No.146 病院長 山口俊晴様(がん研究会有明病院)後編:実行していく姿勢

インタビュー

前編に続き、看護師に進化して欲しいこと、山口先生が院長になられた際の目標などお話いただきました。

看護師の進化への期待

先生が望まれる看護師の進化についてお聞かせください。

山口:やはり自立した看護師になってほしいです。

昔は、医師の意向を汲んで行動する、全てを任せられる看護師が「良い看護師」と評価されていました。

しかし今は、指示通りサポートする部分と、指示をそれが適切か確認することも必要だと思います。

「助け合い」と「かばい合い」をはき違えないということです。

医師も看護師もプロですから、互いに厳しく接する緊張関係が必要です。

その関係を維持することが患者さんの高い評価を得ることや、安全性の向上につながると考えます。

目標を共有し互いに努力する必要がありますね。

山口:医師の指示通りに動くのが看護師だという考え方は捨て、

看護師として自分が納得できることをともに実行していく姿勢が必要です。

そのくらい責任を持ってほしいと思います。

患者さんのことを一番よく知っているのは看護師です。

例えば、患者さんに対する医師の説明を横で聞いていて、

患者さんやご家族が十分納得していないのではないかと感じたとします。

その時は、医師にその懸念を伝えてもらいたいと考えております。

院長に就任された時の目標はどのようなことでしたか。

山口:安定した経営の維持です。

当院は私立であり、かつ研究所を併設している以上、病院が赤字を出すわけにはいきません。

現在、国内に多くのがん専門病院がありますが、

純粋に医療だけで黒字を維持しているのは当院だけではないでしょうか。

黒字経営を維持するために、スタッフには他のがん専門病院に比べ、

より高いパフォーマンスが要求されます。

その象徴的なことが手術件数です。

現在の診療報酬制度ではやはり、急性期病院は手術を多く実施する必要があります。

診療報酬改定に合わせた医療経営も大切ですね。

山口:私はかつて外保連(外科系学会社会保険委員会連合)の会長を長く勤めていました。

その頃から、厳しい臨床現場の状況が考慮され外科の手術料は徐々に伸びてきました。

現在はかなり改善しています。

抗がん剤治療は技術料の評価が低いため、ほとんど利益が出ません。

いかに効率的に多くの手術をこなせるかが、今でも経営の根幹です。

看護については看保連(看護系学会等社会保険連合)が診療報酬への反映を意図して活動しています。

実際に看護師は手術室で求められる高度な知識や技術を身につけているのですから、

それを評価しても良いのではないかと思います。

ただしその場合、技術力をどのように評価するのかが課題になるかもしれません。

診療報酬算定のために看護必要度をカウントするよりも、

看護師はやはり患者さんの側にいたほうが良いのではないかという思いもあります。

技術の評価は難しいものなのでしょうか。

山口:例えば外科の手術点数も、太った患者さんと痩せた患者さんでは

難易度や所要時間が違うので変えるべきではないかという議論があります。

それに対する厚労省の回答は「太った人もやせた人も同じ点数ですから、多くの患者さんを治療し平均すれば一緒です」というものです。

確かにその通りです。

手術に求められる技術や時間は患者さんの年齢によっても違いますし、既往の有無でも難易度は異なります。

患者背景ごとに細かく設定していたらきりがありません。

逆に言えば、このような同一条件のもとでクオリティーの高い手術を人より多くこなす医師は高く評価すべきです。

そうすると、そのことがモチベーションになります。

結果として誰もが自己研鑽に励みます。

プロスポーツ選手のようなこの評価方法は、医療スタッフの技術評価にも適しているのではないかと考えています。

看護師へのメッセージ

山口:当院には日本各地からだけでなく、今は中国など海外からも多くの患者さんが来られます。

素晴らしい医療を実践しています。

その中で看護師さんの優しさや適切な処置、あたたかい言葉が本当に求められています。

大変つらいことがあるかもしれません。

しかし、やりがいも十分ある病院です。

やる気のある方はぜひおいでください。

お待ちしています。

シンカナース編集長インタビュー後記

国内最大のがん専門病院として、研究も臨床も力を入れて取り組まれている山口先生のお話は、大変エネルギーを感じるものでした。

研究では未来の患者さんをみて、臨床では現在の患者さんを治す。

この両輪があってこその施設なのだということがとても納得できました。

病院スタッフの皆様も、国内最大のがん専門病院で勤務しているという高い意識を持ち、仕事に邁進されているのだということが山口先生のお話から伝わってきました。

それは、病院全体で目標を共有し、黒字経営を維持するためにも高いパフォーマンスが求められることへの誇りであると感じました。

また、看護師に対しては「指示通りに動く」→「自分が納得できる仕事をする」と自立した看護師を望まれていらっしゃる。

看護師の進化が、より高いパフォーマンスに結びつき、患者さんにとって、病院全体にとって良い効果を生むことは間違いなさそうです。

がん研究会有明病院関連記事

病院紹介

山口院長インタビュー前編

山口院長インタビュー後編

Interview Team