No.148 林和代様(平塚十全病院)後編「臭いのしない病院」

インタビュー

前編に引き続き、平塚十全病院の林看護部長へのインタビューをお届けいたします。

ユマニチュードをとり入れる

貴院の看護理念を実践するために心掛けていることはございますか。

:当院は「心やさしい看護と行き届いた介護の安らげる施設となり、

患者様一人ひとりに応じた療養生活を、私たちのチーム医療で実現すること」をモットーにしています。

療養型の病院ですので患者さんのほとんどが長時間ベッド上にいらっしゃいます。

そのため私自身は、ユマニチュードの考え方を大切にしています。

ユマニチュードはフランスで始められた認知症看護の新しいかたちで、

今では精神科や小児科にも応用されています。

見つめる、触れる、話しかける、立つように支援するという4つを基本に患者さんに関わります。

当院の患者さんはほとんどが無言の方が多いのです。病気のために上手に話すことができないなど、

長期間の社会的遮断のために話をされなくなっている方もいます。

そういう方たちに対し、ユマニチュードに基づき、

目を見て、話しかけ、触れる時は声がけをしながら優しく触れるといったことを心がけています。

スタッフの反応はいかがですか。

:既に各病棟の看護師が自分の目標設定にユマニチュードを入れて実践しています。

話せなかった患者さんが「ありがとう」と言ってくれたといった報告を受けると、とても嬉しく感じます。

看護と看護助手・介護者の同時研修

看護補助者の役割についてお聞かせください。

:当院には看護師と看護補助者、院内では介護職と言っていますが、

その介護職には主に生活面からの援助をしていただいています。

例えば食事介助やオムツ交換、体位変換、入浴の介助などです。

夜間帯にも介護職の方が看護職と協力し合って働いています。

そして患者さんの様子がいつもと違う時には、介護職の方もはっきりと報告してくださいます。

看護補助者がある程度、患者さんの全身状態を見られるようになる可能性もありますか。

:患者さんの一番そばで働く限り、欠かせない存在になり得ます。

患者さんのご家族が患者さんのわずかな変化に最も敏感であるのと同じです。

職員教育も、看護と介護をできるだけ一緒に行うようにしています。

なぜなら、患者さんのケアという基本的なところでは看護と介護に違いはないからです。

メンバーシップ研修、リーダーシップ研修、倫理研修も一緒に行っています。

実際に双方で協力し合わなければ看護職は仕事ができません。

長年勤務されている介護スタッアの場合、患者さんの状況を若い看護師より良く把握されています。

若い看護師が介護スタッフに教わりながら成長し、教えられることがなくなった時に、

看護師としてまずは一人前と呼べるようになるのだと思います。

看護師と看護補助者、介護スタッフの方の仲が良いということでしょうか。

:そうだと思います。

同時研修は両者のコミュニケーションにも役立っているはずです。

例えば倫理研修では事例を提示し互いに30~40分かけて討論してもらいます。

このような両者同時の研修は、他院ではあまり行っていないようです。

入浴、褥瘡予防、口腔ケア

病院のアピールをお願いします。

:当院は、小高い丘の上にあって、景色や環境がとても良いです。

そして、ここにいる患者さんたちに関する私の自慢と言えば

「患者さんの肌がとてもきれい」という点です。

これはとても自慢です。

週に2回の入浴ですが、本当に肌がきれいです。

褥瘡のある患者さんが入院されてきた場合、看護・介護双方のスタッフが細心の注意を払ってケアをしています。

しっかり入浴していただき循環を良くし、皮膚のケアをすることが褥瘡の治癒に貢献しています。

また、口腔ケアもたいへん充実しています。

医学的には誤嚥性肺炎の予防という視点で注目される口腔ケアですが、

看護の面からは口臭を防ぐという効果も無視できません。

当院の病棟に来ていただければおわかりいただけると思いますが、ほとんど臭いはしません。

それだけ口腔ケアや保清に力を入れていると言えます。

 

ご自身で食べられる患者さんには看護補助者が行い、

全く食事をとれない経管栄養の患者さんは看護師が行うよう、分担しています。

一つの自信が全てにつながる

病棟独特の匂いがないという特徴は素敵なことですね。

:当病院一番のアピールポイントだと思っています。

看護補助者、介護スタッフには他にも色々な工夫をしていただいています。

例えば爪切りでは患者さんの爪を切る行為はわずかですが危険も伴うので、

ヤスリで削ろうという案が出されたことがあります。

しかしそれもなかなか大変だから電動ヤスリで爪をきれいにして差し上げようという案にまとまり、

師長経由で私に提案がきました。

このような院内の雰囲気を大切にして、今、看護・介護スタッフの中から、

さまざまな達人を作りたいと考えています。

口腔ケアの達人や、オムツ交換のコンシェルジュのような人を育てていきたいです。

誰でも、何か一つでも自分が自信をもてるスキルがあると、他のことにも積極的になれると考えています。

趣味についてお聞かせください。

:1日1万歩を目標に、毎朝5時ごろに起き自宅の周り1時間ほど歩いてから出勤しています。

趣味は月1回のハイキングです。

一昨年は富士山の麓を歩いて一周しました。

つい先日は伊豆高原に行ってきました。

看護部長からのメッセージ

:自分が「看護師になりたい」と思ったそのきっかけや強いイメージが、みなさんおありでしょう。

それを大事に持ち続けていくと、必ず自分のやりたかったケア・看護にたどり着くのだろうと思います。

人との関わりの中で成長し続けることができるのは、看護職が一番だと思います。

ぜひ頑張ってください。

シンカナース編集部 インタビュー後記

平塚十全病院は丘陵地にあり、美しい自然に恵まれた療養型の病院です。

ご自身の失敗を糧に先輩から技術を学び責任の幅を広げていった林看護部長。

ポジティブ思考で苦労や不安さえも前向きに解決していくお姿が素敵でした。

師長への昇進に際して看護部長が時間を割いて師長の心得を一対一で伝授されたからこそ、今の素敵な林看護部長があると思いました。

林看護部長、この度はお忙しい中貴重なお話を誠にありがとうございました。

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