No.134 病院長 木村健二郎様(JCHO東京高輪病院)前編:都心型の地域医療

インタビュー

東京品川に位置する国際色豊かな病院の院長である木村先生。

問題解決、未来への取り組みなど経営のヒントになるお話を沢山いただきました。

 

内科は全ての基本

 

医師になられた動機は何でしょうか。

 

木村:立派な動機はありません。

祖父が銀座で耳鼻科を開業しておりました。祖父の夢は、子供が医師になり総合病院を作ることだったと聞いています。

父は医師にはなりませんでしたが、祖父の影響か分かりませんが、幼少期から何となく自分は医師になると思っていました。

 

 

東京大学医学部に進学後、診療科を決めた理由を教えてください。

 

木村:学生時代から内科に進もうと決めていました。

内科は全ての医療の基本であり、様々な病気の本態を学び、研究できるからです。

腎臓を専門に選択したのは、研修医時代に偽性アルドステロン症という低カリウム血症をきたす疾患の患者さんを受け持ったことがきっかけです。

腎臓・高血圧研究班の研究室の先生にご指導戴きながら初めて内科学会の地方会で報告しました。

その時に腎臓の働きの面白さに魅せられました。

 

デンマークへ留学

 

 

海外留学で思い出に残ることはどのようなことでしょうか。

 

木村:デンマークでは基礎研究を行ないました。

非常に良い指導医に恵まれました。研究費は自由に使わせていただき研究助手も付けていただきました。

2年間で論文を5つほど作成しましたが、その後も学位論文にまとめるまでサポートしてくださいました。

 

 

当時、子どもが3歳と5歳でしたので、家族全員でデンマークへ行きました。若かったこともあり楽しく過ごすことが出来ました。

 

 

指導医の運転で家族全員でデンマークからスペインまで自動車旅行したことなど楽しい思い出です。

 

臨床・教育・研究

 

経営者になる経緯について教えてください。

 

木村:大学の教授は教員でもありますので、臨床医と研究者だけでなく教育者の面も持ちます。

大学病院の勤務医に対して常に言ってきたことは「大学病院で勤めるということは、臨床と教育と研究の

「三足のわらじを履く」

ということだ」ということです。

私自身、そのようにしてきました。

しかし、病院の副院長になるまでは、病院の経営ということはほとんど実感しませんでした。

 

 

聖マリアンナ医科大学病院で副院長として、初めて病院経営を間近に見ることになりました。

当時の院長が「院長と副院長は全然違う」とおっしゃっていたのが印象に残っています。

その言葉通り、現在、東京高輪病院では、院長として病院全体を見て、病院の全責任を背負い判断していく必要があるので、副院長とは全く立場が異なるということを思い知らされました。

 

大学病院から地域に貢献する病院へ

 

東京高輪病院についてお聞かせください。

 

木村:東京高輪病院は239床の規模で、地域の病院として地域の患者さんを診る役割があります。

地域の医療施設や介護施設、公的機関、行政などと密接に連携しながら、地域に根差し、地域に必要とされる病院を目指しています。

 

 

身近な地域の病院として、原則全ての急患を受入れています。

地域の病院の重要な役割の一つに、思わぬ病気や怪我に対して早急に対応ができることがあげられます。

そのため救急には力を入れています。

年間3500~4000件ほどの救急車を受入れています。

この規模の二次救急対応の病院としては多い受入れ数だと思います。

 

地域へ貢献する病院としての具体的な取り組みはございますか。

 

 

木村:平成26年4月に、船員保険会の病院から地域医療機能推進機構という独立行政法人の傘下に入り

「地域医療」

を社会的使命としてより明確に掲げています。

『地域包括ケアの要として、安心して暮らせる地域づくりに貢献する』

ことが当院の生きる道です。

2025年の超高齢化社会が近づくにつれ、入院するベッド数の不足が考えられます。

人生の最期の時や、高齢によるフレイルで入院するのではなく、可能な限り住み慣れた地域で暮らしていただける環境を構築することがコンセプトです。

つまり、異常があれば入院し、治療し回復したら地域に戻る。その際、訪問診療、訪問看護、訪問介護、そして行政などの関係各所が連携して、地域で患者さんを診て支援していくことになります。

 

 

当院は239床の急性期の病院でしたが、平成26年10月から49床を地域包括ケア病棟に機能転換しました。

当院の急性期病棟からの入院もありますが、市中の急性期病院で治療後、

すぐに帰宅が難しい方が当院の地域包括ケア病棟に入院するという連携が求められています。

包括ケア病棟のもう一つの重要な役割としては、在宅の患者さんが一時的に体調を崩され、

急性期病棟に入院するまでもないけれど、在宅のままでは不安がある」といった場合に入院していただく、といった地域との連携があります。

また、今年の6月から、訪問看護ステーションも開設します。

これにより急性期から回復期そして在宅まで一貫して診ていくことが可能になります。

そして、周辺の急性期病院、かかりつけ医、在宅医、また訪問看護ステーション、行政などと連携して、域医療の発展に貢献していきます。

 

後編へ続く

 

Interview Team