災害時の医療チーム:DMAT

コラム

ここ数年、災害医療やDMATという言葉をニュースで良く耳にしますが、みなさんは、DMATについてどこまでご存じでしょうか?また、DMATという言葉を初めて聞く人や、聞いたことあるけど何をやっているの?という方のために、DMATについて説明したいと思います。

DMATとは

DMATとは「災害急性期に活動できる機動性を持ったトレーニングを受けた医療チーム」と定義されており災害派遣医療チーム Disaster Medical Assistance Team の頭文字をとって略してDMAT(ディーマット)
と呼ばれています。医師、看護師、業務調整員(医師・看護師以外の医療職及び事務職員)で構成され、大規模災害や多傷病者が発生した事故などの現場に、急性期(おおむね48時間以内)に活動できる機動性を持った、専門的な訓練を受けた医療チームです。全国(47都道府県)にDMATチームが存在しており、783機関がDMATチームを保有しています。沖縄県内では16病院がDMATチームを保有しています。

DMATの始まりは、1995年におきた阪神・淡路大震災が起源となっています。 阪神・淡路大震災で、初期医療体制の遅れが考えられ、平時の救急医療レベルの医療が提供されていれば、救命できたと考えられる「避けられた災害死」が500名存在した可能性があったと報告されています。この阪神・淡路大震災で災害医療について多くの課題が浮き彫りとなり、この教訓を生かし、各行政機関、消防、警察、自衛隊と連携しながら救助活動と並行し、医師が災害現場で医療を行う必要性が認識されるようになりました。
「一人でも多くの命を助けよう」を合言葉にと厚生労働省により、災害派遣医療チーム、日本DMATが平成17年4月に発足しました。

DMAT指定医療機関になるまで

当院は平成26年度の2月にDMAT養成研修へ参加しました。

研修は4日間あり、災害医療の座学や災害時情報システム(EMIS)の使用方法、無線機の扱い方、過去の災害から学ぶべきことや、模擬傷病者を使用したトリアージ訓練や治療、衛星電話の使い方など多岐にわたる研修で、試験に合格して初めて隊員になることができます。

沖縄県は離島県であるため、大規模災害時に他県からの応援が来るのに時間を要します。県内ほとんどの救急告示病院がDMAT指定医療機関の指定を受けており、当院も災害時に対応や行動ができるようにとのことで県へ申請をして指定医療機関となりました。DMAT研修を受けるためには、各都道府県の推薦がなければ参加はできません。養成研修への参加を1年以上かけ県へ申請をして、書類審査を経てようやく研修に参加できた経緯があります。当院は現在隊員5名(医師2名、看護師2名、業務調整委員1名)が在籍しており、私はその中の看護師として活動しています。DMAT隊員は月に1回、会議をして院内の災害訓練に向けた準備や、打ち合わせなどをおこなっており、普段から連絡は取るようにしています。また、通常の医療活動でも診療を一緒に行うので、しっかりとコミュニケーションは取れています。通常医療からしっかりコミュニケーションを取ることが大切です。

DMATの専門性

災害時には赤十字や医師会の災害チーム(JMAT)など多くの医療機関が支援に入ります。

DMATは48時間以内に被災地に入り、現場の医療だけでなく、災害時に多くの患者さんが運ばれる、被災地の病院機能を維持、拡充するために、その病院の指揮下に入り病院の医療行為を支援させて頂く病院支援なども行います。また、大地震で多数の重症患者が発生した際に、平時の救急医療レベルを提供するため、被災地の外に搬送する、広域医療搬送など、機動性、専門性を生かした多岐にわたる医療的支援を行います。広域搬送は航空機(自衛隊機)を使用して搬送をします。搬送前に航空機に乗せる前の処置をして送り出すDMAT、搬送時に一緒に機内で治療を継続するDMAT、受け入れ先で傷病者を受入れる(被災地域外)のDMATも必要になり、活動は多岐にわたります。

 

また、DMAT隊員には下記の自動待機基準が設けられています。

①東京23区で震度5強以上の地震が発生した場合 

②その他の地域で震度6弱の地震が発生した場合 

③津波警報(大津波)が発表された場合 

④東海地震注意報が発表された場合 

⑤大規模な航空機墜落事故が発生した場合 

上記項目に該当する場合は出動する可能性があることを考慮し、情報収集や隊員どうし連絡を取り合います。

私が経験した上記の該当する項目は、熊本地震がありました。待機要請、出動要請と連絡が入り実際に出動もしました。熊本地震での活動は今後掲載したいと思います。

災害医療に関連する記事はコチラから

災害医療における看護師・病院の対応力

平時からの他機関との連携