No.218 宇都宮リハビリテーション病院 三澤吉雄 院長 後編:リハビリ病院の看護師

インタビュー

前編に続き三澤先生に、リハビリ病院における看護師の役割や、先生のご趣味などをお尋ねしました。

相手に正しく理解される話し方

 

中:貴院の院長に就かれたのはいつでしたか。

三澤:まだ半年しか経っておりません。

職員の顔と名前を覚えている最中です。

中:大学からこちらに移られて、どのようなことを感じられましたか。

三澤:当院で最も患者さんに長く接しているのは理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などの療法士です。

そのスタッフが非常に良く教育されていて、患者さんからの良い評価や感謝の声が私の耳に届いてきます。

私が赴任した時点でそのような素晴らしいスタッフがいたことで、私はたいへん助けられています。

私があえて何か言うのであれば、患者さんの前では絶対に専門用語を使わないでほしいという一点です。

「必ず一般的な言葉で説明しなさい」とたびたび伝えています。

中:なぜそこまで厳格に医学用語の使用を回避する必要があるのでしょうか。

三澤:以前、医療訴訟の証人をした経験からです。

その案件ではどうやら医師は間違いなく患者さんへ説明し同意を得た上で医行為を行ったようなのですが、

その説明内容が患者さんのご家族に理解されていなかったのが訴訟に至った原因のようでした。

中:患者さんへの説明だけでなく、スタッフ同士の連絡においても、

言ったはずのことが伝わっていなかったということが起こりがちですから、

相手が理解できるように話すことは、コミュニケーションを取る上で大切なポイントですね。

第一印象の違和感を無視しない

中:次に、先生がふだんのマネジメントで注意されていることをお聞かせいただけますか。

三澤:何かおかしいと感じたことはあやふやなままにせず、何が問題なのかを明確にし、

直ちに改善するようにしています。

最初に感じた印象をおろそかにしないことが大切です。

それを大切にしないと、すぐにその環境に慣れてしまい、

何か問題が隠れている可能性があってもそれを意識しなくなってしまうからです。

ですから私は違和感を感じた時にはその時点でスタッフに注意しますし、

スタッフ同士でもすぐに声を掛け合うように指導しています。

中:スタッフの教育や指導方法については、教授をされていたご経験が役立っていますか。

三澤:指導の経験はありましたが、人に教えるということは難しく、

すぐに効果が現れることは少ないですね。

叱っていい人と、叱ったら逆効果になってしまう人がいて、

これだけ職員数が多いととても「オーダーメイド指導」は無理です。

あんまり怖い顔をせず、良い点はしっかり褒めるといった一般的な方法しかできません。

リハビリ病院の看護師の役割

中:看護師についてお尋ねいたします。

貴院では理学療法士のスタッフ数が多いかと思いますが、看護師にはどのようなことを期待されていますか。

三澤:急性期病院と回復期病院・慢性期病院とでは、看護師の役割が自ずと違ってきます。

特に当院のようなリハビリ病院において、リハビリそのものは理学療法士が担当しますが、

それをサポートするような役割を看護師に期待しています。

患者さんがリハビリ室から病室に戻り、理学療法士の目が離れた時にどの程度からだを動かしているか、

何に困っているかを観察し、次のリハビリにフィードバックさせるといったことです。

また急性期病院では、患者さん自身による服薬管理があまりされていないと思います。

しかし回復期病院では患者さんが自宅へ帰ることを前提に治療しますので、

入院されている間にご自身で薬の正しい使い方を覚えていただく必要があります。

そういった療養指導を看護師に担っていただきたいです。

中:ありがとうございます。

人生100年時代と言われる今、リハビリ医療はより重要になってきますね。

中:次に、貴院の将来についてお尋ねします。

これからどのようなことに力を入れていかれますか。

三澤:やはり地域における当院の存在感を高めていくことでしょうか。

これからは病院に来院する患者さんだけを相手にしていて良い時代ではなく、

こちらから出ていくことも必要だと思います。

盆踊り大会に参加

中:地域住民の方々の声を聞くということですね。

三澤:当院では年2回地域の代表の方に来ていただき、お話をお伺いする機会を設けています。

また去年からは地域の盆踊り大会に参加するようにいたしました。

それを始めてから、地域の方との結びつきがガラッと変わってきたと、以前からいる職員は言います。

今年は私も盆踊り大会に参加しました。

中:最後に先生のご趣味をお聞かせください。

三澤:ゴルフと声楽ですね。

声楽は大学定年1年前から習い始めました。

11月の発表会に向けて、家内とともに目下トレーニング中です。

楽譜を読めないので、ひたすら聞いて覚えています。

中:お若い時から音楽をやられていたのですか。

三澤:学生の時はグループを作ってロックやフォークのボーカルをやっていました。

今も家内と二人でカラオケに行って、3時間で50曲くらい歌うことがあります。

あとは水泳ですね。

個人メドレーで200メートル泳げる状態の維持を自分のノルマにしています。

患者さんに感謝される病院

中:それでは改めて看護師へのメッセージをお願いします。

三澤:宇都宮リハビリテーションの三澤です。

当院は病院名にありますように、リハビリを専門とする病院です。

歩くことができない患者さん、手を使えない患者さんの多くが、

退院するまでにそういった障害を克服されていきます。

涙を浮かべて感謝してくださる方が非常に多くいらっしゃいます。

このような当院でぜひ皆さんに働いていただきたく思います。

よろしくお願いいたします。

インタビュー後記

明るい光が降り注ぐ病院。

三澤先生は、スタッフや学生の皆さんにも気さくに語りかけていらっしゃり、とても雰囲気の柔らかい印象を受けました。

一方で、理念に基づいた経営や、先生のお考えになるポリシーははっきりと打ち出されています。

待ちの姿勢ではなく、病院も自ら外に出る、アピールするという内容のお話に

先生の力強さと必要とされる病院の在り方を教えていただきました。

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