毎年起こる悲しい事故
毎年お正月のニュースで必ず報道されるのが、「高齢者が餅を喉につまらせて死亡した」というものです。東京消防庁によると、今年も都内だけで昨日までに21人が搬送され2人が亡くなっています。毎年100人前後が搬送されており、東京消防庁管内過去5年間の累計では、562人が餅・団子・大福等によって喉をつまらせて搬送されました。東京消防庁のホームページでは「年末年始の救急事故をなくそう」という広報が行われています。
餅などによる窒息事故の特徴として以下の3つが挙げられます。
1.12・1月だけで年間の半数以上の搬送件数 → お正月前後に発生する
2.搬送者のほとんどが65歳以上の高齢者 → 飲み込む機能が低下している
3.7割以上が中等症(生命の危険はないが入院を要するもの)以上の症状で搬送 → 家族が対処できない
毎年これだけの窒息事故が起きていれば「餅は悪」となってもおかしくないのですが、事故防止のキャンペーンがある以外に目立ったものはありません。製造販売元が責任を問われることもない。
一方で、子供が窒息事故で死亡したことをきっかけに大々的に社会問題となったのがこんにゃくゼリーです。裁判にまで発展したケースもあります。その後クラッシュタイプ等に形を変えて再販されたものの、餅に関しては「小さく切って食べましょう」と呼びかけがある位で、社会問題になることはありません。また、「食べない」という選択肢を提案する動きもみられません。
窒息事故は防げる
餅はこんにゃくゼリーの何十倍も窒息のリスクが高いことが検証によって明らかになっています。どんなに死亡事故が起きても餅がなくならない背景の1つとして、餅や団子が昔からの日本の食文化であることが関係していると考えられます。お正月は日本人、特に高齢者にとって1年の数ある行事の中でも特別な日となっているでしょう。おせちやお雑煮を何よりの楽しみにしている高齢者はたくさんいます。病院食でお正月はおせちを提供するところも多いと思いますが、病院によってはお雑煮等の餅を使った料理の提供をやめたところもあります。やはりそれだけリスクが高いのでしょう。本人が「食べたい」と言うから、という理由だけでお雑煮や焼き餅を食べさせてもいいのか、家族は窒息事故が起こった時の救急処置ができるか、後悔しないようよく検討していく必要性があるのではないでしょうか。
窒息事故を減らすためにできること3つ
1.うるち米を原料にした韓国のお餅「トック」で代用する
2.唾液の分泌を十分に促してから食べる
3.窒息が起こった時の対処法を家族等が習得する
「うちのおじいちゃんは元気だから大丈夫!」では解決しません。元気な80歳でも嚥下機能は間違いなく低下しています。「食べたい」という本人の思いを尊重しつつ、窒息事故を起こさない最大限の対策をする。誰もが笑顔でお正月やお花見を過ごせるようにしていきたいものです。