前回DMATについてのコラムを掲載いたしましたが、災害時には多数の機関が活動します。組織によって活動内容や活動方針も異なります。
そんな多数の関係機関が災害時にはどさっと集まるわけですから、他機関の活動内容を把握していなければスムーズな活動や災害支援ができなくなります。そこで今回はDMATにおける平時の時の関係機関との連携を紹介したいと思います。
災害医療に関わるDMAT隊員は、平時の時から消防関係者や自衛隊、県と連携を取り、顔の見える関係を構築しておくことが必要です。と言っても、簡単に顔の見える関係を構築するのは難しいのも事実です。定期的な訓練に参加することで、各機関の対応や動きがわかってきます。訓練はさまざま機関が主催して実施されています。政府主催の防災訓練や沖縄県総合防災訓練、自衛隊主催の訓練や、国土交通省大阪航空局が主催する那覇空港での訓練は毎年実施されています。
また、今年度からは海上保安庁主催で大型旅客船における災害訓練も実施予定となっています。
そのような訓練へ参加することで、関係機関の動きや、どの程度の災害まで対応可能なのかを知ることができます。そして何回か顔を合わすことで顔の見える関係性を構築していくことができます。
訓練への参加ですが、当院では日勤扱いで参加させてもらっています。勤務保障をしっかりしてもらうことで、訓練中に負傷(負傷しないようにするのは当たり前ですが)してしまった場合でも、勤務内ですので病院が対応してくれるように整備を致しました。
多数の関係機関が関わる災害医療ですが、消防と医療は平時においても、搬送受け入れ業務でかなり多くの関わりを持ちます。救急隊とは普段の搬送業務の際に、現場の状況から考えた疾患や、来院後の治療状況などを通して振り返りをおこなっています。例えば、現場で低血糖が疑われ、救急隊により血糖測定を実施。低血糖を認めたため医療機関へブドウ糖投与の指示要請がありました。救急隊の判断で、現場で静脈路確保とブドウ糖投与を実施することを選択しましたが、結局静脈路確保は実施できず、接触から搬送に20分以上要していました。このような症例では車内収容に時間を要しないのであれば、車内収容後に搬送しながら、静脈路確保を実施しても良いのではないかとディスカッションしました。具体的な振り返りや日常会話をすることで、顔の見える関係性を構築し、より良いコミュニケーションが図れるようになります。
しかしながら、搬送直後などは処置や診察に手を取られているため、すぐに振り返りをできないことも多々あります。そんな時は、処置がいったん落ち着いて、まだ救急隊が病院にいる場合はすぐに振り返りをし、病院を引き上げている時は、別の傷病者を搬送してきたときに、前回の振り返りを実施しています。
また、逆に救急隊が病院に求めている事や、受け入れの際に病院にやってほしいことなどの意見もあります。このように、普段の搬送業務の中からお互いで意見や話し合いをすることで、顔の見える関係を構築することができます。
シンカナース株式会社 代表取締役社長
看護師として勤務していた病院において、人材不足から十分な医療が提供出来なかった原体験を踏まえ「医療の人材不足を解決する」をミッションに、2006年に起業。 現在、病院に対しコンサルティングおよび教育を通じた外国人看護助手派遣事業を展開。25カ国以上の外国人看護助手を育成し、病院へ派遣することで、ミッションを遂行している。 東京都立公衆衛生看護専門学校 看護師 東洋大学 文学部 国文学科 学士 明治大学大学院 グローバルビジネス研究科 経営管理修士(MBA) 日本大学大学院 総合社会情報研究科 総合社会文化博士(Ph.D.) ニュージーランド留学 帝京大学医学部附属病院 東十条病院 三井住友銀行 元東京医科歯科大学非常勤講師 元同志社大学嘱託講師 元日本看護連盟幹事 元東京都看護連盟幹事 日本看護連盟政治アカデミー1期生 シンカナース株式会社/代表取締役社長 著書 『わたしの仕事シリーズ2 看護師』新水社 『医師の労働時間は 看護業務の「分業化」で削減する』幻冬舎 『外国人看護助手テキストブック』幻冬舎