No.223 PRAヘルスサイエンス株式会社 小川淳 社長 後編:挑戦とリーダーシップ

インタビュー

前編に続き、海外でのご勤務経験が豊富な小川社長のご経歴を伺いました。

リーダーシップ論など、看護業務にも生かすことができるお話も豊富です。

アメリカ人気質とイギリス人気質

中:アメリカとイギリスで勤務されたとのことでしたが、両国の差異などはございませんでしたか。

小川:アメリカ人は基本的に初対面でも非常にフランクなのに対して、イギリス人は日本人に似ていて、

初対面なのに友達のように振る舞うのはおかしいと考える人が多いように感じます。

言いたいことを遠回りに指摘することも日本人似です。

イギリスにいた時、こんなアドバイスを受けました。

「会議でイギリス人に『あなたの意見は素晴らしく、ほとんど賛成です。ただ少しだけ違う点があります』

と言われたら、それはお前の意見には大反対だと言われていると思え」とのことでした。

中:面白いですね。

そのような多様なコミュニティの中で、しっかり意見を出してそれが受け入れられ、

実績を残して日本に帰ってこられたのですね。

帰国された時は、既に社長就任が決まっていらしたのでしょうか。

小川:当社は昨年6月の設立ですが、設立準備プロジェクトのヘッドとして、

その3か月前に帰国していました。

チャレンジへの期待

中:新しいプロジェクトへの挑戦に不安はございませんでしたか。

小川:不安はありましたが、むしろ「面白そうだな」という期待の方が大きかったです。

このような機会は滅多に得られるものではありませんから。

中:チャレンジを常にポジティブにとらえるパーソナリティーは、

どのようにして培われていったのでしょうか。

小川:海外で住んだことも良い経験になっているのかもしれません。

自分が常識だと思っていたことが全くそうではなく、

あんまり細かいことを考えても仕方がない環境で暮らしていましたから。

それに新しいことにチャレンジしないでいるのも、同じように不安ではないかと思います。

いまだに、アメリカやヨーロッパで流行ったことが

何年か遅れで日本に入ってくるということが続いています。

ですから先ほど申しましたようなCROを活用した医薬品開発が日本にも広まる可能性が高く、

その受け皿となる会社新設にチャレンジするという行為に魅力を感じました。

誰もがリーダーシップを持つべき

中:視野を広く持ち世界の状況と時代の流れをきちんと捉えることで、チャレンジへの怖さが軽減されて、

反対に社会から求められることを事業化するという興味が湧いてこられたのですね。

新会社がスタートして1年強たちましたが、経営者として現在、どのようなポリシーをお持ちでしょうか。

小川:今は時代の移り変わりが早いですから、例えば以前のように5か年計画を立て、

各社員の仕事内容を規定して、計画通りに動かすという方法は、ほぼ成立しないと思います。

もちろん会社全体では同じ方向に進まないといけませんが、

その方向は常に少しずつ変わっていく可能性が大きいです。

そうした中、社員の皆さんが、どのような役職においても

リーダーシップを発揮していくことが大事だと考えています。

リーダーシップというと管理職が発揮するものだと思われがちですが、決してそうではなく、

誰もが持つべきものだと思います。

中:社長がおっしゃるリーダーシップとは、具体的にはどのようなことでしょうか。

小川:言うべき時にはしっかり意見を言うこと、そして説明すべき時には説明責任を果たすことです。

会社で何かの不祥事が明るみに出て調査をすると、

従業員の多くが問題の存在を感じていたという事件が多いですね。

それも個人がリーダーシップを持って発言すれば防げたと思うのです。

中:そうしますと貴社は、どちらかというとフラットな組織でしょうか。

小川:はい。

それが望ましいと思っています。

グローバル展開しているPRA Health Sciences自体も非常にフラットな組織で、

だからこそ急成長しているのではないかと思います。

人間らしい医療を支える看護師

中:看護においても、個々の看護師が気づいたことを声にしないでいることが、

思わぬインシデントに繋がるかもしれませんね。

社長は看護師に対してどのようなイメージをお持ちでしょうか。

小川:看護師さんの仕事は非常に重要だと思います。

専門的な診断や治療は医師が行うことですが、看護師の皆さんに患者さんへ寄り添っていただけることや、

実際の医療行為をサポートしていただけることで、

医療全体を人間的で快適なものに変える役割を担っているように感じます。

仮に近未来、AIが診断し看護師なしで治療することができるようになったとして、

果たして今と同じ効果を得られるかと言えば、恐らくそうはならないのではないでしょうか。

看護師がいるからこそ、人間らしい医療が成立しているのだと思います。

中:ありがとうございます。

最後に社長のご趣味を教えていただけますか。

小川:子どもが小学生、中学生とまだ小さいので、サッカーの応援など、

お父さんとしての仕事で休日の時間を使っています。

自分自身のことではランニングをしています。

シカゴにいる時にはシカゴマラソンにも参加しました。

参加する前は「マラソンの何が楽しいんだろう」と思っていたのですが、

走ってみて素晴らしさを実感しました。

42.195キロを大勢の人と一緒に走り、しかもその間ずっと街頭で誰かが応援してくれているという経験は

なかなかできません。

一人で走っているのに大きなチームの中にいるような面白いスポーツだと思います。

中:そうすると普段は皇居の周りをランニングされているのですか。

小川:そうですね。

皇居周辺も必ず誰かが走っていますから、楽しいランニングです。

中:ご自身の健康管理にもなりますね。

本日は医薬品開発の詳しいお話を通して、

看護師にとって貴重な示唆となる情報を教えていただきました。

ありがとうございました。

インタビュー後記

治験の役割と看護の未来について貴重なお話をいただきました。

小川社長の視点や行動力は、看護師にとって、大きな指針となると感じます。

未来を感じながら、現実を直視し、やるべき役割を着実にこなす。

グローバルな視野で、全体を俯瞰して捉えていらっしゃる小川社長が目指す治験の未来。

看護との連携はさらに深まるかもしれません。

小川社長インタビュー前編

小川社長インタビュー後編

Interview with Kubo & Araki