No.91 上原 かおる様(大西脳神経外科病院)前編「常に患者さんの視点で」

インタビュー

今回は大西脳神経外科病院の上原 かおる看護部長にインタビューさせて頂きました。

認定看護管理者としてもご活躍中の上原樣の手腕に迫ります。

仲間の大切さを感じた実習

看護師になられた動機を教えて頂けますか。

上原:高校生の頃、テレビで社会福祉施設について放映されていたのをみて、「なにか人の役にたてる、人と関わる仕事をしたい」と感銘を受けたことをきっかけに看護師になろうと決めました。

看護学校は全寮制で3年間寝食を共にしていましたから、友人たちとの絆はとても深くなりました。

看護学校での思い出のエピソードを教えていただけますでしょうか。

上原:骨折して2週間実習に行けなくなり、春休みに一人で実習に行ったことがありました。

とても親切にして頂けましたので、看護師の良さを知ることができた面もありました。

学生同士で話し合うこともできず、一人で考えて行動するのは寂しくて、やっぱり仲間は大切だと実感しました。

非言語コミュニケーションの大切さ

看護学校卒業後は、どのような部署で勤務されたのでしょうか。

上原:脳外科に配属されました。

教えてもらうのを待つのではなく、自分から学んでいかなければならない時代でしたので、はじめは難しい印象もあったのですが、同期と一緒に勉強を重ねて頑張りました。

優しく、仕事上では厳しく、プロ意識の高い先輩にいろいろ教えていただいて、乗り越えることができました。

その病院では神経内科の方もいらっしゃって、3年目くらいのとき、ALSの患者さんに、看護の原点を深く学ばせていただいたと感じており、とても印象に残っております。

入院されてからどんどん症状が進行して、構音障害のある患者さんだったので、その方が何を言いたいのかを口唇術で読み取っていく力もつきました。

私がきちんと読み取れないと、とても悲しい目をされ、私が朝「おはよう」と声をかけたら嬉しい目をされていました。

「目は口ほどに物を言う」といいますが、非言語的コミュニケーションの部分である、表情などを読み取っていくことが非常に大切だということを学ばせていただきました。

6年間勤めて退職し、3カ月休みましたが、すぐにまた働きたくなり、脳外科の病院で10年ほど勤めました。

一貫して脳外科で勤めていらっしゃったのですね。

上原:私たち看護師の看護のあり方により、患者さんの予後が左右されるといっても過言ではないような奥深さを脳外科では感じたのです。

厳しい状態の患者さんが来られても、画期的に良くなられて、笑顔で歩いて帰られます。

その回復過程をみていると、とてもやりがいを感じ、続けていきたいと思いました。

こちらの病院にいらしたきっかけは何かあったのでしょうか。

上原:同じ病院におられた大西院長が、病院をつくるということでお声をかけていただきました。

当時は師長を務めておりましたが「ゼロから自分のやりたい看護を目指したい」、「脳外科の看護を広めていきたい」という思いでこちらに移りました。

尊いものを扱う責任

理念である「生命(せいめい)の尊厳と患者さんの人権を守り、常に患者さんの視点で看護を実践する」というのを実現するために、どのようなことが大切なのでしょうか。

上原:まず生命が第一で、人の命をお預かりしているということは、決して忘れてはいけません。

脳外科では意識障害のある、自分で何も言えない状態の患者さんも沢山いらっしゃいますが、その方の本来の姿ではありません。

その方々が今まで生きてこられた人生は、とても尊いものであって、人権を守り大切にしていくことが大前提であるということなのです。

「患者さんの視点」を考えるうえで大切なのは、脳外科の患者さんは多種多様の障害をもっておられる方がいらっしゃるので、「もし自分だったら」と置き換えて考えて、行動することだと思います。

たとえば、脳卒中などは突然の発症です。

新人の方にも「今、私もこのように普通にお話しができて手足も動きますけれども、次の瞬間に右手足が動かず、話すことができず、ご飯も食べられなくなったらどう思いますか」「それを受け入れられますか」と問いかけます。

自分に置き換えて考えてみたら、やはり自分でトイレに行きたい、でも、歩けない。

トイレへ行こうと思って、立ち上がろうと思ったら立ち上がれず転んでしまう、という状況も考えられます。

だから危ないから、脳外科の患者さんの安全は、私たちが特に注意して守っていかないといけないということを話して、大切にしていくように心がけております。

自分だったら、なかなか人にはそうした事を言えませんよね。

上原:人にお願いしないといけないということは、どれほど勇気のいることか。

ナースコールを押すのも、考えて考えて「もうダメだ」と思ったときに鳴らすと思います。そう考えると、例えば私たちが「少々お待ちください」と言って、長い間お待たせてしまったら、患者さんは大変辛い思いをされます。

つい忙しさが出てしまうと、「押さなければよかった」と思ってしまうかもしれませんね。

上原:患者さんは、看護師の表情などよく見ておられるので、少しでも嫌そうな顔を見せれば、「この人は嫌がっている」と思われるでしょう。

忙しいのですけれど、忙しいというのは言い訳であって、やらなくてはいけないことはやらないといけませんし、どうやるかを考えながらやりましょうと常に言っています。

答えを言ってしまうと、それで終わってしまうので「あなただったらどう思いますか」と問いかけるのです。

こたえられない、考えられないときは「そしたら、このときはどうしますか」など、ちょっとずつヒントを与えながら、答えは自分で見つけられるように、探すことができるように接しています。

時間が切迫していて、今すぐに対応しないといけないというときには言ってしまうときもありますが、そのあとに「なぜあのように言ったかわかりますか」と問いかけます。

振り返りの時間は大事ですね。

上原:大切だと思っています。

「人間性が豊かでないとこの仕事はできない」と常々言っています。

いくら技術が卓越していて知識もあっても、人間性、患者さんの痛みや思いなどを感じ取ることができる心がないと、よい看護はできません。

ですから、on・offをきっちりつけて、仕事のときは厳しく、offのときは趣味などで自分磨きをして、人間性を豊かにして、仕事に活かしてほしいと話しております。

後編に続く

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