No.168 病院長 藤田宜是様(JCHO横浜中央病院)後編:良い点は他院に真似してほしい

インタビュー

前編に続き、横浜という都市の多様性、その中でいかに地域医療を向上させていくのか、

期待される看護師像などを語っていただきました。

病院の外で健康講座を開催

 

中:やはり横浜という土地柄、もともと多様性を受け入れる風土はあるだろうと想像できますが、

病院としてそのような多様性を受け入れていくことは、一筋縄ではいかないとも思います。

いかがでしょう。

藤田:当院の理念である「温かい心と気配りの医療」を病気で苦しむ人々に

あまねく提供しようという気持ちを院長が持ち続けることが第一です。

そして一緒に働いている職員も同じ考えを持っていることが大切です。

当院の場合、私の指導によるものではなく、院長就任時点で既にしっかり形成されていました。

中:多様性、ダイバーシティの重要性が最近よく言われるようになりましたが、

それを医療のなかで実践されていらっしゃり、非常に特徴的な病院だと感じました。

藤田:なるほど。

あまりそういう見方をしていませんでしたが、その通りかも知れませんね。

私としては、自分が思い描いていたイメージのまま実現できているので、満足しています。

当院の特徴をもう一つ挙げますと、山下公園のある山下町の町内会館で、

月1回、地域の方を対象に健康講座を開催しています。

熱中症の話などをみなさん熱心に聴いてくださり好評です。

以前「病院の中で開催される健康講座はよくあるが、出張して来てくれるのはお宅だけだ」と

お褒めの言葉をよくいただきました。

そこで近隣の医療機関の院長にもお勧めして、最近では他院でも同じことをするようになりました。

やはり、地域医療を推進するには、良いことは周辺病院にもやってもらわないといけません。

一人で頑張っていたら、そのうち力尽きますから。

一隅を照らす

中:横浜を良くするために、貴院で工夫されたことであっても、

あえて他院にもアイデアを提供しているのですね。

藤田:一隅を照らすという感覚です。

やがて横浜が良くなれば、それを真似して日本全体が良くなっていきます。

目に見える結果が現れるのが、どれだけ先になるかわかりませんが。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

中:先ほど職員のモチベーションが高いというお話がありましたが、

看護師のモチベーション維持のために、何かされている活動はございますか。

藤田:当院には附属の看護学校があり私はその校長も務めていて講義も行うのですが、

学生にしばしば伝えることは、

看護の仕事はオペ室で医者と共同で最先端の手術をするのがメインではないということです。

それよりも例えば訪問看護で1軒1軒患者さんのお宅を回り、

さまざま面倒を見るといったことがこれからのメインになると看護師の姿勢を教えています。

患者さんから見た医療構造を意識する

中:それは、普段からのコミュニケーションが大切だという意味でしょうか。

藤田:今、看護に関しては特定行為や認定看護師などの動きが活発です。

当然、当院も法人としてクリニカルラダーを作り、教育体制を整えています。

全国に57病院ありますから、高度医療の看護をしたいのであればそれも可能です。

しかし、これからの看護師に対するニーズはそればかりではありません。

学生には「医者はいまだに病気のことにしか目を向けていないけども、

君たちは患者さん本位になって一生懸命考えることで、患者さんの側からみたら、

看護師が医療の中心的存在になっているんだ。今はそういうことが要求されている時代だ」と

言っています。

中:これからの時代、看護師はこういう存在になってほしいとったお考えを

もう少しお聞かせいただけますか。

藤田:当院は「温かい心と気配りの医療」を理念に掲げています。

患者さんの気持ちになっていろんなことができることは、本当に大事なことです。

ただし、患者さんはご自身の都合を優先して医療者に訴えを述べますから、

全て応えることが真に患者さんのためになるかどうか熟慮する必要はあります。

若い看護師には「自分が行ったことで最終的に患者さんから感謝されるようにすべきで、

わがままを聞くのとは違う」という話をよくします。

この辺りを勘違いして、従属的に患者さんの言うことを聞けば良いと思い込んでいる看護師になってほしくありません。

また、看護師には「なにか困ったことがあったら、誰に聞いてもいい」と伝え、

実際に院長室のドアは24時間365日あけてあり、いつでも相談にのれるようにしています。

直属の看護師長、看護部長には言えないことでも耳を傾け、客観的な目でアドバイスしています。

仕事のどこかに自己犠牲があれば長く続けられなくなりますが、しっかり対応し考えて

ウィン-ウィンの関係を築ければ、1+1が2以上になり、より良い勤務環境になっていくと考えています。

看護師へのメッセージ

中:既に今までのお話の中にかなり散りばめられていたのですが、

最後に改めて看護師へのメッセージお願いします。

藤田:看護師の皆さん、また、もうすぐ看護師になる皆さん、こんにちは。

当院では、未来の医療を支える看護師さんに、大いに期待を寄せています。

皆さんが、これからの社会で活躍できるようになることを考えて、影に日向にさまざまな指導をしています。

具体的には、最初の一年間でどれだけ一人前になれるかがたいへん重要です。

そして最初の三年間で、どこに勤めても恥ずかしくない一人前の看護師に育てられるように頑張っています。

そういった面は保証しますので、皆さんのなかで一緒に頑張りたいと思う人がいらっしゃれば、

見学だけでも良いので、ぜひ見に来てください。

歓迎します。

シンカナース編集長インタビュー後記

横浜、中華街エリアにある病院。

立地的に、外国の方々が受診することも多く、全国の病院から視察に来るほど国際化の対応をいち早く取り入れていらっしゃいます。

横浜が変われば日本全体が変わる。

この想いがあるからこそ、多くの見学を受け入れ、全国から学びたいという病院へ情報提供を行っているとのこと。

藤田先生は、終始穏やかな口調でお話ししてくださいましたが、

お話の内容はとても情熱的で日本全体の医療を考えていらっしゃると感じることが出来ました。

生活もし易い横浜の中心では、国際色豊かな看護が出来るようです。

JCHO横浜中央病院関連記事

病院紹介

藤田院長インタビュー前編

藤田院長インタビュー後編

Interview Team