インドネシアの首都ジャカルタにある日本語学校、Mirai Gakuin Japanese Language Centerでは
介護者養成機関と協業し、日本語のできる介護スタッフを育成しています。
林延行様にその取り組みをお伺いしました。
中:今回はジャカルタの日本語学校の林延行様にお話を伺います。
どうぞよろしくお願いいたします。
林:よろしくお願いします。
中:まず、貴校の特徴を教えください。
林:ジャカルタにおける日本語学校として、当校の現CEOが開設しました。
現在は、介護スタッフを海外へ派遣する施設と提携し、日本での介護者需要に応え、
いわゆる「送り出し機関」的な役割も担っています。
中:インドネシアで日本語を学び、日本で介護の仕事をされようとする生徒さんは、
どのような背景からそのような意思を持たれるのでしょうか。
林:いま当校で募集している生徒は、看護師養成の専門学校や短期大学を出た方がほとんどです。
ですからもともと、それなりに看護や介護に興味がある方が多いです。
ただ、それだけでは「なぜ、わざわざ日本へ?」という疑問が残ります。
その答えはやはり経済格差だと思います。
中:自分のスキルを日本で生かし、同時にお金も作れるということですね。
林:地方出身の生徒が多いという背景もあります。
都市部出身で経済的に恵まれている方は、やはりIT系など華やかな分野を希望し、
介護や看護に興味を持って我々のような学校に入学してくる人は、
父親や母親、ご家族の生活を助けたいという気持ちを持っている方が多いです。
中:そうしますと、医療・介護の分野で働く時に最も必要とされる「優しさ」という部分では、
貴校の生徒さんはもう既に持ち合わせていらっしゃるということですね。
林:まさに、そういう気がします。
話をしていてもすごく優しいといいますか、周りのことに気がつき、すぐ手を貸してくれる、
そういう生徒が多いと感じます。
中:生徒さんの中には、日本語に触れるのが初めてという方もいらっしゃいますか。
林:恐らく80~90%は初めてではないでしょうか。
中:そういった方々に対して日本語や日本の文化を一から教えていく上で、
難しいとお感じになることはございますか。
林:インドネシアの中にも中国系の人と、昔からいらっしゃった人がいます。
中国系の方はやはり漢字を少し理解されているので、覚えが早いという印象があります。
もちろん中国の漢字と日本の漢字は全く同じではなく、意味が異なることも少なくありません。
しかし、何となくイメージを作る手がかりにはなるようです。
中:テキストはどのようなものをお使いですか。
林:『みんなの日本語』というテキストです。
世界中の日本語学校で標準的に使われているようです。
中:生徒さんのレベルはいかがでしょうか。
日本語能力試験のNでいうと、いくつぐらいですか。
林:先ほども申しましたように、日本語に全く触れていない方々が来校しますので、
ほとんどは『みんなの日本語』の初級からスタートし中級へと移行していきます。
初級の時は日本人が講師になるよりも、インドネシア人でN3・N2レベルのスタッフが、
インドネシア語と日本語を織り交ぜて教えた方が効率的なようです。
レベルがある程度進んでいきますと、日本人スタッフの出番です。
中:林様ご自身も教えることがあるのでしょうか。
林:ときどき「ちょっと手伝って」と言われて教えています。
中:こちらに住まわれて何年ぐらい経ちましたか。
林:もう20年ほど経ちます。
出身は東京です。
兄がインドネシアでソフトウェア会社を事業化していて、
その会社で日本人スタッフのコンピュータ業務のサポートをしていました。
当時はWindows95の時代ですから、まだメールやWordができない日本人ばかりでした。
その仕事を続けているうちに、私は寒さが嫌いなものですから、そのままこの国にとどまっています。
中:そうしますと奥様はインドネシアの方ですか。
林:はい。当校を立ち上げたCEOです。
中:こちらで知り合われてそのままご結婚されたのですね。
インドネシアは林様にとって運命的な国ですね。
インドネシアの方の性格といいますか、気質に特徴はございますか。
林:インドネシアの方は基本的に優しいです。
インドネシアに来た日本人がよく「みなさん笑顔が素敵ですね」と私に言うのですが、
私も昔からそう思っています。
人に迷惑をかけたくないと考える美徳もあります。
たぶん気候的な関係もあると思います。
日本でも北国と南国とで気質に差があるように、温かいこの国では人々が陽気なのではないでしょうか。
だからこそ優しさが自然に笑顔に現れるのだと思います。
後編に続く
シンカナース株式会社 代表取締役社長
看護師として勤務していた病院において、人材不足から十分な医療が提供出来なかった原体験を踏まえ「医療の人材不足を解決する」をミッションに、2006年に起業。 現在、病院に対しコンサルティングおよび教育を通じた外国人看護助手派遣事業を展開。25カ国以上の外国人看護助手を育成し、病院へ派遣することで、ミッションを遂行している。 東京都立公衆衛生看護専門学校 看護師 東洋大学 文学部 国文学科 学士 明治大学大学院 グローバルビジネス研究科 経営管理修士(MBA) 日本大学大学院 総合社会情報研究科 総合社会文化博士(Ph.D.) ニュージーランド留学 帝京大学医学部附属病院 東十条病院 三井住友銀行 元東京医科歯科大学非常勤講師 元同志社大学嘱託講師 元日本看護連盟幹事 元東京都看護連盟幹事 日本看護連盟政治アカデミー1期生 シンカナース株式会社/代表取締役社長 著書 『わたしの仕事シリーズ2 看護師』新水社 『医師の労働時間は 看護業務の「分業化」で削減する』幻冬舎 『外国人看護助手テキストブック』幻冬舎