも高齢者医療を積極的に行っています。

日常、整形外科や消化管などの手術を多数施行しており、外来には多くの患者さんが来院されます。

高齢者医療に関心がある方にとっては非常に勉強になり、キャリアが身につくことと思います。

また、当院は周産期医療にも力を入れており、年間570件ほどのお産を扱っています。

ハイリスク分娩より通常分娩が大半ではありますが、

仲の良い23人の助産師さんが、たいへん明るい雰囲気のなか周産期医療を提供しています。

高齢者医療と周産期医療という、この二つを柱に頑張っていこうとしている病院です。

地理的なことから研修の機会をなかなか得られないといったことがあるかもしれませんが、

そこは積極的に応援していこうと考えていますので、よろしくお願いいたします。

インタビュー後記

茨城県北部にある県北医療センター高萩協同病院。

4月から院長として就任された近藤先生は、

とてもエネルギッシュで、それでいて大変気さくに楽しく話をしてくださいました。

改革の第一歩として全スタッフの面接を始め、

スタッフから直接現場の声を聞くことは、病院の改革の近道であるといえるでしょう。

また院長室のドアを常に開放され風通しをよくすることは、

スタッフとの信頼関係をより強くしていくのではないでしょうか。

高齢者医療、周産期医療、そして再開される訪問看護。

様々なスキルを身につけることが出来るとともに自分のスキルを活かすことが出来るのは、

看護師にとって大変働きがいのある病院だと感じました。

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院紹介

近藤院長インタビュー前編

近藤院長インタビュー後編

Photo by Carlos